パーフェクトロード
これぞTOPICだ。久田敏之、あれよあれよで無傷の4連勝!! 昨今のSGで1号艇が1度もない4連勝は凄い。凄すぎる。
まずは3号艇の3R、スリットから1マークまでの流れがすべて久田に向く。インでアジャストした寺田千恵を、2コースの坪井康晴が力任せのジカまくり。この展開をしっかり横目で捉えた3コース久田が、冷静的確なまくり差しハンドルを突き刺した。なんという流れの良さ。3戦連続まくり差しというのも珍しい。
後半10Rは枠なりの2コース発進。私は久田を舟券から消していた。ここまでがあまりにも出来過ぎだし、そろそろハンドルを握る右手が重くなるのではないか。そう思ったからだ。少なくとも、足もリズムもいいイン桐生順平を負かすのは至難の業と決めつけた。
だが、スリット同体から極めてオーソドックスに差した久田の舳先が、一瞬で桐生を捉えきる。差しが届いたと言うより、握りすぎた桐生が勝手に流れたように見えた。どうしたことか……1マークの展開といい、ターン出口の隊形といい、初日から目に見えない何かが久田を勝たせようとしている。そうとしか思えない4連勝だ。
もちろん、だからと言ってこの4連勝は“他力本願”ではない。1マークまでの久田の判断、初動、旋回はどれも冷静で、ここまでノーミスと言っていいだろう。さらに、昨日も書いたが69号機のパワーも盤石ムードだ。ストレートは中堅に毛が生えた程度も、ターン回りが軽快でどこにでも舳先が向きそうな乗り心地の良さも感じられる。正直、前検から私の評価はトータルで中堅上位レベルなのだが、実戦足はそれをはるかに上回っているのだろう。
さてさて、破竹の4連勝で臨む予選の最終関門は、10Rの4号艇。ここを④着以内で走り抜ければ、他艇の結果に関わらず予選トップが確定する。今日までの結果を意識せず、平常心で走れるかどうか。明日からの3日間、久田の敵は自分自身になることだろう。
Wエースの線引き
ついに、“新エース”の10号機が3日目にして完全覚醒した。昨日までレースごとに行き足~伸びにムラがあり、乗り手の篠崎仁志も5・3・5着と手を焼いていた10号機。V候補どころか、今日の9Rの結果次第では準優に赤ランプが点る可能性すら生じた。
1日早い勝負駆けとなったその8R、枠なりの5コース発進だった仁志のスタートはコンマ12。なかなかの踏み込みだが、1・2コースの舳先がそれよりも突き出ている。どう攻めるか。思う間もなく、仁志の舳先だけがぐんぐん伸びていく。
そう、この足だ。
2節前に新良一規が他を圧したスリット足。そして、そこからの伸び足。瞬く間に4カド吉川元浩を1艇身近く出し抜いた仁志10号機だったが、すぐには絞めない。しばらくフルッ被りで直進し、完全に吉川の舳先が抜けきったあたりで一気にハンドルを左に傾けた。吉川を軽々と超えて、自分よりスタートが早かった内3艇を舐めるように突き進む。一見、インの笠原亮までは届かない攻撃に見えたが、仁志は委細構わずぶん回した。艇を合わせてブロックする笠原。
ターンの出口、外の仁志が半艇身ほど覗いたが、そこからの足色はほぼ同じ。しっかり舳先を掛けた笠原に利があるかと思ったバック中間から、再び仁志10号機だけがじわり伸びはじめる。じわりじわり、笠原の舳先が少しずつ押し戻され、2マークの手前で完全に抜け落ちていた。完全覚醒。私はそう認定した。
「日によって、ゾーンが合いきらない」
レース後、仁志はこんな言葉を残している。確かに昨日までの不安定な足色がそれを物語っている。明日以降もどちらに転ぶか分からないが、今日のゾーンに合わせきれれば難なく勝負駆け(1・3号艇で②②着は欲しい)をクリアできるだろう。
さてさて、10号機といえば“旧エース”19号機にも触れねばなるまい。昨日は道中で混戦に巻き込まれ、あえなく6着大敗を喫した魚谷19号。が、今日の10Rは3コースからしっかりした足取りで2着をもぎ取り、暫定7位の好位置に付けている。
ただ……展示タイムも実戦のスリット付近も、やはり夏場の19号機にはほど遠いと言わざるを得ない。代わってターン回り&出口から押して行く足は強力で、現状の主武器は出足系統と思っていいだろう。ストレートは10号機、出足系統は19号機。そんな線引きをはっきり感じさせるような今日の気配ではあった。19号機の変貌は残念ではあるが、かくなる上は優勝戦でスローに魚谷、ダッシュに仁志という直接対決が見たいし、準優の組み合わせ次第では大いにありえると思っている。
その他で特筆したいTOPICといえば……遠藤エミか。先刻、記者席に配布された得点率一覧を見て驚かされた。暫定9位! 「いつの間に??」という感じである。そう言えば、初日の“ほぼ女子戦”で2着を獲りきったり、昨日はしっかり逃げきったりと活躍しているのだが、過去のSGでちょいちょい見かけた「おお、なんて男前な!!」的なターンを目撃した記憶はない。それでいて9位というあたりが、もはやSG常連となったエミの貫禄と言えるのかも? 明日は6号艇の勝負駆け。④着あたりが安全圏だと思うのだが、このハードルも焦らず騒がず、クールにさらりと飛び越えてもらいたい。「あれ、いつの間に準優3号艇??」ってな感じで。(text/畠山、photos/チャーリー池上)