選手の顔が確実かつ一気に撮影できる前検日は、ピットにカメラマンが大勢集まる。
モーター抽選が終わり、真っ先にボートにモーターを装着したのは細川裕子。他の選手が表に出てきておらず、現状は被写体が一人しかいない上に、ドリーム戦出場の有力選手ということもあって、まずは細川がフラッシュの洗礼を浴びていた。細川は誰も出ていない水面に艇を降ろして1周航跡を描くと、いったんボートを陸に上げた。
二番目に着水したのは日高逸子。こちらもフラッシュ攻めを受けていた。私の印象だが、ベテラン選手の方が前検日の着水のタイミングが早い気がする。ボートはレース以外にも時間との戦いという側面もある。おそらく前検日からキャリアの差が出るのだろう。もっとも、スタート練習の班の兼ね合い(登番の古い選手ほど早く始まる)からなのかもしれないけど。
今日一番か今日二番の勢いでフラッシュが焚かれたのは、中谷朋子。今もっとも強い女子、そして現状は女子で唯一のダービー当確者、さらに今節のドリーム戦1号艇と、脂が乗りに乗っている選手だ。中谷は試運転を終えると、ドリーム戦(1班)のスタート展示が始まるまでのわずかな時間にペラを叩く。いつものごとく、ボートとペラ室の間を猛ダッシュ。
そして中谷に並ぶもう一人のフラッシュ女王が、エースモーター61号機を引いた角ひとみだ。やや遅目の時間に出てきたのだが、出てくるやいなや、ほぼすべてのスチールカメラマンに取り囲まれて撮影会が始まった。意外なことに、11年の福岡から約7年間も優勝から遠ざかっているのだが、今年の6月から7月にかけて3節連続優出と調子を上げてきている。初日10Rでどのような足を見せるか要注目。
ドリーム組や好モーター選手ほど撮影時間が長くなりやすい傾向がある。3連対率66%の28号機を引いた倉田郁美は凛々しい表情。近況好調かつ前節優勝の62号機・池田明美はいつもどおりのクールな表情である。
ちょうど選手が少ない時間帯だったため、一気にカメラマンに囲まれたのが岩崎芳美。しかしモーター49号機は2連対率30.8%の凡機。短い撮影時間で済まし次の被写体に移ろうとしたカメラマンたちに向かって「ちゃんと使ってよ!」と言い放って、笑いをとっていた。
ディフェンディングチャンピオンの小野生奈はスタ練後の共同記者会見で、
「いいところがなかった。“悪い”ということしかわからなかった」
と泣きコメント。ただし小野は女子の中ではエンジンを出すのが得意な選手。SGで揉まれてきた経験もある。まだペラを見ていないということなので、明日のドリーム戦までに何とかしてくれるはずだ。
抽選で60号機を引いて苦笑いをしていたのは、地元のエース・松本晶恵。60号機は1着率11%の低調機。しかも6月の桐生ヴィーナスシリーズで、松本自身が引いて、部品をとっかえひっかえと大苦戦したモーターが60号機なのである。やっと手を切ることができた腐れ縁の男に、なぜかふたたび巡り合ってしまったというところか。
しかし練習後のコメントは、
「『またコレか!?』と思ったんですが、中間整備が入ったようで全然良かったです。伸びも回り足も水準以上」
とのこと。腐れ縁が改心したのである。明日のドリーム戦は6号艇。メンバーがメンバーなのでそんなに人気にならないはず。舟券的にも面白そうである。
今日は全選手に向けてカメラのフラッシュが焚かれたが、6日後の夜にフラッシュを一身に浴びるのは一人だけ。栄冠は誰の手に!?
(TEXT/姫園 PHOTO/中尾茂幸)