徳山の番記者さんに教えてもらって驚いた。3月に初下ろしとなった徳山のモーターだが、なんと5月に全モーター、新プロペラに交換したというのだ。そんなことってあるの? それによって、モーターの相場ががらりと変わったらしい。最も変わったのが、65号機。現時点でも2連対率は41.9%あって、ペラが変わるまでは評判機のひとつだったそうだが、新ペラになって動きがガタ落ち。西島義則、大瀧明日香が未勝利のままシリーズを終えている。これに関しては、選手にも情報が伝わっていたようだ。今回引いたのは原田幸哉。前検航走後はかなり入念にプロペラを叩いており、立て直しに必死といった雰囲気だった。
ドリーム戦2号艇の磯部誠が引いた37号機も、ペラ交換前は悪くない動きを見せていて、やはり2連対率は40%を超えている。しかし、前検の手応えは一息だったようで、記者会見では何かあったのではないかと報道陣に問いかける場面もあった。何があったかというと新ペラに交換されているのであって、やはりその影響を悪いほうに受けてしまった1基ということになるのかもしれない。
一方、それでもいい動きを見せているモーターももちろんあって、村松修二が引いた48号機もそのひとつ。三島評では直線系統が良くて出足はやや甘め、とのことだが、村松自身が得た手応えも同様のものだったようだ。初日は6号艇とあって、「パンチをつけたい」とのこと。直線系に振った調整で臨んでくる可能性がある。
三島敬一郎が1番手にあげている12号機も、新ペラに変わっても好調。交換前に平田さやかが特大マンシュウで優勝しているモーターで、その後に新ペラに換わっても動きは良いとのこと。これまた羽野自身もいい手応えだったようで、その評判を知らないまま前検に臨んで、いい体感を得たというから動きは本物だ。おっと、好モーターを手にしたのは、村松、羽野と114期のふたり。思えばオールスターでは同期の倉持莉々が優出しており、この期にいい流れが来ているのかもしれないですね。
それにしても、今日は通常の前検と比べても、ペラ調整に励んでいる選手が多いように見受けられた。やはり新ペラに換わってあまり日が経っていないことで、一日でも早く自身の調整で煮詰めていきたいというあらわれだろうか。オールスター優勝の石野貴之は、かなり強い打擲でピットじゅうに金属音を響かせていた。そういえばオールスターでも前検からかなり叩き替えていたんだっけ。ルーティン的な部分もあるかもしれないが、新ペラ情報が念頭にあると、それが理由だと思ってしまう。
まだボートを下す前、岡崎恭裕が「僕のいいんじゃないですか?」と声をかけてきている。岡崎43号機は、えっと……すみません、三島10基には入ってません。しかし岡崎が得てきた情報では動き上々とのことだったようで、たしかに前節では春園功太が優勝戦に駒を進めている。そして岡崎は、前検航走後も作業終了時間ギリギリまでペラを叩き続けていた。もちろん新ペラから時間が経っていないということもあるだろうが、自身の情報と手応えの擦り合わせをしているようにも見えたのだった。
ところで、ペラの影響なのか、それとも梅雨時特有の湿度の高さによるものなのか、多くの選手が「今日は回転が上がっていない」と感じていたようだ。たしかにピットにいてもじとーっと汗ばんでくるもんなあ。そんななか、菊地孝平が「よく回転が上がっていた」と会見でコメントしている。菊地が引いたのは、三島10基のひとつである35号機で、出足に特徴があるモーターの様子。なるほど、回転が上がりの良さは出足につながるのだから、三島が睨んだとおりの感触を得たようだ。しかも、今日はスタート練習で納得のいく練習ができたとも言っている。艇界きってのスタート巧者である菊地だが、前検で大きなFや遅れをやってしまうと、勘を調整するのに時間を要してしまうそうだ。今日はいい練習ができたようだから、早い段階から、もしかしたらドリーム戦からいいスタート勘で臨めそう。4号艇4カドから質のいいスタートを決められれば……と期待は膨らむ。
で、そうして多くの選手がペラを叩き、そうでなくとも外回り調整に励んでいる選手ばかりのなか、赤岩善生は本体を割っている。この人の、確固としたスタイルをブレずに続けていく芯の部分というのは、いつ見ても感心してしまう。今日の整備がどこまで明日につながっていくのか、登場する2Rで確認してみよう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)