BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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三国ヤンダビ優勝戦 私的回顧

新たなる門出

12R優勝戦
①永井彪也(東京) 17
②福田宗平(大阪) 15
③村岡賢人(岡山) 15
④豊田健士郎(三重)16
⑤宮之原輝紀(東京)19
⑥今泉友吾(東京) 16

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 彪也が勝った。
 台風(今日は温帯低気圧)の影響で朝から強く吹き荒れた風は北へ北へと流れ去り、12Rの風速は6m。この季節の三国としては通常営業というべきコンディションに落ち着いた。上を見上げれば、いつの間にやら青空が広がっている。
 誰を祝福する青空か。
 と見ている中でファンファーレが鳴った。待機行動でのキーマンは、もちろん村岡だ。3カドに引くや引かざるや。三国特有の狭い外スタンドのかぶり付きから身を乗り出すと、赤いカポックが颯爽と舳先を翻した。

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 やったか。
 対岸の大型モニターは作動していないので、あとは6艇がこちらに向かってくるのを待つしかない。12秒針が回ってダッシュ4艇、遅れてスロー2艇が動きはじめる。もちろんスリット隊形はわからないのだが、ほぼ真正面から見る6艇の舳先の中からセンター勢の2艇がじわり外に寄ってくるのが見えた。
 こ、こら、俺の輝紀(◎)に寄ってくるな!
 と心の中で叫んだが聞こえるわけもなし。外枠の東京コンビは実に窮屈な直線を強いられ、まともなターンもできないまま優勝の圏外へと遠ざかった。センター勢よ、勝負のアヤとは言え、あれはちょっと寄り過ぎだぞ~~!!(涙)

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 で、そこからやっと1マークに目をやらったらば、東都の最後の砦というより先輩にしてエース格の彪也がすでに独走態勢に突入していた。後ろからはなんにも来ない一人旅。後でリプレイを観ると、2コースの宗平は差しではなく意表のジカまくりを選択し、開いてまくり差しを狙っていた村岡もほぼ同じ航跡を描いて玉突き渋滞になったのだな。気象の変化もこの一連の展開も、突然の爽やかな青空も、やはり大本命のイケメンレーサー彪也のために用意されたものだった。
 もちろん、宗平の1着だけを狙ったサプライズな握りマイは、浪速の勝負師らしい戦術として評価したい。ただ、私個人としてはあれだけ今節を賑わせた鬼の回り足差しを観てみたかったなぁ。外の艇がゴリゴリ来る1マークではなかっただけに、彪也が逃げて宗平が差してどうなったか、をこの目で堪能したかった。単なるないものねだりだけど。

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 ゴールを過ぎた彪也は右腕を直角に曲げて豪快なガッツポーズ。鳴門の山田祐也同様、なんでも絵になる男だが心の底から嬉しかったことだろう。2年前のメモリアルに参戦(木下翔太や羽野直也よりも早いSG参戦だ)したときは、アンチ濱野谷憲吾=東都の新エース候補と思ったファンも多かったはずだ。が、そこからすぐに低迷期に突入し、去年はA2に甘んじた。今はバリバリのA1に復帰した彪也だが、優勝からしばし遠ざかったままだった。2年2カ月ぶりの優勝が嬉しくないはずがない。

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 さらに、この優勝は平和島で開催されるバトルチャンピオントーナメント(11月)とクラシック(来年3月)にまんま直結してもいる。レース後に「賞金とかより平和島を意識していた」と吐露していた彪也が、1年間のスランプと今回の自信を糧としてさらなる強敵にどんな戦いを見せるか。東京在住の一ファンとして応援するとしよう。(photos/シギー中尾、text/畠山)