119期の跳躍
『遅れてきた大物軍団』119期が、無観客の丸亀水面を縦横無尽に駆け回った。筆頭は實森美祐だ。3Rはスリット横一線のインコースから危なげない逃げきり。これは隊形にも恵まれた勝利と見ていたが、後半7Rが素晴らしい。枠なり3コースから発進した美祐のスタートは電撃のコンマ01! さらに内の平高奈菜も同タイミング、イン西橋奈未もコンマ04と、スローの紅組3騎だけが飛び抜けたスタートを放った。
こうなれば、1艇身ほど千切れた白組ダッシュ勢なんぞは気に留める必要もなし。内の平高が差しに構えた瞬間、迷わずレバーを握った實森は見えない所から同期の西橋に襲い掛かった。ツケマイ一撃の完勝劇。3月の鳴門レディースオールスターでは西橋の活躍(予選6位)とは裏腹に同40位と影が薄かったが、「今度は私が!」と宣言するような強ツケマイだった。
その西橋も同期の奇襲を浴びつつゴキゲンな実戦足で立て直し、2マーク全速の握りマイで逆転の2着を獲りきった。そのスピードも絶品だったし、出口からギュンッと唸るように出て行ったレース足も出色。同期の不意打ちを喰っての2着は悔しかっただろうが、西橋も前半1Rを3コースから勝ちきっての1・2着発進。上位レベル間違いなしの機力も含めて、今節の有力なV候補のひとりと言い切っていいだろう。
4961西橋と4963實森が都合1112着と活躍すれば、4964土屋南も黙ってはいられない。9R1号艇のイン戦は、2コース遠藤エミが猛烈なジカまくり(=団体戦そっちのけ!!)で襲い掛かる険しい展開に。身体を張ってブロックしたらば、今度は3コース櫻本あゆみのモロ差しを喰らったが、1周2マークで起死回生の強ツケマイを決めて薄氷の1着を奪い取った。初動のタイミングと言い旋回角度と言い、「盤上この一手」の握りマイだったな。119期の3人娘で11112着のロケットスタート!
さらには、やまと学校時代の超エリート井上忠政(やまとリーグ勝率8・39!!)も5R5号艇から3着、ダークホース的存在の船越健吾は8Rを鮮やかに逃げきり、119期の5人で5勝オール3連対という固め撃ち。今節は紅白対抗の敵同士ではあるが、それぞれの健闘を宿舎でマスク越しに称え合ったことだろう。
119期と聞けば、どうしても思い出されるのがやまとリーグ戦での悲しすぎる事故だ。ひとりの大切な仲間を失ったこの期は、その後の実技訓練を離れて精神的なカウンセリングなどに時間を費やし、それでもあまりのショックに学校から去った同期もいた。練習&実戦不足のままデビューした彼らはプロの水面で這いまわり、宮之原や栗城などを擁する118期にも大きく水を開けられた。デビューから3年半が過ぎた今、パソコンのモニター越しながらも彼らの大活躍を観ることができて嬉しい限り。119期を語る(書く)ときに用いる常套句を、今日もここに記しておきたい。
――バネは縮めば縮むほど、より高く飛躍する。
今日の1111123着は、彼らがまさにバネを解き放った証なのかも知れない。
さてさて、今節は団体戦なので初日の結果をお伝えしよう。
紅組4-4白組
はい、ポイント的にはイーブン互角でありました。色々な意味で残念だったのは9Rの紅組だ。着順ポイント的には1着・土屋、2着・櫻本、4着・遠藤と圧倒したのに、遠藤エミの不良航法(=1周2マークの追い抜き不良)で白組の逆転勝利に……団体戦の1ポイント程度はさほど痛くはないが、紅組のエース遠藤が-10点の減点でV戦線から大きく遠ざかったのは後々激痛になる可能性が高い。同じくエース格の平山智加も1号艇で4着と出遅れた。片や白組エース格の村松修二と西野雄貴は、ともにセット交換というギャンブルに踏みきって「当たり」を掴んだ気がしてならない。団体ポイントはイーブンだったが、相対的な流れとしては白組に傾いた1日だったと思っている。
明日のブライトホース
4859染川直哉(埼玉・116期)10R5号艇
今節も、まだ全国に名前がさほど売れていない伸び盛りのルーキーをじゃんじゃん紹介していこう。第一号は染川君だな。勝手にニックネームを付けるなら『彩の国のサイコキラー』。いや、まったく性格も知らないのに、物騒なあだ名をつけてすいません! だがしかし、ここ1年の3~5コースの勝ちっぷりを見たら、読者の皆さんも納得してくれるだろう。
★3コース=まくり3勝・差し0勝
★4コース=まくり3勝・差し0勝
★5コース=まくり2勝・差し0勝
差し&まくり差しを得意とするルーキーが多い中にあって、染川の3~5コースは都合「まくり8勝・差し0勝」!! 勝つときは「まくり」のみという、かなりサイコチックな猛禽類なのだ。でもって、そんな生粋のまくり屋が、節イチ級の直線パワーを携えたらどうなるか。明日の10Rはそれだけで楽しみでしょ!
今日の10Rは2コースから差してキャビって惨敗したが、元より年間0勝の苦手なコースだから気にする必要なし。明日の5号艇を皮切りに、その後の3・4号艇でも自慢の伸び足をフル稼働して絞めまくるとお伝えしておこう。三振かホームランか、スリットからぶんぶんバットを振り回す一発屋に乞うご期待あれ!!(text/畠山)