BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル2nd・第2戦ダイジェスト

一長一短、一進一退

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11R
①瓜生正義(福岡)10
②白井英治(山口)09
③原田幸哉(長崎)07
④辻 栄蔵(広島)10
⑤毒島 誠(群馬)07
⑥平本真之(愛知)10

 結果は①-②-③の内寄り決着も、上位着の争いは見どころが満載だった。まずはスタートが絶品。さまざまなプレッシャーやストレス、気負いが生じる大舞台で、6人全員がビシッとコンマ10圏内に。強い精神力とバカ高い集中力を感じさせるスリットラインだ。

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 そして、このレースいちばんのハイライトは、逃げる瓜生vs差した白井のパワー比較。1マークを回った瞬間は、白井の舳先が届いたかに見えた。おそらく、数十センチほど食い込んでいたはずだ。

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 これで行き足~伸びが一緒なら、内コースの利で白井が2マーク先取り~2-1決着になっただろう。だが、実戦はスリット裏から瓜生がグイッとひと押し伸びきって、届いたはずの白井の舳先を振りきっていた。さらにその先は、差が広がる一方に。ことストレートに関しては、瓜生が一枚上手とはっきり分かる見え方だった。これは昨日の瓜生vs桐生でも感じたから、まずは「瓜生58号機の直線足は12人の中で上位レベル」と推定できる。

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 一方、ターン回り~出口付近ではちょっと滑るような感じがあって、そこは桐生や白井がやや上。瓜生本人はレース後に「乗り心地が来ない」と吐露していたから、そのあたりが改善されれば全部の足が上位のバランス型になるだろう。まあ、明日の瓜生は3号艇なので、自慢のストレートを活かして外から外へ、握りっぱなしで攻める戦法を選択する可能性は高い。出足系統や乗り心地が来れば、まくり差しもありえるけれど。

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 瓜生に直線で突き放された白井も、明日は3号艇での戦いとなる。こちらは瓜生とは逆に「直線に自信がないままなら、回り足に活を入れてまくり差し狙い」がセオリーだろう。もちろん、この男にはスタートをキワまで突っ込んでの自力まくりという勝負手もあるのだが。

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 その後方、3着争いは残る4人の泥仕合となったのだが、ちょっと気になるのがかなり有利な3番手を維持していた毒島だ。後ろからあの手この手で突かれるのは当然として、機力に自信のある3日ほど前の毒島ならそれらの攻撃をすべて完封できたはず。

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 今日の毒島は自力で攻め倒せそうな局面でも待っての差しを選び続け、ついに原田の強気の切り返しを捌ききれずに着を落とした。その逆転劇は、相棒52号機への不安があるようにも見えたし、現実に機力が劣勢のようにも見えた。明日の毒島は願ってもない1号艇をGETしたが、もしも精神的、または機力的な不安が残ったまま実戦に突入するなら、盤石のインコースにはならないと思っている。

ラスボスの世界へ

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12R 並び順
①篠崎仁志(福岡) 07
②濱野谷憲吾(東京)06
③菊地孝平(静岡) 06
⑤峰 竜太(佐賀) 15
④丸野一樹(滋賀) 16
⑥桐生順平(埼玉)    15

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 このレースは、待機行動~1マークの攻防が凄まじく面白かった。まず、待機行動で“主導権”を握ったのは桐生だ。その布石はスタート展示。一度は前付けを諦めたと見せかけてから、やおらエンジン全開で内の5艇にひと泡吹かせた。つまり、いち早く2マークを踏み越えて「お前ら、本番でもそんな呑気にしてたら、みんな揃って“割り込み”で待機行動違反だぞ」と脅したのだ。

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 いざ本番、桐生はオレンジブイから加速し、「同じように行くぞ」とプレッシャーをかける。そうはさせじ、と丸野、峰、菊地らが早めにホーム水域に突入した途端、今度は一転して速度を緩める。それでも、菊地や峰はスタート展示の残像があるから、徹底的に警戒して艇を進める。これは私の勝手な推測だが、ハナから桐生が狙っていたのは5対1の単騎ガマシ。または、伸びる峰やスタート早い菊地を5カドに据えての4対2。6コースは仕方がないとして、自力でも他力でも勝機のある隊形に誘導した気がしてならない。やはり桐生順平という男、おっとり顔とは裏腹の鬼の如き勝負師だ。

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 だがしかし、桐生に連動して舳先を翻したのは峰でも菊地でもなく、普通に4コースが取れる態勢だった丸野! できあがった最終隊形は、2対2対2に分かれた12・35/46。待機行動を揺さぶった桐生にとって、さほど伸びない丸野との同居は大誤算だったと思う、きっと。

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 次なる主役は、美味しい助走距離の3コースを得た菊地。内の憲吾がやんわり差しの初動を入れた瞬間、一気にエンジンを噴かせて見えないところからインの仁志に襲い掛かった。1マークのはるか手前での強ツケマイ。それは初日12Rの西山貴浩とよく似たタイミングで、ものの見事に決まりそうな勢いだった。

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 が、仁志もさる者、憲吾の外からいきなり出現した敵をチラリ目視するや、すぐに握って応戦した。2艇並走で1マークに突き進む光景は、やはりGPトライアルのなせる業だろう。その大競りは先に仕掛けた菊地に軍配が上がり、艇を合わせきれなかった仁志は引き波にハマってズルリ後退した。

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 そして、最後の主役の登場だ。5カドからややスタートで凹んだはずの丸野が、とんでもない放物状の航跡を描いて狭い間隙を突き抜けた。その航跡で一気に追い抜いた敵は、4コースの峰竜太! 菊地マークで絶好の差し場を得たはずの峰が、その美味しい漁場を30歳の新米にえぐり取られていた。昨日の当欄で「(4コースの丸野は5コースの)峰に一刀両断に斬り捨てられるのか」などと書いたが、現実に斬り捨てたのは、あえてコースの利を捨てて峰の外を選んだ丸野だった。なんと恐ろしい。

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 今日のこの1マークの衝撃的な光景をもって、丸野一樹という男を軽視するファンはもはやひとりも存在しないだろう。逆に「2号艇の明日も勝って、ファイナル1号艇を奪って、逃げきって黄金メット」という未来図を脳内に浮かべたファンが激増したことだろう。

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 だが、本当の修羅場はこれからだ。今節の丸野のサプライズ快進撃を私(や多くの記者)が声高に書いたのは、それが30歳の新兵だからだ。峰や桐生、瓜生、白井などが同じ芸当をやらかしても、それは当たり前の領域でしかない。我々の視線が丸野に釘付けになったように、強者たちは油断なくこの新兵を見据えるだろう。今節の丸野はやっと超一流レーサーの領域に足を踏み入れただけ。そう肝に銘じて、明日からの真の修羅場で緩みのない舟券作戦を練り上げたいと思っている。
 嗚呼、だからこそ、今日の丸野アタマ舟券はキッチリ召し取りたかったなあ(涙)。
(photos/シギー中尾、text/畠山)