BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト

デジタルタイマー爆撃

10R
①高野哲史(兵庫)12
②松井 繁(大阪)12
③魚谷智之(兵庫)13
④菊地孝平(静岡)05
⑤篠崎仁志(福岡)06
⑥徳増秀樹(静岡)05

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 韋駄天・菊地が専売特許のスタート攻勢でスロー3騎を瞬殺した。おそらく、今日の早い段階から4カドを想定していたのだろう。今節の菊地36号機は日によって自慢のストレート足が抜群だったりちょい劣化したり、レースによって使い分けている印象があったが、今日はその伸び~るポテンシャルを目いっぱいに引き出していた。

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 2着は百戦錬磨の王者・松井。1マークの手前で「菊地の伸び足に抵抗できない」と見るや、まくらせた瞬間に舳先を左に傾け、一目散にターンマークを目指していた。準優の「2着条件」という性質を知り尽くした応急措置。いや、王者の脳内には、ひとつの主流パターンとしてこの展開がインプットされていたのかも知れない。それくらいの迅速な「まくられ差し」だった。

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 リアルタイムで書いているので松井の明日の枠番は不明だが、2着で優出したことによってレース自体に大きな影響を与える可能性は低くない。現状のパワーは自慢の行き足を主体にした「上位の下」あたりと思われるが、明日の松井は枠番や戦術によってその足を前後にスライドしつつ最善の状態に導くだろう。

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 嗚呼、それにしてもの4カドからコンマ05、ほぼ全速! 今節の7戦をすべてコンマ10以内で駆け抜けている菊地が、明日になってそのスタート勘を逸するとは思えない。現時点での枠番は未定だが、菊地の内に選手がいるとするなら、レバーを握る手が震えるほどの脅威になるのではないだろうか。
 さても余談だが、前検から菊地菊地とバカ騒ぎしている私は、菊地アタマの万舟をミスミス取りこぼしてしまった。ヒモ軸に据えた5コース仁志も「菊地だけは超えてはならない」という不文律とともに絶好のスタートを決めたが、1マークで千切れて万事休す。王者の経験則が、私のド下手な舟券作戦の何百倍も上手だったと認めざるをえない。悔しいですっ!(号泣)

盤石と暗雲

11R
①峰 竜太(佐賀)08
②前本泰和(広島)03
③原田幸哉(長崎)01
④池田浩二(愛知)07
⑤毒島 誠(群馬)11
⑥山口 剛(広島)17

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 2コースの前本が大怪獣・峰をブッ差した。大金星を射止めた第一の勝因はスタートだ。峰のコンマ08も上々だが、それをはるかに上回るコンマ03! さらに言うと、生来のスタート野郎・幸哉はタッチすれすれのコンマ01まで踏み込んでおり、隣の前本も引くに引けずにキワまで突っ込んだのだろう。前本は50m手前で上体を起こしてアジャストしているが、この早めの調整は、結果的に大正解だった。

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 第2の勝因は、初日から恐ろしく噴きまくっている相棒21号機の行き足だ。スリットから両隣を置き去りにするように出て行く出て行く!! 1マークのはるか手前で峰よりほぼ1艇身突出し、あるいはジカまくりでもモンスター峰の毛皮を剥ぎ取った可能性は高い。

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 もちろん、行き足の差を肌身で感じたであろう峰も黙ってはいない。前本に艇を寄せるのではなく、逆に早い段階で内側にスッと艇を持ち寄りながら直進し、「まくりに来たら、このまま直進してかち合いますよ」的なガード態勢を築いた。準優という性質を考えれば、これが苦しいながらも最善策だったと思う。
 そうでなくても、前本と言えば2コース差しの名手。峰の動きを横目で確認しながら、峰にマイシロのまったくない先マイを強要してから、余裕たっぷりの差しハンドルを突き刺した。今日の両者の足色を考えれば、ここで完全に勝負あったとお伝えしていいだろう。

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「まくりを防御し、差されてもやむなし」という苦肉の戦術をとった峰は、そこで最低ノルマの2着を確定させたはずだった。が、そこから33号機の足色がどうにも頼りない。2マークでは幸哉名人の差しまで浴びて、あわやファイナル入りを逃すのか、という窮地に立たされた。2周1マークは幸哉を力でねじ伏せるターンでギリギリ凌いだものの、今日の33号機はやや変調だった気がしてならない。あるいは、今日の午前中の試運転で転覆した影響なのか。だとしたら、明日のファイナルまでに患部を精査して立て直す必要があるだろう。

湿気王子の逆襲

12R 並び順
①白井英治(山口) 11
②磯部 誠(愛知)   12
③桐生順平(埼玉)   07
⑥湯川浩司(大阪)   05
④上野真之介(佐賀)01
⑤長田頼宗(東京)   10

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 ここはシリーズリーダー白井で安泰か、と見ていたらば、今日イチの波乱が最後に用意されていた。人気の盲点だった6号艇・湯川が、まさかまさかのアタマ突き抜け!
 その勝因はいくつか考えられるが、まずはコースの利。最アウトでは厳しいとみた湯川が動くのは当然として、スタート展示は上野だけが身を引いての5コースまで。いざ本番では4号艇の長田も上野に連携し、湯川は4コースまで食い込むことができた。もちろん、ダッシュを選択したふたりも勝算があっての戦術であり、それ自体にまったく非があったとは思わない。ただ、ベテランの域に達した湯川にとって、6号艇での4コースは歓迎すべき最終隊形だったことだろう。

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 次なる勝因は、スタートだ。起こし位置の差があるとはいえ、10Rの菊地と同じコンマ05発進! おそらく全速に近かったはずで、外からさらに突出した5カド上野の攻めを受け止めるに十分なスリット足で主導権を握った。

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 もうひとつ、婉曲的な勝因があったとすれば、それはイン白井の1マークのターンだ。外から激しく襲い掛かる選手がいなかったにも関わらず、握りすぎて外に大きく流れるような旋回に見えた。後に黒須田から聞いた話では「最終調整が外れてサイドが掛からなかった」とのことだが、確かに白井らしからぬインモンキーで湯川や上野にズボズボと差されてしまった。バックの出口で最内にいた湯川にとっては絶好の花道が生まれ、そのまま波乱の立役者になった。このタイトルを3個も保持し、「ミスターグラチャン」「湿気王子」などと呼ばれて久しい男が、復権のチャンスを掴み取った。

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 一方、バック直線で優出すら危ういポジションだった白井は、2マークの逆転差しでなんとか2着を確保。予選トップてファイナル1号艇を逃したのは大誤算だったはずだが、明日はしっかりとゾーンに入れて4号艇からの優勝を目指してもらいたい。たとえ1号艇だったとしても、楽には勝たせてもらえない選手&パワーが揃っているのだから。(photos/シギー中尾、text/畠山)