BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

優勝戦 極私的回顧

僕たちのKENGO!

12R優勝戦
①濱野谷憲吾(東京)15
②馬場貴也(滋賀) 18
③瓜生正義(福岡) 18
④篠崎元志(福岡) 18
⑤峰 竜太(佐賀) 17
⑥平本真之(愛知) 19

f:id:boatrace-g-report:20210725183149j:plain

『東都のエース』と呼ばれて四半世紀、濱野谷憲吾が14年ぶり5個目のSGタイトルを戴冠した。スリットは↑御覧のとおり、美しすぎるほどの横一線。チルト2度に跳ねた平本は、峰にガッチリ止められて万事休す。

f:id:boatrace-g-report:20210725183220j:plain

 こうなると、コースの利と機力がモノを言う。わずかにハナを切った濱野谷が1マークを先制し、怖い怖い馬場が十八番の2コース差しを突き入れる。やはりその差しハンドルは早くて速く、しかも専売特許のウイリーを連発して濱野谷の内フトコロを脅かす迫力ではあった。

f:id:boatrace-g-report:20210725183252j:plain

 だが、昨日の準優よろしく、ターンの出口からじりじりと加速したのは、むしろ濱野谷24号機の方だ。入りかけた馬場の舳先が削げ落ち、1艇身、ひとつ半、2艇身と差を広げ、2マークを待たずに濱野谷の優勝が約束された。

f:id:boatrace-g-report:20210725183327j:plain

「おめでとーー、おめでとーー、おめでとーー、おめでとーー!!」
 濱野谷が独走のゴールを通過すると、スタンドの片隅に立つ初老の男性が同じ言葉を何度も何度も繰り返した。そう、濱野谷憲吾は『東都のエース』なのだが、若い時分の強さを知っている往年のファンは、東京のみならず全国津々浦々に潜伏している。2日前、遠賀川駅からの相乗りタクシーで同席した初老のファンも、「濱野谷が優勝しそうで良かったですね、良かった良かった、ホントに良かった♪」と相好を崩していた。あの方も、今日のレースを見てさぞや喜んだことだろう。

f:id:boatrace-g-report:20210725183423j:plain

 ただ、SG優勝は14年ぶりだからして、スタンドの大半を占める20代、30代のファンはどうかしらん? と見ていたらば、レースが終わってもほとんどすべての若者たちがスタンドに居残っている。地元の瓜生でも元志でも、常勝・峰でもないのに、嬉しそうに今か今かと47歳の勝者を待ち構えている。

f:id:boatrace-g-report:20210725183518j:plain

 そして、レスキューに乗った濱野谷が例によって「デヘヘヘヘ」みたいな締まりのない笑顔で手を振ると、老若男女を問わず、すべての観衆が拍手、歓声、「おめでと~!」など、それぞれのスタイルでデヘヘな濱野谷を祝福した。

f:id:boatrace-g-report:20210725183547j:plain

 いつでもどこでも誰にでも、この男は愛されてるなぁ。
 改めて実感する。シュッとしたイケメンで、47歳になってもブロンズに染めた髪がサマになって、笑顔がキュートで、全身から妙な色気を発していて、常におっとり柔らかな話し方で、どこか頼りなくて、いつも体重が重くて、ここ一番でポカもやらかして、だけどツボにハマるといきなり凄いターンを魅せて、人気漫画(アニメ)の主人公にもなりそうで、実際にそのモデルにもなって、そんなこんなの魅力を一言でまとめるなら「アイドル性」なのだろう。

f:id:boatrace-g-report:20210725183623j:plain

 ただ、優勝後のお立ち台に上がった47歳のアイドルは、キリリと引き締まった顔であまり言いそうにない言葉を口にした。
「グランプリには取り損ねたものがありますから……」
 おお。この男のファンなら誰もが胸に秘めているものを、本人がサラリと言ってのけた。封印したくても封印できない、それぞれの心に残った膿のようなものを。今年の3月にからつで24制覇を果たし、4月に大村GIを制し、そして7月にSGを云わした男は、ガチの本気で日本武道館ならぬ住之江を目指している。忘れ物を取り戻しに行こうとしている。

f:id:boatrace-g-report:20210725183652j:plain

 もしもそれが実現したら、本人だけでなく全国のあまたの憲吾ファンも無くしてしまった大切なものを発見したような、そんな幸せな気持ちに浸ることだろう。今日現在の獲得賞金は8162万円で峰竜太に次ぐ第2位。できることなら、純地元の平和島ダービーでこのままGPトライアル2ndの1号艇を確定させてもらいたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)
     ※    ※    ※
 さてさて、ここからは「予定稿」で前もって書いておいたアイドル・憲吾のプロフィール。ぜんぶ知っているコアな憲吾フリークもおられるだろうが、峰や毒島ばかりに気を取られている若いファン層にも、濱野谷憲吾という男の突出した才能や趣味などもお伝えしておきたい。

f:id:boatrace-g-report:20210725183737j:plain

特別付録/『3590浜野谷憲吾のお部屋』

★1973年11月8日、東京生まれ。2歳上の兄貴・憲尚は元JRAジョッキー(通算79勝)。区立池尻小~区立新星中(現在は廃校)~駒大高というチャキチャキの世田谷っ子だったが、「いい車に乗りたい!」とボートレーサーを志して高校中退、91年に本栖訓練所に入所。翌92年5月19日に平和島でデビューするや2着・1着で2戦目に水神祭。7カ月半後の93年1月に多摩川で初優出、さらに8カ月半後の9月に戸田で初優勝を飾った(デビューから1年5カ月の19歳)。
★20歳でGI初出場。デビューから1年10カ月後の94年2月、平和島・関東地区選で予選突破はならなかったものの、節間3勝をマーク。翌95年9月、多摩川周年記念でGI初出(2着)。さらに2年後の97年9月の桐生周年記念、23歳でGI初優勝を遂げた。その後も記念戦線で活躍し続け、GIトータル97優出22V。
★SG初出場は96年10月の福岡ダービー。22歳の憲吾は5日目の4Rと7Rに「1日2回転覆!!」というド派手なパフォーマンスをやらかし、この1日で全国に名前を売りまくった。ちなみに転転直後の1勝も含めて節間3勝。翌97年10月にからつダービーでSG初優出(6着)~翌98年10月に再び福岡ダービーで5コースから一撃まくりでSG初制覇! 2年前の転転も含め「ダービーのお祭り男」として、アイドルレーサーの座を不動のものにした。ちなみにオールスターは97年から今年まで皆勤賞で25年連続出場。SGの通算記録は、今日も含めて40優出5V。
★生涯獲得賞金は約23億円で歴代6位。で、これまでで最高額の買い物はベントレーのコンチネンタルGTだとか。「いい車に乗りたい!」という夢をしっかり叶えている。
★減量の方法・工夫は「食べず、運動」。今節の前検は55キロで入り、そこから54キロ→53キロ→と日々1キロずつ減量し、「いよいよ52キロ到達か!?」と思った翌日はリバウンドの54キロに逆戻りしていた。「食べず、運動」の他に「サウナ」も絶賛活用してもらいたい(笑)。
★休日の過ごし方は「家でゴロゴロ、犬と遊ぶ」。できれば「ジョギング」や「サウナ」も追加してもらいたい。
★あまりにも有名だが『モンキーターン』の主人公・波多野憲二のモデル。波多野の誕生日が7月25日、つまり今日であることは優勝インタビューで知りました、はい(笑)。
★趣味は「パソコン・ゴルフ・サバゲー・DJ・海釣り・スキューバダイビング」と実に多趣味で、できればアウトドアを主体に減量しながら心身を鍛えてもらいたい。

★好きな食べ物は「ラーメン・イタリアン・肉」。食べ過ぎ注意で、できれば魚系のたんぱく質も摂ってね!(笑)