BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――慌ただしくもほのぼの

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 ペラ室から神妙な顔つきで出てきた西山貴浩。引いたモーターは評判機のひとつだが、やはり初日の早い時間帯は調整に、あるいは調整の方向性を探るのに、忙しいものである。悪くないモーターを引いただけになおさら、という部分もあるか。ちなみに、瓜生正義に大声で報告した足色は「重い! めっちゃ重い! でも伸びる!」だそうです。重い、をちょうど僕の横を通り過ぎる際に叫んだので、俺がデヴってことだと思ったよ。ようするに、かなり伸びに寄っているということだろう。

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 と、早くも真剣モードに入っている西山だが、仲良しの池田浩二の姿を見つけるとプルンと頬が緩む。なんかイジってやろうという腹の底が見え見えの表情だ。ファンの方もよくご存じだろうが、本当にこのふたり、仲がいいのである。もちろん先輩後輩ではあるのだが、ほとんど友達関係だな。さっきまで真面目な顔をしていたのに、二人はまるで散歩でもするかのように、ピット中を徘徊し始めた。肩を並べ、笑みを浮かべ、実に楽しそうに見えるわけである。実際は、何か共用の工具か何かを探しまわっていたようなのだが、その様子が楽しそうに見えるのは、お互い心を許し切っているからだろう。

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 仲がいいといえば、やはり同期勢のやり取り。昨日今日とよく見かけるのは109期勢の絡みで、丸野一樹、大上卓人、永井彪也の3人が今節参加。3人一緒はなかなか見ないが、2人ずつの絡みは随所で視界に入ってくる。100期台後半では、やはりこの109期が現在のところはリードしている感じですね。

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 さて、試運転をいったん切り上げて陸に上がってきた岡崎恭裕。装着場のいちばん手前に1艇分空いているスペースを発見し、そこにボートを運ぼうと舳先を向けた。ところが、そこは控室から装着場への通路になっており、ボートをそこに置いたら通行の邪魔になりそうだった。また、そこは我々が立入を許可されているギリギリの場所で、カメラマンも鈴なりに並んでいる。そこに置くのを諦めた岡崎は、舳先を翻して奥のほうへと向かう。しかし、他のボートもびっしりと並べられており、岡崎はいちばん奥のほうへとボートを持っていくしかなかったのであった。あらら。

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 岡崎が最初に置こうとしていた部分はわりと人気のスペースと言っていいかも。というのは、ペラ調整室の真横なのだ。ペラを外して調整室へ、という動きをするなら最も効率的。しかも、ボートリフトにも近いから、水面に下ろすのも簡単だ。今日は新田雄史と田村隆信のボートが置かれていたが、新田はいつもここで見るような気がするな。お気に入りの場所なのだろうか。田村はカウルのネジをきつく締め直していた。フロントのカウルとサイドのカウルの隙間が小さくなるよう、ヒザでカウルを押さえつけながらの作業だった。こんなにも精緻にカウルを締め上げるのは初めて見た。

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 岡崎が狙っていた場所はまさに田村の隣なのだが、ここにボートを押し込んだのが2R後の羽野直也であった。1着であがってきたので、真っ先に戻ってくることになった羽野。リフトから一目散にこの場所を目指した。うん、羽野が、じゃないですね。エンジン吊りのため出迎えた先輩たちが、そこにスペースがあるのを見てボートを押していったのだ。岡崎はその頃、3Rの展示航走。岡崎がいたら、「あそこは狭いよ」と言って、別の場所にボートを運んだことだろう。

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 で、ここはたしかに狭くて、しかも傾斜がかかっているから、ボート架台の車輪止めが短くなっていて安定感に欠くのだった。羽野が他の選手たちにあいさつ回りをしている間に、ああ、羽野くんのボートが装着場のほうへコロコロコロ……。1mほどで止まったけれども、やっぱり見ているほうは肝が冷える。そして、あいさつ回りを終えた羽野が自分のボートを一瞥したら、あらら、ボートが動いているじゃないか。羽野は駆け出して処理しなければならない羽目に。実は岡崎の判断のほうが正解だったのですね。それはともかく、羽野は好発進。コロコロと後退しないよう、明日からも奮闘してください。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)