BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――早朝

 9時30分から朝のスタート特訓がスタート。今日はこのタイミングでピットに入った。勝負駆けデーとはいえ、4日目ともなるとすでにドタバタしているような選手は見当たらない。特訓は1~5Rに出走する選手が参加できるのだが、それ以外の選手はペラ調整をしたり、自艇でモーター回りの点検をしたり。喫煙所では石野貴之がうまそうに煙を吐き出していたが、すでにペラ調整を進めていて、ちょっと一服といった風情だった。今朝のところは、整備室には選手の姿は皆無。

 スタート特訓を終えると、そのまま係留所にボートをつける選手も多いが、いったん陸に上げる選手も。4Rの特訓を終えた毒島誠がその一人で、ボートを装着場にあげて、架台のストッパーを下げると、すぐさまプロペラを外して、急ぎ足で調整所に向かった。おそらく展示ピットにつけるギリギリまで調整をして、大急ぎで再度ボートを下ろすことになるのだろう。

 11R1回乗りなので特訓には参加していないが、遠藤エミも試運転から同じようなタイミングでボートを陸へ。これがまた毒島と実に同じような動きで、即座にペラを外して調整所に走った。今日はたっぷりと時間があるわけだが、一日ほぼ、この動きを繰り返すことになるのだろう。朝9時台から午後の深い時間までだから、なかなか大変そうだぞ。

 逆に、ボートを下ろそうとする選手もちらほら。羽野直也がペラを装着して、リフトへと向かう。ところが、進路上では関係者が会話を交わしていて、道がふさがった状態。どうするかと思ったら、羽野はあっさりと遠回りする進路を選択し、静かにリフトまでボートを運んだ。道がふさがってたことに不満そうな表情も見せなかった。ピットのスペースは限られているから、こうしたことは日常茶飯事なのだろう。

 山田哲也は、リフトに乗る直前にふと歩みを止めて、舳先のあたりを覗き込み始めた。違和感があったのだろう、時間をかけてチェック。そうしていると、リフトの係員の方が艇修理の係の方のもとに走り、山田を誘導。山田も装着場に引き返して、修理係の方とともに舳先まわりをさらに点検するのだった。結局問題はなかったようで、そのままリフトへとボートを乗せたが、ほんのちょっとした違和感を見逃さないあたりがさすがのSGレーサーである。

 やがて、1Rの展示が控えている渡邉和将が喫煙所に姿をあらわした。煙草を吸うわけではなく、ベンチに座ってたたずんでいる。ようするに、展示に向かう前の待機ということなのだろう。喫煙所には陽が当たっていたので、日向ぼっこのようにもなっていた。

 そこに、ペラ調整をいったん切り上げた菊地孝平が、翼面を日光に当てながら形状をチェックするため登場。頭上にペラを掲げ、じっと翼面を睨む菊地。すると、「昨日は危なかったな」と渡邉に声をかける。渡邉は、そうなんですよ~、と舳先が浮いた状況を説明、菊地はその間もペラから目を離さず、渡邉に言葉を返していった。両者の接点というのはあまりよくわからないけれども、菊地は誰でも分け隔てなく優しい言葉をかける人なので、渡邉も気安く言葉を交わし合えたというところだろう。
 そうこうしているうちに、展示集合のアナウンスがかかり、渡邉をはじめ1R組は待機室へ。さあ、今日もレースが始まる!

 というわけで、その1Rは佐々木完太が見事逃げ切って水神祭! 同支部の大峯豊や中四国地区で同地区である近江翔吾らに称えられて、柔らかい笑顔を見せていた。今節、ピットでは彼の笑顔をまったく見ることができなかったが、これで胸のつかえもとれたことだろう。おめでとう!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)