1R、原田才一郎が先マイ放つも、2コースから吉川貴仁が差して迫る。吉川は舳先を掛け、原田はなんとか振りほどこうと締め込みにかかるが、吉川も一歩も譲らない。せめぎ合いは2マークまで続き、両者大競り! その間隙を畑田汰一が突いて先頭に立った。
苦笑いであがってきた原田に、まず声をかけたのが上條暢嵩だった。両手をボートに見立てながら、おそらくは対処法のアドバイスを送る。整備室のモニターでそのシーンを見ていた上條は、直後に「やっちゃったか」的な笑顔を見せていたのだが、それで原田に何かを伝える気になったのだろう。支部も地区も違うが、さすが格上の貫禄とでも言うのか、原田は明るい顔で上條の言葉にうなずいていた。
その後は、羽野直也が同じように原田に話しかけていた。こちらは同支部の先輩後輩。そして、原田がまず目指すべき地点と言うべき存在である。レースを見ていて、やはり羽野先輩も気になったのであろう。ここでも原田はハキハキとした雰囲気で、羽野の言葉に聞き入っているのだった。
上條にしろ、羽野にしろ、彼らのような実績組の先輩とこの舞台で言葉をかけられるのは原田にとって大きなことに違いない。二人の準優の戦いぶりを、ぜひとも注視してもらいたい。そこから得るものもまた大きいはずだ。
さて、基本的に朝のピットはなかなか静かなのであった。装着場に置かれているボートを軽くチェックすると、準優組のうち16艇があった。ベスト18の大半は、まだ始動らしい始動はしていないと言っていい。上條のボートには艇旗艇番もまだ付いていなかった。だいたい支部の若手がやるものなので、これはなかなか珍しい状態とも言えた。
1Rの時点でペラを叩いている選手も少なかった。整備室の外の調整所で入海馨がペラ叩き。ここはピットに足を踏み入れると真っ先に目に入る場所で、実は連日、最初に目撃してきた選手が、ここでペラ調整をする入海なのだった。今日もそれは変わらなかった、というわけである。
整備室内の調整所には、野中一平、中村泰平、吉田裕平の愛知3人組が会話を交わしながらの調整を行なっていた。愛知勢からはこの3人が準優進出し、見事にレースも分かれた。こうなれば、それぞれがそれぞれのレースで勝ち上がって、優勝戦で顔を合わせるのが理想。となれば、お互いに情報交換をしながらの調整となるのもうなずける。などと書いていたら、目の前で野中と吉田が足合わせをしているではないか。準優に向けて、さらに会話は増えていくことになるのだろう。
1R発売中、準優組で試運転をしていたのは2人。まずは松井洪弥。先述の入海、松井ともに6号艇。もう一人の6号艇・仲谷颯仁も早くからペラ調整をしており、内枠勢に気配で劣る大外枠の動き出しが早いのはまあ納得ではある。松井は試運転の合間にペラを叩いてもいて、早くも見せている精力的な動きが今日のような静かな雰囲気のなかではけっこう目立つのだった。
もう一人、試運転をしていたのはなんと関浩哉。超抜パワーで準優1号艇を手にした関が、誰よりも早く水面を駆け、そしてペラを叩くのだった。今日も不思議なほどにハンマーを強く打ちおろしている。昨日のコメントを見ると、やや迷いが生じている模様。足は変わらずいいのだが、自分の目指すところまで到達していないような様子だ。2R発売中には、同期の川原祐明にアドバイスを求める場面も。今日は一日、当たりを探してさらに動くことになるのであろう。準優、昨日までに見せた以上のパワーを見せつけてくれるのかどうか。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)