BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――パワーとスタートと

●大阪若手の受難

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 3日目の序盤は、大阪の若手勢にとって厳しいものとなってしまった。1R、1号艇は上條暢嵩。コンマ07の好スタートから軽快に先マイし、逃げ切ったと思われたが、ツケマイで襲い掛かってきた深川真二が超抜パワーで抜き去っていったのだ。深川に対してしっかり合わせにいっているし、瑕疵のない先マイに思えたのだが、これはもう相手が悪かったとしか言いようがない。
 というわけで、引き上げてきた上條はただただ苦笑い。出迎えた大阪勢も、そんな上條を見て気の毒そうに微笑むのであった。「今のは何かがおかしい……」と上條はボソリ。愚痴りたくもなるよね。

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 2R、1号艇は山崎郡。水神祭の大チャンスだったわけだが、毒島誠に2コースからジカまくりを食らってしまった。ここまで着を獲れていない山崎、さらに1号艇をフイにしてしまったからだろうか、視線はどうしたって下を向いてしまう。冴えない表情で控室に向かう山崎の肩はガックリと落ちているように見えた。
 そんな山崎に、スリット写真を見た松井繁が「早いわ」と声を掛ける。山崎は「やっぱりそうでしょう?」。山崎のスタートタイミングはコンマ06。そして毒島はコンマ01! これは付き合えないし、山崎は放ったか? 自分の判断が間違ってないと王者は言ってくれたわけで、その一言が少しは救いになったかもしれない。

●フゥゥゥゥゥゥゥッ!

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 山崎をジカまくりで下した毒島誠は、スリット写真を見て奇声のような叫びをあげた。それに濱野谷憲吾も呼応してフゥゥゥゥッ! 危ない危ない、ぎりぎりセーフ! てな感じでしょうか。たしかに早すぎるスタートではあるが、残ったのだから好スタート。それで勝てたのだから、お見事である。で、中尾カメラマンによれば、その後競技本部に呼ばれていたとか。際どいスタートだと、競技本部にお呼びがかかって注意を受けるのです。ブスちゃん、この後は気をつけてね!

●顔色ひとつ変えず

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 1R、深川真二のツケマイが決まったとき、ピットでは「おおっ!」という野太い声がいくつもあがっていた。誰もが深川のパワーに驚嘆したわけだ。平本真之など「あれはめっちゃ出てる」といった風情の苦笑いも見せていて、今後対戦があったときのことを想像して警戒したかもしれない。
 しかしながら、当の深川本人は、ピットに帰ってきても淡々としたもの。まさに顔色ひとつ変えずにエンジン吊りを終わらせて、黙々とカポック脱ぎ場に向かうのだった。結果を知らずに眺めたら、強烈な勝ち方をした勝者の姿には見えなかったかも。そして、それがかえって、深川の風格を強く感じさせるものになっていたのだった。

●よく行ったな!

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 そんな深川が口を開いたのは、スリット写真を覗き込んだとき。深川自身、コンマ07と早いスタートを行っているのだが、それよりも湯川浩司が同じタイミングのスタートを切っていたのに感心したようだった。湯川は昨日、フライングしているのだ。にもかかわらず、4カドからゼロ台のスタートを決めてきた。正直、ワタシも驚きました。そして、深川本命なのにヒモが抜けました……。
 ちょうどそのとき湯川が引き上げてきていて、深川は「よく行ったな!」と湯川を称えた。はい、本当によく行きましたね……。まあ、さすが快速王子である。

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 2Rの池田浩二も、フライング後ながらコンマ12と好スタート。内寄りがかなり早いスタートを行っていて、隊形的には6番手スタートということになるわけだが、状況を考えれば素晴らしいスタートと言える。何より、2着に食い込んできたのだからさすがの最強戦士である。はい、これも毒島本命なのにヒモが抜けました……。ちょっとおどけた感じで引き上げていく池田を見ながら、ただただ脱帽でございました。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)