BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル2nd・第3戦ダイジェスト

最後の扉

11R
①毒島 誠(群馬)04
②丸野一樹(滋賀)10
③白井英治(山口)05
④桐生順平(埼玉)17
⑤菊地孝平(静岡)06
⑥辻 栄蔵(広島)12

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 穏やかな枠なり3対3で、スリットラインはちょいと珍しいテレコの凹凸。ならばゼロ台半ばの奇数艇が有利としたものだが、内では3コース白井が攻撃態勢を築く前に丸野がしっかりした行き足で伸び返し。今日の丸野は自慢の回り足だけでなく、ストレート足も大幅に上積みされていた。鬼に金棒と呼ぶべき足色だ。
 外では5コース菊地がかなり突出して見えたが、そこからの伸び足がまったくない。デジタルスターターには珍しく思いっきり放ったとのことで、コンマ06という数字だけが勇ましい空威張りのようなスタートになってしまった。

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 攻めるべき3・5コースが攻めあぐねている間に、昨日の抽選で絶好枠を引いた毒島がしっかりガッチリ逃げきった。逃げ圧勝のパワー評価は難しいのだが、ターン出口からウイリーとともに加速した押し足は軽快そのもの。1分46秒8という好タイムも込み込みで、ちょいと頼りなかった昨日よりも全体に強めだったと思う。

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 複数の引き波を超えるレース足に関しては、2日目に5コースからの切れ味鋭いまくり差しで立証積み。つまり、明日の毒島が調整ゾーンのど真ん中にぶち込むことができれば、6コースからでも十二分に戦える鬼足になる可能性を秘めている。とは言え、自力で攻める伸び足は期待できないので、それなりの展開の助けが必要ではあるのだが。

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 そして、今日もやっぱり丸野だ。前述、鬼に金棒パワーを味方につけたSGの新兵は、今日もまったく間違えなかった。2艇身後ろの白井が強烈な切り返しを突きつけても、スッと落として冷静沈着な差しで難問クリア。ならばと白井がツケマイ気味に握ると、今度は内から握りマイのカウンターパンチで応戦。旋回するたびに相棒の38号機が唸りをあげて、ついに白井を大差で千切り捨てていた。

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 頭に浮かぶ言葉は、今節の当欄で何度も引用した「完璧な立ち回り」。初日からの全5戦で、並み居る強者たちが入れ代わり立ち代わり20問ほどの引っ掛け問題を突きつけたが、私が見る限りすべての罠を見破って全問正解で最終バトルもクリアしてしまった。思えば、先の鳴門BBCトーナメントでも同じようなことを書いた気がするのだが、まさかここまで完璧にGPダンジョンを通過するとは……うん、今日の立ち回りに至っては、もはや驚きや讃辞なんぞは介在することなく「ああ、やっぱそう来るよねぇ」みたいな安定感と諦念(←白井2着の①-③を押さえていたから)しか感じなかったなぁ。
 丸野一樹、1号艇のないトライアル2ndを2・1・2着=28点という高得点で突破! そして、この得点は次の12Rのレース内容に大きな影響を与えたはずだ。

ラスボスの咆哮

12R
①平本真之(愛知) 10
②原田幸哉(長崎) 12
③瓜生正義(福岡) 22
④篠崎仁志(福岡) 19
⑤濱野谷憲吾(東京)14
⑥峰 竜太(佐賀) 16

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 そう、丸野の2着は、このレースの峰と瓜生に大きな“縛り”を与えたのだ。
【2着以内に入らなければ、100%明日の1号艇にはなれない】
 という厳しい縛りを。これは『BOATBoy』の1月号でも書いたことだが、トライアル最終バトルの11Rと12Rは野球の延長戦に似ている。先攻11Rの選手は、ただ全力で己の点数を増やすのみ。一方、後攻12Rの選手は、先攻めの点数を確認してから作戦を組み立てることができる。1点差なら送りバントもありえるが、5点取られた後に送りバントを選ぶ監督はいない。

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 11R終了後に【最低でも2着以内】という条件を突きつけられた6号艇の峰は、直後のスタート展示で激しく動いた。ゴリゴリ攻めた末の隊形は、1234⑥/5。ひとつ内に潜り込むことはできたが、ストレート強力な濱野谷の単騎ガマシをモロに浴びる危険な5コースだ。
 いざ本番、峰は作戦を変更した。ゴリゴリ行くと見せかけて、途中でストップ。徹底ブロックを決め込んだ艇をスロー水域に追いやってから、潔く舳先を翻す。昨日の桐生順平と同じタイプの、いわゆる「やりのやらず陽動作戦」。この作戦に相乗りしたのは、スタ展でもダッシュを選択した濱野谷だった。

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 最終隊形1234/56
 5カドに引いた濱野谷もまた【ファイナル進出にメイチ1着条件】という勝負駆け。おそらくこの隊形は、待機行動を牛耳った峰にとって理想形のひとつだったはずだ。1着しか眼中にない濱野谷は、5カドから攻めた。スリットから半艇身ほど突出しての、伸びなり絞めまくり。カド受けの仁志が必死に抵抗するが、濱野谷も力任せに絞め込んで1マークに殺到する。

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 この時にはもう、6コースの峰は濱野谷とはまったく異質な航跡を描いていた。少し直進してから徐々に舳先を左に傾け、ぽっかり空いた間隙に全速で突き進む。あっという間に、必要条件の2番手確保! どこからこの展開を読んでいたのか分からんが、進入からスリットから濱野谷vs仁志の競りまで、峰が2着になるために作られた舞台装置のようだった。

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 うーーん、峰ってこんな芸当ができる策士だったっけ。
 思っている間にも、峰はずんずん後続を引き離してゆく。ずんずん引き離して、ずんずんファイナル1号艇に近づいてゆく。前方には逃げる平本がいるが、GPの勝負駆けとしては無理に深追いする相手ではない。平本が真っ先にゴールを通過してファイナル3号艇を決め、峰のゴールでファイナル1号艇が決まった。このレースには、“勝者”がふたり存在した。

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「おいおい、どんだけ強いんだよぉ、ミネッ!」
 スタンドの若者が叫んだ。6コースから軽々と2着を奪った強さに呆れたのか、険しい“縛り”をあえて6コースから克服した強さに痺れたのか。その真意は分からなかったが、どちらにせよ私もそのセリフに同意するしかない。2021年のダンジョンの最奥に潜むラスボスは、やはりこの男だった。(photos/シギー中尾、text/畠山)