BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――緊張やいかに

 大きな悔恨というのは、一晩明けたくらいでは晴れないものである。こちらの顔を見るや、歩み寄ってきて「申し訳ありませんでした」と頭を下げた徳増秀樹。準優Fでいちばん悔しいのはもちろん徳増で、しかしそうして詫びるのである。いやいや、観戦者であるこちらはむしろ徳増の心中を察するのであって、謝られる必要は何もない。すると徳増は「よいお年を」。ああ、そうか。この準優FでメモリアルからグランプリシリーズまでSG出場はできなくなった。グランプリは特例で、賞金ランク上位18位に入れば出られるが、SGから離れるのだから事実上出場は不可能である。そうか、この濃さに来年まで触れられないのかと思うと、少し寂しい。

 平山智加は、泣き真似をしながら歩み寄ってきた。むーん、昨日は残念! それを告げると、平山もまた頭を下げる。いやいや、こちらもいちばん悔しいのは平山自身。今日になっても引きずっているということは、つまり平山にとっては大きな経験だったということにもなろう。「家に帰ったら怒られる」と笑う平山。旦那さんは福田雅一ですからね、語り合うことはたくさんあるだろう。

 そうした悔恨を踏み台にして、優勝戦に進んだ6名。これが勝負の世界の厳しさである。その6名は、いずれもわりと早めの動き出しだったように思う。なにしろ、1R発売中には太田和美が試運転に出ていたのだ。SGファイナルデーの過ごし方は承知し切っている太田にとって、これが最善の動きということだろう。

 ざっと書けば、椎名豊はモーターを装着して、プラグをチェックするなど入念な点検の後、ペラ室へ。稲田浩二はやはりモーター周りを入念な点検。丸岡正典は2R発売中にいったんペラ室へ。調整の準備をしているようだった。桐生順平は1Rのエンジン吊り後にペラ室へ。片岡雅裕は優勝戦用のカウルのネジを締め込むなどの作業をしていた。今日は節イチの暑さと感じるピットだが、ゆっくりと涼んでいる優勝戦メンバーはいないようだった。

 気になるのはやはり椎名豊だろう。緊張していて当然で、その先入観込みと断ってはおくが、やはり緊張感が伝わってくるたたずまいである。そのこと自体はそれでいいと僕は思うし、あとはその緊張がレースに影響しないよう、いい一日を過ごしてほしいということになる。まずは抜かりなく調整をして、臨む優勝戦になるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)