BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

一撃クイーン。

12R優勝戦 並び順
①實森美祐(広島)  F+06
⑥平山智加(香川)  01
②大山千広(福岡)  02
③香川素子(滋賀)     03
④松尾夏海(香川)     08
⑤藤崎小百合(福岡 )04

 登録番号3900ぴったり、滋賀のビッグママ素子はんが39号機とともにプレミアムGIのゴールを駆け抜けた。45歳にして記念初制覇、おめでとう!!

 シリーズ最後のファンファーレを聴きながら、私は實森美祐の優勝を半ば確信していた。9R前後に吹き荒れた強烈なホーム追い風は嘘のように止み、11Rでは師匠の角ひとみが鬼気迫る走りで逃げきって“お手本”を示した。
 舞台を司る大道具のように、實森が逃げきるためのお膳立てが組みあがっていく。
 そう思った。実際、2分後に今節の若きシリーズリーダーは、昨日と同じ完璧なインモンキーで後続をぶっ千切った。昨日と同じ、完膚なきまでの圧勝劇で。ただひとつ、昨日と大きく違ったのは、スタートタイミング。コンマ+06、完膚なきまでのはみ出しだった。

 今節、キレッキレの實森のスタート勘を狂わせたのは、やはり地元・平山の猛烈な前付けだったか。それまでの特訓より、スタート展示より、平山は強く激しく動いた。最後までブロックしたのは實森だけで、最終隊形は16・2/345。オール女子戦では極めてレアな隊形だ。インコースの助走距離だけを見るなら準優と同じ100m前後なのだが、隊形の不気味さが半端ない。

 見えない後方から行き足の強い大山~香川が襲い掛かってくる。
 その思いが、昨日までの實森より強く早くスロットルレバーを握らせた気がしてならない。これから實森はいくつかの罰則を背負うことになるが、25歳の勇み足。反省とともに、大きな学びとして今日の一事を血肉に換えて欲しい。

 こんなレースだったためか、素子はんはゴールを通過してもさしたるリアクションは見せず、手を振るファンにゆっくりと頭を垂れた。勝利者インタビューで「とにかくビックリしました」と吐露しているから、ビックリしたまま通過したに違いない。

 だがしかし、己を自制しきれずにスリットで散った實森は「欠場」だからして、文句なしの優勝なのである。4コースから的確な差しハンドルを捩じ込み、平山&大山の女王コンビを一刀両断に刺し抜いたバック直線。「恵まれ」とは45歳の新女王にあまりにも失礼な決まり手であり、私の中では「一撃差しクイーン」という称号を授けたい(笑)。あ、そうそう、素子はんの背中を押し続けた39号機(三島敬一郎・十傑の第一席モーター)にも天晴れを贈るとしよう。

 さて、私もバック直線でビックリしたのと、当たったと思いこんだ勝負舟券が等価で戻ってきた失望とで、あまり書くべき言葉が見当たらない。少しだけ實森以外の敗者について語るなら、6号艇滑り込みから果敢な特攻精神でインを奪いに行った平山、それら進入争いの混戦を尻目にF2持ちでゼロ台ま踏み込んだ松尾……地元ふたりの敢闘精神は、とても尊いものに思えた。
 それは、勝負どころで鬼気迫る勝負手を放った山川美由紀、中村桃佳、平高奈菜、西村美智子(こ、これは勇み足だけど)も然り。地元のレーサーが地元のファンの期待に応えるべく、なりふり構わず勝ちに行く。それが“オール女子戦道”に反すると言うなら、どんどん反するべきと思う。

 遠藤エミがSGの頂点に立った瞬間、私は目に見えない男女の垣根が取り払われたような気がした。男どもと本当の意味で互角に渡り合い、男どもの“普通の乱戦”にどんどん足を踏み入れる時期が来た、と思った。今節は地元戦士だけが目立ったが、彼女たちの行動(=気持ち)は女子戦の域を超えて大なり小なりの影響を及ぼすだろう。及ぼしてほしい。實森美祐が、今日のような“変則隊形”でも慌てず騒がず、堂々と逃げきる下地を作ってもらいたい。オール女子戦の中でも。(photos/シギー中尾、text/畠山)