今節のJLC中継でピット解説を務める山口雅司さんと話し込む宮之原輝紀。山口さんは東京支部の元レーサーだから、宮之原にとっては大先輩にあたる。このシーンは、宮之原のほうから山口さんに声をかけて始まったもの。山口さんといえばペラ巧者で有名で、今も多くの後輩が山口さんに助言を求める。そういう先輩がピットにいて、現場で会話ができるのは宮之原にとっては引き出しを増やすという意味で、大きな意義があるものだろう。それは今節すぐに成果が出るということではなく、彼のまだまだ先がないレーサー人生において、だ。それこそ、立ってる者は大先輩でも使え、とばかりに、たくさん話を聞くのは絶対にプラスである。
ヤングダービーというのは、ようするにキャリアが浅い選手たちの戦いである。最も先輩の渡邉優美にしてもデビュー13年であり、他の節のようにベテラン選手がピットにいるわけではない。もちろん、それでも先にデビューした面々はそれなりに経験は積んでいるわけだが、そりゃもう引き出しの多さではベテラン選手たちにはかなわなくて当たり前。だから、支部関係なく、山口さんといろいろ話をすればいいのになあ、と大きなお世話だが思ったりするわけである。
そう考えると、昨日見かけた「栗城匠が豊田健士郎にアドバイスを受けている」と見えたシーンというのは、たった3期であれ、先輩の豊田に支部関係なく栗城が話を聞いているという点で、悪くないなあと偉そうに思ったりするわけだ。それにしても豊田はペラ巧者で通ってるのか、同支部の1期先輩である松井洪弥が話しかけて、アドバイスを請うているようにも見えるシーンもあった。水面では敵同士だが、情報を教え合う。それは手段を選ばずに勝ちにいくという点で、全力を尽くそうという行為である。
ところで、今日は気候がまたガラリ変わっている。湿度は一気に1015hPaに上がり、湿度が40%ほどにググっと下がって、気温は1Rの時点で21℃。ようするに、すべての要素が回転が上がりやすくなっているということを示しているのである。1R、逃げ切った鈴谷一平が、中村桃佳に声をかけられて「めっちゃ早かった」と苦笑いを見せた。実際はコンマ07というタイミングだったのだが、かなり早い景色になっていたのだろう。今日もまた、スタートも調整も難しいということだ。こうした天候のめまぐるしい変化もまた、彼らの世代は数多く経験しているというわけではない。こうした場が、彼らのスキルを着実に上げていくというわけである。
1R展示が始まった頃、たまたますれ違った佐藤航が開口一番「整備しました!」と語りかけてきた。初日の佐藤は明らかに気配劣勢で、残したコメントが「嘘のように出ていない」。佐藤によれば、デビュー以来一番というわけではないそうだが、確実に3本の指には入るほど噴いていないとのこと。それでもコメントは「外回りとペラで何とかしてみます」となっていたのだが、今朝、一番で整備に着手したようだ。これがパワーアップにつながったかどうかは7Rを確認したいが、その意気や良し。それこそ、こういう大舞台で思い切った整備をしてみることも、佐藤の引き出しを増やしていくのだから。恐れず挑むのもまた、若者の特権のはずだ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)