BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――1号艇で負けるということ

 もう説明するまでもない真理ではあるのだが、やはり1号艇で敗れるということは、このクラスになれば特に、痛恨の極みである。
 9Rでは中村魁生が末永和也に差しを許して惜敗。ピットに戻ってきた中村は、悔しそうに顔を歪めて、先輩たちや同期の井上忠政にレースを振り返っていたのだった。もっとも、中村は道中で中田達也と競り合って、2着から3着に下がっている。これもまた、悔しさを増幅するものになっていたか。中村はGⅠ水神祭もかかった1号艇だっただけに、他の枠番で何としても勝利をもぎ取らねばなるまい。

 10Rでは石丸海渡が2着に敗れた。ピットにあがってヘルメットを取ると、深い苦笑いがあらわれ、首を傾げながら香川勢に何事かをまくしたてた。同期でもある竹田和哉が言葉を返すと、石丸はまるで何かを叫ぶかのように大口をあけ、両目を思い切り瞑って悔しさ満開。ここまで感情をあらわにするのを見るのは本当に珍しいことで、それほどまでに痛恨の2着だったということだ。

 で、その石丸を破ったのが、前半2Rで1号艇ながら敗れた板橋侑我だったのだから、見事なリベンジ成功である。勝利者インタビューでも「イン逃げできなくて」と口にしていたように、やはり2Rの敗戦はずっと引っかかっていたのだろう。その鬱憤をきっちり晴らしてみせるまくり差し一閃。喜びを爆発させるという感じではなかったけれども、スッキリした表情のレース後なのであった。

 一方、8Rでは栗城匠が逃げ切った。さすが“笑わない男”栗城だけに、レース後は淡々としたもの。いつも通りのレース後である……と思いきや、さにあらず。ようするに心ここにあらずといった様相が強かったようなのだ。というのも、栗城はレース後、速攻でペラ室に駆け込んで調整。よく見れば、栗城のボートには試運転用の艇番が着けられており、まだまだ水面に出ていくつもりだったようなのだ。すなわち、勝ちはしたが足にはまるで納得しておらず、頭の中には次の動きで占められていたという次第。勝ってもなお妥協せず。地元GⅠへの重いがうかがい知れるというものだ。

 ちなみに、栗城がアドバイスを求めたようだったのが、意外や豊田健士郎。期も違うし、支部も違う。ペラ室でふたりが話し込んでいるのを見たわけだが、たまたま近くに座ったのかな? ただ、エンジン吊りに向かう際も真剣な表情でずっと話し込んでおり、たまたまであろうが、豊田から知見を得ようとしていたのはたしかだ。こうした意外な交流が見られるのがまた楽しいですね。

 そう、1RでFを切ってしまった豊田は、引き続きペラ調整に懸命だったのである。それは中村泰平や中田達也も同様。中田は9R、まさに中村魁生に競りかけて、ひとつでも上の着順を狙っている。中村はその間に澤田尚也に逆転され、空振りに終わった中田も4着に下がってしまったのだが、F後だから勝負を捨てるということはありえないわけだ。3人とも明日からは外枠に入ることになるだろうが、ぜひとも穴を叩き出してもらいたい。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)