BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――激烈!

 9R、近江翔吾が逃げ切り。これで2日目から4連勝となり、得点率を8.17まで伸ばした。22号機の面目躍如、いや、このパワー機を見事に仕上げ、乗りこなした近江の力量を称えるべきだろう。近江は特に感情をあらわにしたわけではなかったが、満足そうな表情はうかがえた。

 これで10Rの末永和也にプレッシャーがかかっただろうか。その時点で得点率9.50で首位に立っていた末永は、4着なら予選トップ通過。ただ、6号艇という不利枠だった。このレースでは、羽野直也が勝てば8.33で近江を超えられることになっていたが、こちらも5号艇。なかなか興味深いトップ争いとなっていたのだ。
 結果、羽野は5着、末永は6着。外枠外コースを克服できず、羽野はトップを掴み取れず、末永は3位にまで滑り落ちてしまった。羽野はともかく、末永はさすがに失望感がアリアリで、1期後輩の佐藤航が寄り添って慰めていた。また、前田篤哉も末永の両肩を激しく揺すって、やや手荒い振る舞いで慰めの言葉をかけた。特に120期以降の若手たちにとっては、末永に期待の眼差しを向けている部分もあったということだろう。

 これで、近江のトップ通過が確定! といっても、やはり特別表情を変えていなかった近江である。ただし、トップが決まった瞬間に、当然ながらカメラのレンズは多く近江に向けられ、次々と報道陣に声をかけられていた。そうした自分への注目度の高まりは、近江にトップに立ったことを実感させたはずである。

 準優1号艇は近江、末永ともうひとり、中村日向。中村は2位通過だが、これまた表情を変えることなく、粛々とエンジン吊り等の作業に勤しむのであった。香川支部のワンツーという予選の戦い絵巻。片岡雅裕のメモリアルVから、讃岐に流れが向いている!?

 いや、この10Rでは、香川支部の竹田和哉が大きな悔恨を味わった。3着条件だったこのレースで、竹田は4着。3番手の渡邉優美を最後まで追いかけたが、及ばなかった。エンジン吊りの最中にヘルメットをとると、竹田の強烈に悔しがる顔があらわれた。まさしく痛恨の4着。控室へと戻る際にはややうつむき加減で、この結果に対する悔いを噛みしめていた。

 11Rはボーダー争いがアツくなった。レース前の時点で全員が6.00以上だったのだが、無事故完走は高田ひかるのみ。また、6.00は17位タイで6人が並んでおり、上條暢嵩は6.00勢のなかで最下位だったのだ。上條は逃げ切って、得点率を上げ予選突破。負けられない1号艇をしっかりクリアしたことで、安堵の表情が浮かぶ。

 最もホットだったのは3番手争い。入海馨は6.00勢の一人で、まずは3着が欲しいところ。川原祐明は4着なら6.00となり、しかし上位着順の差で入海の後塵を拝することになる。この二人が、激しく3等競りを繰り広げたのだ。勝ったのは入海。先述の状況により、これで予選突破確定とはならないが、なんとか目安の数字を守ることができたのは大きかった。疲労感たっぷりで引き上げてきたあたりが、激戦を物語っていたと言えよう。

 一方、川原は上位着順差で不利だというのを覚悟していたか、やや落胆がうかがえる表情だった。実はこの時点で18位とギリギリボーダー上だったのだが、競り負けた悔しさも強く感じていただろう。

 そして、11Rメンバーで唯一、予選落ちを確定させてしまったのが、5着に敗れた板橋侑我だ。レース前は11位だったものが、一気に25位まで下落。仲の良い前田篤哉と肩を並べて引き上げながら、苦笑いを浮かべるのだった。ただし、目はまったく笑っておらず、そこには痛々しさが貼りついているのだった。

 12Rは、勝っても6.00には到達しなかった中村桃佳以外の5名が全員準優進出。ようするに、全員が勝負駆けに成功したというわけだ(野中一平と澤田尚也は無事故完走で当確)。勝ったのは差した高橋竜矢。高橋は1着条件の勝負駆けを見事にクリア! これはお見事だ。先輩たちに勝利を称えられてニッコリ微笑む高橋には、入海も笑顔で祝福を送っている。入海は、12Rの結果で次点に下がってしまったのだが……それを知ってか知らずか、後輩を優しく称えていた(入海が予選落ちなので、川原もまた……)。

 石丸海渡は2着条件の勝負駆けで、これを2着でクリア。上田龍星との2番手争いを制しての2番手浮上だから、これもまたお見事だ! 石丸はこれが最後のヤングダービーで、期するものがあっただろう。高橋とレースを振り返りながら、男っぽい笑顔を満開にさせていた。

 上田は3着条件を3着でクリアしたというわけなのだが、こちらは笑顔というわけにはいかない。1号艇で敗れ、しかも番手争いに敗れたのだから、ただただ悔し気に顔をしかめるのみだ。そんな上田を上條がレースを振り返りつつ慰める。その間にも上田の顔から悔恨は消えず、肩を落として控室へと戻っていくのだった。準優でこの鬱憤を晴らせ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)