BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――インタビューからの帰還

 10時からトコタンホールで優勝戦出場選手インタビューが行なわれた。コロナ禍でステージイベントが行なわれない時期が長く続き、オープニングセレモニーは入場者限定で徐々に行なわれるようになってきた。そして、最終日の優出インタビューも復活。日常が戻ってきているという実感は、やはり心を躍らせるものだ。
 というわけで、朝の時間帯にベスト6はピットからいったん姿を消したわけだが、1R発売中には帰還。最初に装着場に姿をあらわしたのは山口剛だった。チルトアジャスターのあたりを触りだしたので、チルトを跳ねることを考えている!? 今節はずっとマイナス0.5度で出走しており、昨日のレース後のインタビューでは仕上げを伸びに寄せる可能性に言及している。4号艇で、4カドが見込めるだけに、前検日に示した伸びの威力を取り戻そうという思いはよぎっているわけだ。まあ、跳ねたとしても0度だと推測されるが、いずれにしても、その可能性を模索していると考えていいだろう。

 つづいて現われたのは、菊地孝平。装着場に足を踏み入れると寒暖計の前に直行。気温や湿度、気圧をチェックだ。そしてプロペラを取り外して、ペラ小屋へ。早い時間からぬかりなく点検や調整を始めている。優勝戦1号艇は言うまでもなく優勝に最も近い位置。しかし、メモリアルではそこでミスを犯している。それもあってか、まったく油断や気のゆるみが感じられない優勝戦の朝。ますます死角は見えにくくなっている。

 ちょうど菊地がペラ小屋に姿を消したあたりで1Rのファンファーレ。田口節子が逃げ切って、ボートリフトの周辺に選手が集まり始める。優勝戦組では、まず装着場で作業をしていた山口が駆け付け、次いで濱野谷憲吾。ん? 1Rには関東勢が出走していないのだが。わざわざ出てくる必要はなく、控室でのんびりしていても誰も文句は言わない。それでも手薄な陣営を探して手を貸そうということだろう。眺めていたら、平本の陣営に参加してヘルプ。深谷知博も出走ていたので、東海勢がやや手薄になっていたということか。

 1Rには大上卓人が出走していたので、もちろん上平真二も駆け付けている。人前ではさまざまなパフォーマンスで楽しませてくれる上平だが、ピットでは基本、穏やかで物静かなたたずまい。報道陣からの問いかけには、柔らかな笑顔で応えている。まだ調整を始める気配はなく、F2の足枷をものともせずの優出を後押しした相棒の仕上がりには満足しているだろうと思われる。

 田村隆信は、同期である田口節子のエンジン吊りに参加した後、ペラ小屋に入った。ただし、これは点検程度だったようで、数分で小屋をあとにしている。その途上で、こちらの姿を見つけた田村は、賞金ランクの状況を尋ねてきた。この優出で、鳴門チャレンジカップ出場は当確。最低限の目標はクリアした。しかし、そこで田村の思考はストップしていない。「優勝なら6位以内に浮上ですよ」「ということは、(チャレンジは)ドリームに乗れますねえ」。地元SG、ドリーム出場なら最高という思いは当然、抱いているわけだ。一方で「無事故完走は絶対」という思いも強く抱いている。それが田村に冷静さをもたらすのなら、やはり怖い存在になるのではないかと思わされた。

 馬場貴也は、1Rに近畿勢の出走がなかったにもかかわらず、やはりエンジン吊りに顔を出している。といっても、ヘルプの必要がなさそうだと判断して、その輪を離脱。新品らしいヘルメットシールドを手に、整備室へと入っていった。今日も快晴の予報。午後は西日も差し込んでくる。その対策ということだろうか。馬場も、すでに万全の態勢を整えるべく、早くから準備を始めているということだ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)