BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝って整備

 8Rを3コースまくりで制した篠崎元志だが、勝ったことに対しては納得でも、決して満足はしていないようだった。機力的にはとても万全とは思えなかったのだろう、レース後にすぐ、本体をバラして整備に取り掛かったのだ。篠崎が引いた22号機は、今月初めに彼自身が引いて、優勝を果たしたモーター。ただし、その時から手応え万全というわけではなかったようで、上位機も使用され相手も強化されている今節ではなおさら、ということのようだ。今日の1着は、パワーと結果は直結するとは限らないとも言えるし、だから勝ったところでそれで良しとは、このクラスなら特に考えないということにもなるわけだ。

 あ、どうでもいい話だけど、元志の整備を眺めつつ、ふとペラ調整所に目を向けたら、そこにも元志! いや、よく見れば篠崎仁志なのであった。この兄弟はそこまでそっくりだとは思えないし、全体のフォルムも違っていると思うのだが、マスクをし、身体を丸めてペラを叩いている姿は元志と見間違うほどなのであった。やはり兄弟、どこか共通する何かがあるんでしょうね。単に俺の目が悪い、という可能性もあるけれども(視力0.1未満でコンタクト着用してます)。

 勝ったのに整備、はもう一人、椎名豊も同様だった。6Rは4カドから彼の持ち味であるまくり一撃を決めているのだが、どちらかといえばスタート勝ちというほうが正確であろう。スローがコンマ11~21に対して、椎名はコンマ01だったのだ。椎名自身、そのあたりの手応えはやはりあったのだろう、本体整備に取り掛かったという次第。この1着も含めて、予選2日間ではそれなりに着をまとめてはいるが、さらに上を求めての調整をはかったわけだ。で、その様子を見守っていたのが、同期の高田ひかる。まくりを主武器にする二人とはいえ、タイプはそれぞれ違うわけだが、やはり通じ合う部分はある!? 高田のほうは好気配を見せているだけに、椎名も同期にあやかりたいところだ。
 なお、丸野一樹も本体整備を行なっていた。1号艇での敗戦に昨日の転覆の影響を感じていたとするなら、解消したいところで、今度こその巻き返しを狙っての整備となる。

 10R、田村隆信が1号艇で2着。平本真之のまくり差しを許してしまった。田村としては問題なく逃げたという感覚だったようだが、平本の舳先が届いたことに首を傾げるしかなかった。順調に連勝し、まさか1号艇で敗れるとは、という思いもあっただろうか。

 平本といえば、感情を隠さない男というのが特徴だったのだが、最近は違うたたずまいを見せることもあり、今日もレース後にはそこまで笑顔を見せていない。田村が「やられたよ」とばかりに笑みを向けると、平本はかえって恐縮したような表情に。会心の勝利ではあったけれども、負かした相手が地元のエースとあっては、喜びを爆発させるのは失礼と感じているようであった。いやいや、実にお見事でしたよ! 逆転グランプリ行きに向けて、意気を上げていきたいところだ。

 その10Rは、3番手争いが熱かった。桐生順平と山口剛の争いに、途中、石野貴之も参戦しての大激戦。最後は桐生と山口の競り合いになり、3周2マーク、山口がターンマークに接触している間に、桐生が差を広げた格好だ。山口は「ぶつからなければ面白かったなあ」と苦笑いを浮かべたが、「まあ、しゃあない!」と前を向いた。

 一方、桐生はエンジン吊りを終えるや、山口と顔を合わせて、「もぉ~~っ、さすが賞金2位!」と自らを苦しめた山口に敬意を表した。山口はあはははーと笑い、桐生も笑顔を深めている。3番手争いではあったものの、充実感を覚える競り合いだっただろうし、競り勝てたのも満足感はあるだろうし、誤解を恐れずに言えば、楽しいレースだったということだろう。ハイレベルな競り合いだからこそ、生じる高揚感。そう、これはかなり中身の濃い3番手争いだったということだ。

 女子では、2着だったものの、細川裕子が好調。2番手争いとなった2マーク、外を回したらすーっと前に出てあっさり獲り切った。その瞬間、ピットには唸り声があがっていて、細川の足の良さに誰もが感心しているようだった。細川自身、連勝は止まったものの、レース後の様子は爽快。手応えを感じているのは明らかだ。誰もが認める旋回力、しかしタイトルにはいまだ縁のない細川だが、今回は大チャンス! 明日は5号艇だが、好調のときのこの人はコース不問だ。侮れないぞ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)