BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――混沌、痛恨、そして……

 速報がアップされているが、団体優勝のゆくえは混沌極まりない状況となったのである。
 9Rを終えて、22対22。一方が10Rと11Rを獲り、もう一方が12Rを獲れば、34対34の同点になっていたのだ。この場合、団体優勝はどちらの手に!? これが、「上位着順が多いほう」ということが判明。ならば、まずは1着の回数を数えよう。9Rを終えてレディースが24、ルーキーズが21。レディースが10~12Rでひとつでも1着を獲れば、同点で終わってもレディースの勝ち! ちなみに、1着回数が同じなら、次は2着の回数が多いほう、それも同じなら……全ての着順が同回数なら抽選で決定するそうです。以上、大慌てで調べ倒したことを告白しておきます(笑)。
 というわけで、10Rで川井萌が1着となった瞬間に、ルーキーズは11Rと12Rを獲らなければ敗退ということに相成ったわけだが、ピットで見ていて、選手たちがそれをどこまで把握していたかは正直わからなかった。川井も喜びをあらわすわけではなく、川井を迎えた女子勢も高揚を見せていたわけではない。

 この混沌は、思わぬかたちでピリオドが打たれる。これも速報がアップされているが、11Rで平高奈菜がフライングに散ってしまったのだ。これで11Rはルーキーズがゲット。決着は優勝戦に持ち込まれている。もしルーキーズに待機行動違反等があってノーカウントになっていたとしても、11Rを終えてレディースが4点リードしていたわけだから、同点という事態はなくなったのだ。それはともかく、レース後の平高はあまりに痛々しかった。リフトから控室へと戻っていく間、時に天を仰ぎ、時に俯く。顔は引きつり、溜め息も出る。単なるフライングではなく、いろいろな意味を背負ってしまったフライング。直視するのはちょっとつらかった。

 恵まれというかたちではあったが、ここでの1着が石原翼、すなわちルーキーズの団長であったことは結果論ではあるが象徴的であったか。もちろん、フライングがあったレースで、石原も歓喜をあらわすわけにはいかず、複雑な表情も見せてはいるが、しかしここで潮目が変わったのは確かだったと思う。

 さあ、優勝戦。ピット離れ仕様にするのでは、と囁かれてもいた中亮太は、飛ぶことなく2コース。ただし、これは正解だったか。1マークでやや流れた鎌倉涼のふところをズブリ。それは舳先が向いた瞬間に刺さるであろうと確信できる、力強い差しだった。個人優勝は中亮太だ!

 ピットに野太い歓声がとどろいたのは、バックの態勢が判明したとき。末永和也が3番手を走っていたのだ。また、最後方を走っているのは中村桃佳。仮に末永が3番手を抜かれたとしても、安河内健が6着を獲らなければポイントはルーキーズである。どうやら、6着を獲ったほうが不利であるということは選手たちもけっこう把握していたようで、そのあたりも含めて、男子勢は勝利を確信したのだろう。
 エンジン吊りのためにリフトに集結した選手たち。もう番手が大きく変わることはないだろうと思われた瞬間、ルーキーズたちは次々とハイタッチを交わしている。そして6艇がゴール。団体優勝はルーキーズだ!

 やはりテンションが上がる若者たち。そうしたなか、ウィニングランで戻ってきた中には、多くの祝福の声がかけられている。すぐにレース場を後にできるよう、田頭虎親は制服姿で中を祝福。そして「お先に!」と言って駆け出している。中を称えたいし、でも電車の時間が迫っているのだろう、早く帰りたいし。そんな振る舞いがまた微笑ましかった。

 それにしても、鎌倉涼の無念の大きさよ。2大会連続で優勝戦1号艇、そして差されての2着……。原田佑実に出迎えられた鎌倉は、「またやってしまった」とばかりに顔をしかめている。感情を隠すことが難しいほどに、痛恨の敗戦だったのだ。モーターを返納して控室に戻る道すがら、少しは落ち着いたのか、鎌倉は苦笑を浮かべつつ、「プレッシャーに弱くなっちゃったみたい」と嘆き節。「プレッシャー好きだったのに!」と言って、控室へと消えていった。言ってしまえば、ボートレースレディースvsルーキーズバトルという大会は、一般戦である。しかし、団体戦という付加が、仲間に対する思いを背負わせる。優勝戦1号艇ならなおさらだ。ようするに鎌倉は背負うものを大きく捉えて勝負に臨んだのだと思う。鎌倉はそう言うが、責任感の大きさを真っ向から受け止めていたということだろう。鎌倉自身がこの大会に出るのを望んでいるかどうかはわからないが、僕個人としては、また斡旋された際にはぜひぜひぜひ! 三度目の正直でリベンジを果たしてもらいたい。
 というわけで、おめでとう! 中亮太! トップルーキーとしての責任をおおいに果たした優勝だったと思います! 来期はまさかのA2級だが、すぐにA1復帰を果たして、次は大レースで会いましょう!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)