BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――混沌!

 なかなか波乱含みの勝負駆け。3日目終了時点では6・00が18位のボーダーをはみ出すほど多くいたのだが、勝負駆け失敗が続出して、11R終了時点では5・67まで下がった。おそらく諦めていた5点台後半の選手もいたはずだが、にわかに望みが出てきたりもしていて、ただし12R時点ではかなり多くの選手が帰宿していたので、実際の温度感はちょっとわかりにくい。
 象徴的だったのは11Rだ。1着でもボーダーには遠く及ばなかった石渡鉄兵がまくり一撃を決めたのが波乱の打ち上げ花火。これにより、ボーダー6・00ならば1着勝負だった1号艇・井口佳典がその点数に届かないことが決まった。井口はレース後に他の選手に丁寧に挨拶して回るのが恒例なのだが、このときはほぼ会釈のみ。やはり悔しさが前面に出たということだろう。ヘルメットを脱ぐと憮然とした表情であり、1号艇で負けたことも含めて、痛恨の2着だったことが明らかだった。しかしながら、それでも井口は得点率15位に浮上したのだ。つまり、勝負駆けに成功していた。とても準優行きを決めた選手とは思えなかったレース後の井口。それくらいボーダーが混迷していたのだ。

 5着に敗れた中島孝平も落胆がアリアリ。6・40から5・67まで得点率が下降してしまったのだから、これまた痛恨の大敗だ。エンジン吊りを終えると、笠原亮が中島に寄り添う。同期生が、一気に得点率を下げてしまった悔恨を癒そうとしたのだろう。二人はけっこう長い間、話し込んでいて、その絆の深さが見えたのだった。しかし、実は中島もまた17位に留まっていたのである。12Rの結果次第ではかなり寒い順位ではあるが、その時点では勝負駆けに失敗したとは言い切れなかったわけである。

 また、このレースでは太田和美が6着大敗。これにより、6・40だった得点率が5・50まで下がった。さすがにこれは予選突破は不可能な数字。それを自覚というか覚悟というか、とにかく認識していたであろう太田は、その屈辱を覆い隠そうとしたのか、意外にも微笑を浮かべて「ありがとうございました」と皆に頭を下げて、そそくさと控室へと戻っていくのだった。その姿はむしろ、悔恨の塊のようにも見えたものだ。
 予選最終日はまず6・00を基準にして戦況を眺めるのがセオリー。そのデンでいけば、この11Rは18位以内に潜り込んだ井口にしても、大敗した3人にしても、いずれも6点を割り込む結果だったわけである。それが、ある者はボーダーの上に位置し、ある者はボーダーから転げ落ちる。なんとも不思議な状況がそこには出現していたのであった。

 さあ、12R。これがまたなんとも複雑な勝負駆け。トップ争いについては、1号艇の馬場貴也が2着以上でトップ確定、3着なら茅原悠紀とシンプルなものだったが、18位争いが難しい。この時点でボーダーは5・67だったのだが、すでに3人が並んでいて、そのうちの一人である寺田祥は19位。そして、12Rメンバーに結果次第で5・67となる選手が3人もいたのだから、ややこしい。たとえば菊地孝平が3着、濱野谷憲吾が4着で同時に5・67となるから、資料をもとに計算しているこちらも頭がこんがらがって仕方がない。選手たちも、上位着順の回数がどうのこうのまで把握してレースに臨んでいたとは思えないわけである。

 レースは馬場が逃げて、菊地が2着。菊地は6・00まで得点率を引き上げて勝負駆け成功だ。その手応えは菊地にあっただろうから、レース後の菊地のテンションは高かった。モニターに流れるリプレイで自身の航跡も確認して、力強い表情で引き上げていった。

 濱野谷も3着で6・00。この数字なら心配はいらないから、笑顔がこぼれており、出迎えた石渡鉄兵もそれに応えてニコニコと笑っている。

 問題は4着で5・67となった山田康二。状況をいったいどこまで把握していただろうか。戦前は6・00だったから、得点率を下げる格好となっており。3番手を果敢に狙って濱野谷と競っていたから、レース後は疲労感のほうを強くあらわにしていた。しかし、よかったよかった、18位にギリギリ残った! 控室に戻るまでは、それを知ってか知らずか、やや鬱々とした表情だったのだけれど。

 ところで、先ほど中島と笠原の話を書いたが、同じように山口達也が西山貴浩の肩を抱いて慰める姿があった。西山は3着条件で臨み、しかし4番手を走って3周2マークでイチかバチかのアタック。これが3着に届かなかったばかりか不良航法をとられて、大きく後退することになったのだった。珍しくSGで好モーターを引き、気合を込めて走った今節。しかし無念の予選落ちに、西山は脱力したような様子を見せていた。それを山口がいたわったわけだ。戦いは明日も続く。しっかりと意地を見せる2日目としてもらいたい。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)