BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝負駆けの夜

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 別稿にあるように、トップ争いはあっさりとケリがついた。寺田祥が準パーフェクトペースで1位通過だ。3年前の若松メモリアルの再現が近づいてきた。レースを見れば一目瞭然、仕上がりは抜群だ。レース後の寺田はやはり余裕が感じられるたたずまいで、10R終了後の1便で帰宿している。

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 3日目終了後は得点率で寺田に並んでいた峰竜太は、7R1マークで艇が大きく煽られて、なんとか転覆は免れたもののシンガリ負け。11Rも5着で、7位まで後退している。11R後は複雑な表情をしていたが、7位うんぬんではなく、ゴンロクを並べてしまった今日について、さまざまな思いが交錯していたということだろう。

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 峰とは逆に、3日目終了時点で7位だった菊地孝平が3位に上昇、準優1号艇を手にしている。それも、10R3周1マークで中野次郎を逆転しての3着浮上、これが決め手となった格好だ。ピットに戻ってきた菊地は、1号艇が手に入ったことを知ってか知らずか、充実感が伝わる表情を見せていた。あの逆転旋回は勝負手だったに違いなく、それが実ったのは3着とはいえ会心だっただろう。

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 ボーダー争いについては、特に後半戦については、わりと穏やかだったように感じた。前半で井口佳典がFで脱落し、3日目終了時点で16位~18位だった選手が順位を下げるというかたちで、すなわり上位から一気に滑り落ちた選手はいなかったし、19位以下から浮上した選手も1号艇で勝負駆けだった選手が多かった。そんななかで、やはり松井繁の予選突破は光りますね。不良航法マイナス10点をものともしなかった気迫の勝負駆け成功。王者の意地をまざまざと見せつけられた格好だ。

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 11Rでは馬場貴也が逃げ切って勝負駆け成功。実はこの馬場の結果が、大きなカギを握っていた。その時点で18位だったのは赤岩善生で、得点率が5.80。馬場が逃げ切れば6.00だから、これを超えることになる。もし逃げられなかったら、12R6号艇の磯部誠が2着で5.83と赤岩を超える。磯部が3着以内なら赤岩が逃げ切りとなる。11Rは2号艇に峰竜太がいたりしたので、馬場としても予断を許さなかったイン戦だったはずだが、きっちりと逃走。安堵の表情を見せた。

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 これで準優18人が決定かというとそうではなかった。磯部が1着なら6.17なのだ。つまり、結果的に5人になった得点率6.00の面々のうち、最下位だった中澤和志が落ちることになるのだ。まあ、6号艇で1着というのはなかなか至難の業ではあるのだが……。ちなみに、磯部はその状況を把握していた。私が教えたから(笑)。10R発売中に状況を尋ねられたので、先の条件を伝えた次第だ。まあ、それでどこまで気合が入ったかはなんとも、だが、「俺の緑、けっこうあるもんね」と言っていたから、望みを捨てることなく、本気でアタマを獲りに行こうと戦ったはずである。そう、磯部の6号艇、けっこう来ますからね。残念ながら4着も、サバサバしているように見えたレース後ではあった。

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 勝負駆けとは関係ないところでは、毒島誠のカタい表情が印象に残る。1着でも得点率5.50と18位には届かなかったのだが、これがまさかのシンガリ負けである。1号艇でこの結果は、毒島にとって大きな屈辱であろう。

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 その毒島を沈めたのが、3コースから強ツケマイを放った平高奈菜だった。石渡鉄兵の差しを許して2着ではあったが、お見事な一撃である。レース後は原田幸哉に称えられていたし、出迎えた森高一真もニコニコ顔を向けている。1着でなかったのは悔しかろうが、平高にとっても手応えを感じるレースだったはずだ。森高と肩を並べながら時に浮かべる笑顔は、実に爽快なのだった。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)