順平という男
10R
①磯部 誠(愛知)19
②桐生順平(埼玉)16
③山口達也(岡山)10
④長嶋万記(静岡)07
⑤井口佳典(三重)06
⑥萩原秀人(福井)11
磯部40号機がもっとも遅いスタートから、力強い伸び返しで外の5艇を完封した。今節の児島水面は「ここって平和島か??」ってくらいインがズボズボに差されているが、さすがの40号機。さすがのSGウィーナー磯部。このペアにとって当然の第二関門突破と言えるだろう。
争点は2着争いだ。惜しかったのは地元の山口で、スリットから磯部ら内2艇を圧倒。そのアドバンテージを味方に、1マーク手前で桐生をツケマイ気味に攻め潰すまくり差しを選択した。見た目にはまんま桐生を引き波にハメて磯部までどうか、という迫力だったが、桐生の応戦もまた半端ない。山口が近づいた瞬間、艇尾をすんっと外に振るような高速ターンでこれをブロック。おそらく咄嗟の判断だろうが、山口の猛攻を堰き止めるには「水上この一手」とも言うべきブロックターンだった。山口にとって、相手がこの男でなければ軽々と優出の権利を掴めたように思うのだがどうだろうか。
そのままバック直線で外・山口の面倒を見続けた桐生は、最内から萩原がするする伸びてくるとターゲットをチェンジ。とは言え慌てて絞め込むでもなく、じんわり内に寄ってマイシロを残しつつ、萩原を先に回らせてから鋭角な差しで完全に2番手=ファイナルチケットを獲りきった。
すべての動きが的確で迅速で、かつ老獪。今節はすべてのレースのこの手練手管を駆使し、ついに1着のないままファイナリストの仲間入りを果たした。徳山グラチャンの池田浩二のように。
磯部40号機については、すでにいろいろ書いてきたので割愛しよう。今節のイン受難の水面で、このスリット隊形で勝ちきった。それだけで磯部40号の底力が見てとれるだろう。桐生の巧妙なブロックがあったから? だとするなら、運も実力のうち。SG連続Vを飾るためのすべての要素を兼ね備えている、とお伝えしておこう。もちろん、グラチャンのように1号艇になれば、の話だが。
池田という男
11R
①茅原悠紀(岡山)09
②西村拓也(大阪)11
③松田祐季(福井)06
④菊地孝平(静岡)10
⑤池田浩二(愛知)05
⑥中島孝平(福井)04
磯部40号に負けじ、と茅原20号もインから押しきった。しかもこちらはゼロ台まで踏み込み、外艇に影をも踏ませぬ圧勝劇。上りタイム1分48秒5も、馬場クンの節イチ48秒3に肉薄する好タイム(まだ今日の12Rが控えてるけどw)。茅原20号については磯部40号より書き散らかしたので、もう語る必要もないだろう。ひとつだけ補足するなら、「この20号機が昨日あたりからさらにグングン20号機らしくなり、もはや完成形といえるレベル」くらいか。満を持して節イチに値するSランク【出足S・直線S】を授けたい。
2着は今回もやっぱり常滑の大スター・池田浩二。まず「菊地よりハナを切ったら大ピンチ」という暗黙の掟をコンマ05も踏みにじる突出スタート! 今年度から準優ではみ出したら1年間のSG出禁だというのに、なんちゅうやっちゃ(さらに早かった中島も!)。
その極上スタートから伸びなり菊地を飛び越えつつ、スロー勢の動向をパズルのように読み取り、空いている隙間に軽々と舳先を突き入れていた。もちろん二次元の視野で見ている選手にとっては大変な高等技術なのだが、スタンド4Fから俯瞰で眺める私の目には、本当に「軽々と」抜けて行くように見えた。
そう、これが長きにわたって勝率8点近辺を維持し続ける池田浩二だ。だからこそ常に池田の相棒のパワー鑑定は難解を極めるのだが、おそらく中堅上位~上位の下だと見踏みしている。そう、これくらいのパワーがあれば、「軽々と」優勝できる男であることも忘れてはならない。
羽野キュンという男
12R
①馬場貴也(滋賀) 12
②篠崎仁志(福岡) 13
③岡崎恭裕(福岡) 13
④濱野谷憲吾(東京)14
⑤羽野直也(福岡) 15
⑥山田康二(佐賀) 19
ドリーム組、強し! 磯部&桐生、茅原に続いて、ここもドリーム組の馬場がインから押しきった。11Rの茅原よろしく、影をも踏ませぬ圧勝。1マークを回ってウイリーで出て行くスピードは、もはや他の5艇とは別世界のものだった。昨日・今日と同じく、明日も12Rのインコースから同じレースができれば、去年のダービーに続く4度目のSG戴冠となることだろう。
ただ、現時点での私の馬場V確率は「50%くらい」と低めにサバ読んでいる。理由としては、①機力的に2、3号艇より劣勢と考えている。②昨日も今日もスタートが完全に揃ってイン逃げに絶好の隊形だったが、明日はどうか。③今日の12Rのパワー相場は準優の中でいちばん低かった(はず)。④イン受難が続いた今節の流れが最後に踏襲されるのではないか。⑤今日の勝ちタイムが直前の茅原よりコンマ5秒も遅かった。
まあ、この5点はある意味重複した内容だし、重箱の隅をつつくレベルの材料かも知れないけれど、茅原、磯部らにも逆転の余地は十分に残されていると思っている(←はい、お分かりのように、明日は20号機と40号機を応援するのですw)。
2着に飛び込んだのは、ありえない逆転劇で羽野キュン!! 1マークのまくり差しはまるで入らず、1周バックは馬場~岡崎・濱野谷から置き去りにされた5、6番手。1-5に絞っていた私は「やはり3日目あたりから足落ちしてたか……」と肩を落としたものだが、そこからがサプライズ。2マークで濱野谷がキャビッたり、2周1マークで仁志×岡崎が少しやり合ったりしている間に、あれよあれよで岡崎に肉薄。(おそらく)わずかなパワー差を活かして1艇身だけ抜け出すと、あとは同県の先輩の猛追を的確に交わして最後のファイナルチケットをもぎ取った。
幸運が重なったゴボー抜きではあるが、1周2マークの迷いのない全速まくり差し~2周1マークのこれまた迷いのない全速のぶん回し~岡崎の勝負手をあらかじめ消すようなポジショニング&精緻なターン……それらはSGファイナリストに相応しい立ち居振る舞いでもあった。10代から百戦錬磨の猛者たちに揉まれ続けた経験則が、余すところなく芽吹いた優出とも言えるだろう。で、だとするなら、今日の羽野キュンの機力は見た目の派手さよりね割り引くべきではないか、と思っている。良くて【出A・直A】までか。(photos/シギー中尾、text/畠山)