BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――圧勝!

 今節の選手班長を務めた海野ゆかりが「ドキドキした~」と苦笑いしながら、モーター返納作業の現場にあらわれた。同支部の後輩である實森美祐の戦いぶり? それもあったかもしれないが、班長の立場ということを考えると、おそらくスタートだったのではないか。
 コンマ02。守屋美穂のスタートタイミングだ。これを全速で行ったというのだから恐れ入る。気が逸って無理なスタートを切ったというわけではない。入っていると確信しての超絶スタート。もちろん、早すぎると感じていたら放っていただろう。ほんの1カ月前、地元の周年準優でFという痛みを味わっていながら、守屋は怯むことがなかった。10R発売中のスタート特訓2本、スタート展示がいずれもコンマ10ほどとしっかり決まっており、スタート勘を掴めてもいたのだと思う。そこに勝負度胸が加わって、かなり良い仕上がりだったと見えた實森の攻めを寄せ付けずに逃走。紛れもなく、圧勝である。

 会見では、今節で最もゆっくり過ごせたと語っている。10R発売中、大雨のなかスタート練習を終えると、ボートを陸にあげて控室へと戻っていった。もし、足的に異変を感じていたのなら、守屋が向かった先はペラ調整室だったはず。しかしペラも外さず、ボートが(特に操縦席が)雨に濡れないよう陸にあげただけで、あとは優勝戦をじっくりと待てた。仕上がりにも余裕があったということだ。
 ようするに、万全だった。だから、優勝戦1号艇のプレッシャーも特になかったと表彰式で語っている。強い。負けようがなかった、そんなふうにも思えてくる。SGやGⅠのキャリアが、まるでそこが主戦場であるかのように積み重ねられてきて、明らかに守屋はレベルアップしている。そんな強豪が、好モーターを手にし、しっかりと仕上げ、スタート勘も掴んでの1号艇。メンタルも仕上がっていた。やっぱり負けようがなかった、としか思えないではないか。

 実は、レース後の守屋は感極まるところがあるのではないか、とも思っていた。女子ビッグの優勝戦1号艇で、何度煮え湯を呑んできたことか。記憶に新しいところでは昨年のレディースチャレンジカップ。3号艇の長嶋万記にまくり差しで敗れた一戦だ。レース後、涙して寺田千恵に慰められていたものだ。そう、今日も3号艇には長嶋万記。トラウマが残っていてもおかしくない局面である。それを乗り切って勝利すれば、感慨が胸に迫るのではないか。
 しかし、レース後の守屋にそんな様子は見当たらなかった。岡山勢の出迎えを受けて笑顔。勝利者インタビューで笑顔。ウィニングランで笑顔。戻ってきて、香川素子や遠藤エミ、佐々木裕美に出迎えられて笑顔。湿っぽいものはどこにもなかった。ということは、レース前にすでに優勝戦1号艇の呪縛は解かれていたということだ。そして、これはやはり守屋にとって通過点。先に見据えるものがあるからこそ、笑顔にあふれてはいたものの、毅然としたレース後になったのだろう。

 やはり圧勝! エース機を手にしたら勝てる、というほどボートレースは甘いものではない。だが、女子戦でこの人に超抜機が渡ればこういう結果になる、そんなふうに思えてならない、結末だったのである。GⅡはこれが4V目、レディースオールスターは大会初の2度目の優勝、ならばあえておめでとうは言うまい。いや、言うべきだし、そう声もかけたんだけど(笑)、本当の祝福はさらに先にあるはずのビッグウィンに取っておくとしよう。

 實森美祐はナイスファイトだった。朝の記事に書いた通り、最も早く動いたのが實森だったわけだが、気配は昨日以上にも見えていた。4カドから出ていく気配で、3コースの長嶋も簡単には攻めさせんと粘る展開ではあったが、それを乗り越え攻め役となった。いい気合も見せたと言えるだろう。結果は及ばずで、モーター返納の間も険しい表情をしていた。準Vと最も優勝に近いところに辿り着けたからなおさら、悔しさがつのったことだろう。それでも、節間通しての戦いぶりは地元の期待を背負ったドリーム戦士にふさわしいものだったと思う。出場は当確と言えるレディースチャンピオンでの活躍も楽しみにしよう。

 最も苦しそうな表情を見せていたのは西橋奈未だ。敗れたこともそうだが、1マークでキャビって失速、平高奈菜と岩崎芳美に不利を与えてしまってもいた(不良航法)。悔しさと申し訳なさがないまぜとなった、そんな苦悶のレース後。モーター返納をヘルプした同支部の先輩である今井美亜も、西橋の心中を感じ取り苦い表情となって、西橋を慰めていた。西橋も實森同様、道中の戦いぶりは目覚ましかった。去年あたりからすでに女子トップグループの一角と見る向きも多かったと思うが、それを証明するかのような走りだった。残念ながら、レディースチャンピオンは除外となるが、次はSG! ボートレースオールスターで、その可能性を感じさせる走りを見せてほしい。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)