BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――重い!

 多摩川オールスターもそうだったが、尼崎グラチャンもモーター初下ろしからそれほど時間が経っていない時期での開催。新モーターには特有の重さ(出足関係の重さ)がある、とはよく言われるわけで、まさにオールスターではそういうコメントがよく聞かれたものだ。今回のグラチャンはそれに加えて、梅雨入りした後のSGであり、今日も湿度が高い状況。つまり回転が上がりにくい=重い症状が出がちということだ。そして前検もまた重さが生じるというのはよく言われるので、今日はほとんどの選手がそう感じていたわけである。
 毒島誠はドリーム会見にあらわれて、開口一番がまさにそれ。それもあって、スタートが届かなかったそうだ。

 地元で評判の11号機を引いた磯部誠も、おそらくは重さが原因なのだろう、「まったくエース機っぽくなかった」と不満そうに会見で語っている。連覇に向けて好相棒と言われるモーターを引き当て、期待いっぱいで乗ってみたら、「あら?」という手応え。ワクワク感があっただけに、それを裏切られた落胆もあったというわけで、会見では最もネガティブな雰囲気なのであった。

 そうした気配を改善しようということなのだろう、早くも本体整備をしている選手が目立つという珍しい前検日でもあった。ドリームでは宮地元輝が整備を行ない、さらに入念にペラ調整も行なったため、会見が大幅に遅れるという(笑)。なんの整備をしていたかと思えば、今日は点検だけだったということなのだが、とにかく前検日のうちに手当をせずにはいられなかったということだ。

 馬場貴也も本体整備を行なっていた。ペラ中心というイメージだけに、前検日からモーター本体を外して整備を行なうというのは非常にレアな光景である。

 山崎郡も同様の本体整備。山崎もSGでは本体を割っているイメージは薄く、その姿を見ながら以前にあっただろうかと記憶を手繰ることになったのだった。思い出せなかったので(笑)記者席に帰ってから調べてみたら、昨年のグランプリシリーズで転覆後に整備をしていて、ダービーでも部品交換があった。転覆整備はともかくとして、過去1年ではやはり決して整備が多いタイプではなさそうだ。

 あと、赤岩善生も本体整備をしているが、これはルーティンとも言える。今日も粛々と、自分のやるべきことをやっていたという印象である。

 さらに、峰竜太も本体整備の準備を始めたようだ。今日の作業時間終了後、BOATBoyのコラムでもお馴染みの西日本スポーツ・深堀記者との会話が聞こえてきて、「全部換えた」と言ったので、思わず「えっ、今!?」と割り込んでしまったのです。深堀さん、すみません! 交換自体は明日の作業になるようだが、いわゆるセット交換をするために整備士さんと話し合ったとか。「SGに懸けてますから!」と爽やかに語って、控室へと消えていった。ん? 峰のモーターって、三島敬一郎オススメ10基に入っていたような……。どんな動きになるのか、明日注目ですね。

 三島10基といえば、3番手モーターを引いた西山貴浩が燃えている。作業終了後にすれ違ったとき、「そろそろやりますから」と静かに宣言したのだ。そう、静かに。三島10基にチョイスされたモーターらしく、手応えも悪くなかったようで、それも火をつけたのか。ともかく、決してお調子で宣言したわけではないのは間違いなく、まずは明日の2Rに注目である。

 さて、前検はドリーム組が1班で、あとは登番順に全9班構成。通常は7班までが6艇立てで、8班と9班が5艇立てなのだが、ん? 登番が最も若い定松勇樹が6号艇を着けているではないか。本来なら5号艇のはずなのだが。編成表を見ると6班と7班が5艇立てで、8班と9班は6艇立て。これは珍しいぞ。

 というのも、尼崎名物「救護訓練」を前検航走後に9班が行なうのである。尼崎名物と書きましたが、僕も去年の甲子園の時に初めて知りました(笑)。尼崎では前検日に9班が模擬レースを行ない、最も後輩の6号艇が事故艇役として2マークでエンジンをストップ。レスキューが駆けつけ、他の5艇は事故艇の外を走る、という訓練を行なうわけですね。さらに、レスキューが帰ってくると、定松は担架に乗せられて医務室へ。陸上での訓練も行なわれるわけです。昨年甲子園の項もご覧ください。

 で、9班以外の選手たちも「見学してください」とアナウンスがかかって、装着場にぞろぞろと集結。ペラ調整室や整備室で作業をしていた選手もいったん手を止めて出てくるわけです。こうして選手たちの安全は守られ、万が一の時でも全員が素早く行動する。態勢は万全!
 とはいえ、明日からはこのような光景が見られないことを祈っております!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)