11Ｒ。なんだなんだ！ 渡邉優美の２マークの逆転は！ スタートで後手を踏み、海野ゆかりにまくられて、平高奈菜と平山智加がズブズブと差し込む。これは香川同士の争いか、と見ていたら、２マーク先マイを仕掛けた渡邉が強烈な返りで一気に抜き去ってしまった！ 渡邉のレース後は、どことなく悪戯っぽい表情。それはそうだろう。一時は絶体絶命だったのだ。大敗でもおかしくないところを、勝利で終えたのだから、これはデカい。
そして、先頭に立たんという流れだった平山智加はといえば、これはもう苦笑いしかない。しっかり展開を突いたにもかかわらず、渡邉に先んじられるとは。これは平高奈菜も同様だ。
一方、ジカまくりで勝機をつかんだかに見えた海野ゆかりは、悔しいというより哀し気な表情に見えた。結果４着は厳しい状況に追い込まれるものでもあり、やるせない思いが押し寄せてきたか。それでも、渡邉とレースを振り返る際には笑顔も見せており、まずは前を向いたものと思いたい。
それにしても、西橋奈未のエンスト失格はなんとも残念。ライブで観戦している時には１マーク付近の攻防に目が向いていて気が付かなかったのだが、リプレイを見ると画面の右隅で思い切りキャビって失速している様子が映っていた。選手責任のエンストでマイナス２点。優出は絶望的な状況である。それもあるのか、またレース自体の後悔か、西橋はかなり落ち込んだ表情を見せている。不完全燃焼の第２戦、これも糧にするしかなかろう。
12Ｒ。「優勝だ……」。遠藤エミが５コースからのまくり差しで突き抜けた瞬間、ピットで観戦していた誰かが呟いた。最強レディースが外枠も克服して２連勝。もちろん足の裏付けもある。となれば、見ている者がそんな心持ちになるのも当然というものだ。
それにしても強い。そして、５コースからの激勝後も恬淡としているところがまた凄い。まったく高揚感なく、平静なレース後なのだからやはり格が違うのだ。同期の樋口由加里とこそこそと話して笑い合ったシーンだけが、微笑ましいというか、プリティというか。なお、その呟きはさらにその後、別のものとなる。
細川裕子は悔しい一戦だ。２マークで２番手を競り合った浜田亜理沙に弾かれる格好で４着。１号艇を活かせなかったばかりか、なんとか２着をという思いをまさに弾き飛ばされてしまったのだ。宇野弥生の４カドまくりに対処するのはイン選手として仕方がないところで、きっちり仕事もしたうえでの連対のはずだったのだが……。浜田に詫びられてうなずきはしたが、表情はせつないものになっていた。
その浜田は不良航法をとられてしまった。トライアルの同裁定はマイナス７点。３着だったわけだが、その分がまるまる減点されてしまったわけである。西橋の選手責任エンスト、宇野の連続大敗もあってボーダーが下がる可能性も高まっているが、それでも連覇は遠くなり……。
細川と浜田の競りの間隙を突いて２番手浮上は藤原菜希だ。チルトを１・５度に跳ねて勝負に出て、狙いは空転したのだろうが、しかし２着が転がり込んできたのは大きい。初日の６着を一気に巻き返したことで、表情はかなり明るくなっていたのだった。初出場での優出が見えてきたぞ。
枠番抽選。「完全優勝や……」。抽選を見守っていた誰かが呟いた。遠藤エミが引いたのは１号艇。そう言いたくなるのもわかる。そう簡単なことではないとわかってはいるけれども、運までも味方につけた遠藤はもはや無敵のようにも思えるではないか。
そのＢ組は平山智加が２番目に引いて５号艇。結果的にすべて外枠での戦いだ。そのことに対してなのか、あるいは最強の敵が１号艇を引いたことに対してなのか、抽選後の平山は浮かない顔をしている。一矢報いるための秘策を考えていた可能性もあるが……。
遠藤は１号艇を引いても淡々としていたが、Ａ組で１号艇を引いた渡邉優美はニッコリ。ちょっとだけ「引いちゃった」みたいな悪戯っぽい表情も見せているが、枠番抽選で２度とも１号艇を引いたのだから、そんな顔つきにもなるだろう。プリティでした。
一斉に封筒からカードを取り出すこの抽選、ところが平高奈菜のカードがなぜかなかなか取り出せない。悪戦苦闘する平高だが、その途中で出ていないのが６号艇であることに気づいた模様。苦労して取り出しても出てくるのは６号艇……ということで苦笑い混じりの平高なのであった。もともと６コースは苦手ではないはずなので（あるいは前付け!?）、強烈な勝負駆けを見せてくれ！
シリーズ。まさかの勝負駆けに追い込まれていた田口節子が９Ｒを逃げ切り。貫禄を見せて、予選突破を確定させた。レディースチャンピオンもクイーンズクライマックスも２度ずつ戴冠している女傑としては、ここで予選落ちするわけにはいくまい。ピットに戻ってきても特に感情は見せず、さらっと控室へと戻っていくあたりも貫禄たっぷりなのであった。
その９Ｒでなんとか５着に踏みとどまった岩崎芳美は、得点率を５・29まで下げてしまったものの、18位にこれまた踏みとどまった（最終的には17位）。控室へと戻る途上、ボートを展示ピットに移すため、10Ｒの展示が終わるのを待っていた海野ゆかりを見つけると、小走りで駆け寄って声をかける。しばし会話は続いて、ようやく控室へと消えていったのであった。同期の海野にはアドバイスをもらったりもしていたはずで、その報告だっただろうか。何はともあれ、準優には滑り込んだ。６号艇でももちろん、渾身の戦いを見せる。
予選ラストの10Ｒを迎えた時点では、松瀬弘美または廣中智紗衣が踏ん張るか、滝川真由子が浮上するかがボーダー争いの焦点。松瀬と廣中は外枠だっただけに、スリリングな状況であった。ともに４着以上が欲しいというなかで、バックでは寺田千恵を加えた３艇で３番手争い。両者に大きなチャンスはあったのだが、３艇が競って開いたふところに、６番手にいた後藤美翼がくるりと飛び込んで３番手へ。２番手を走っていた實森美祐がキャビって寺田があおりを食ったのは不運だったが、ともかくこの時点で廣中か松瀬が陥落する状況となってしまった。廣中は３艇の争いをしのいで４番手へ。これでなんとか準優は当確。
そして、松瀬は６着シンガリ負け……。一時は得点率トップ争いにも絡んでいながら、予選落ちの憂き目となってしまった。同じような状況だった小野桜も予選落ちしており、シリーズは何とも激戦であった……。松瀬はさすがにがっくりした様子。表情から精気が消えていた。追加でドタバタとやってきて、その甲斐あったかと思われたのだが、結果的に無念。足はいいはずなので、残り２日でしっかり稼いでください！ なお、18位に浮上した滝川真由子は１便で帰宿していたようで、姿が見えませんでした。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 黒須田 ＴＥＸＴ／黒須田）
