BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――第3戦は熱い!

●11R

 まずは平高奈菜の健闘に拍手を送りたい。昨日のYouTube「展望BOATBoy」で、ちらりと「前付けがある!?」てなことを言っていたのだが、正直そこまで現実味があったわけではなかった。動いたとしても想定は4コース。ところが平高はさらに行った! スタート展示から2コースに入り、本番も同様。結果にはつながらなかったものの、その勝負を懸けた姿勢は称えられていいだろう。
 もちろん、動いたからそれで良しではないし、平高もそうは思っていない。レース後、平高はどれだけ顔をゆがめていたか。ピットに戻ってきたとき、ボート洗浄の間、さらにはカポック脱ぎ場で装備をほどく間。まったく悔しさは平高のなかから消えようとはしなかったのだ。装備をほどく際には壁にもたれかかっており、疲労感もうかがえる。それだけ全力で戦った。心身ともに。それでも届かなかった優出。感情を隠そうとしない平高がやけにカッコ良く見えた。

 勝った細川裕子もカッコ良かった! 平高の前付けを受け入れて4カド選択。スタート決めてまくり一撃! 最高の勝負駆けだろう。そして、これで優出を決めた! なんと意外なことにクイーンズクライマックス初優出である。それを地元でやってのけたのだから、最高である。レース後はすぐにインタビューに呼ばれたので、歓喜をあらわす間もなかったのだが、その後に宇野弥生と微笑み合う姿が。この舞台で優出を逃しまくってきた呪縛から解き放たれた瞬間だ。

 その宇野弥生は、3着には入ったものの、初戦2戦目の大きな着が響いた。だから、3着といってもまったく浮かない顔で、ボート洗浄を終えて控室へ向かう際にははっきりとうつむいていた。この借りは来年以降、ふたたびこの舞台に戻ってきて晴らすしかない。

 はっきりとうつむいていたのは、藤原菜希も同様。3コースを選択して勝負に出たが、細川のまくりを真っ先に浴びるポジションになってしまった。この選択が正しかったのか、スタートをもう少し踏み込めなかったのか、あるいは単純に優出を逃してしまった悔しさ、さまざまなつらい思いが脳裏を駆け巡ったことだろう。藤原もまた、来年以降、ここに戻ってくるのは絶対的な目標だ。

 三浦永理は4着だが、初戦の逃げ切りが活きての優出。とはいえ、21点はボーダーのメドとはいえ、12Rの結果を待たなくてはならない場合がほとんどだから、優出を決めたという手応えはなかったかもしれない。しかも、敗れた後ではやはり悔しさばかりがつのる。明るい表情はついぞ見られなかった。

 2戦つづけて1号艇で逃げられなかった渡邉優美。昨日は逆転で1着はものにしたが、今日は2着までだ。さすがにレース直後は表情がカタかったが、次第にほぐれてきてはいる。何はともあれ、優出は決めた。前を向かねばならない。それだけに、柔らかい表情が見られたのは、ポジティブなことと思えた。

●12R

「私、あんなのやったことないよ!」
 勝利者インタビューを終えた海野ゆかりに、細川裕子が祝福に駆け寄った。素晴らしい2コース差し! それをまずは称えたのだろう。そして、あんなの見たことない、とでも言ったか。海野の答えを考えれば、そう推測される。たしかに、海野の2コースといえばまくり。昨日もまくって出たし、同体からツケマイを打つこともしばしば。新概念データだと2コースまくり5勝、差し1勝となっている。そんな海野が遠藤エミを差し切ったのだ。海野自身が目を丸くしているのも納得である。
「もっと褒めて褒めて!」
 と海野はさらに細川におどけてみせる。私も褒めさせてください。素晴らしすぎる2コース差しでした! そして勝負駆け、お見事!

 遠藤エミはやはり納得いかない様子。リプレイを見ると、初動を入れた後にややサイドが外れたような、そんなしぶきがあがっている。その分、海野に差しを許したということか。もちろん、それでも優勝戦1号艇である。完全優勝は絶たれたが、最も優勝に近い存在であるのは間違いない。だが、今日のところはまず敗れた悔しさ、そして明日もまた1号艇で戦うのだから、今日の敗因をどう解消するかを考えるばかりだろう。そんな心境なのに、カメラマンたちは容赦なく人差し指を立てたポーズを要請する。それでも、浮かない顔ながらもしっかり応えていた遠藤の人格は素晴らしい!

 12Rから優出を決めたもう一人は平山智加である。しかし、6着に敗れてしまった。これではやはり浮かれることはできない。というより、はっきりと暗鬱な表情を浮かべていた。そんな平山に、平高奈菜も同情して顔をしかめる。平山もまた、明日のことよりも、あるいは明日6号艇からでも勝機をつかむために、今日の敗戦と向き合うつらい時間を過ごすしかないということだろう。

 このレースでは、優出が厳しい状況だった西橋奈未、浜田亜理沙ともに大敗。また、結果的に2着条件ながら6号艇で見せ場を作れなかった川野芽唯も同様だった。それぞれがつらそうな表情を見せていて、痛々しさはどうしても否めない。西橋と浜田は、昨日の失敗をも改めて振り返ってしまう、そんなレース後だったか。連覇を逃した浜田、また9年ぶり制覇を逃した川野は返り咲きのため、西橋は初陣を飾れなかった悔しさを吹っ切るため、来年に向けて決意を強くするしかない。クイーンズクライマックスの悔しさはクイーンズクライマックスでしか晴らせないのだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)