
蒸し暑い。実にムシムシする。気温はそこまで高くはないのだが、梅雨特有の不快な暑さがピットを包んでいる。「まじあっっつっ!」と、モーターを装着しながら磯部誠が苛立ったように声をあげる。何しろ、選手は乗艇する都合上、長袖の服を着用しなければならない。半袖でいたって暑いのに……。夏になると、毎度毎度、選手たちの大変さを改めて思う。

前検はとにかく忙しいから、この暑さのなかでピットを駆けまわっている選手もいる。ドリーム組の関浩哉が、係留所からすごい勢いで装着場に駆け上がってきた。そして、整備室へ直行。後を追うと、プロペラ調整所に陣取って、プロペラを叩き始めていた。汗を拭う間もなく、である。ちなみに、ペラの形が関がいつも乗るものとはかなり違っていたようで、試運転で違和感を覚えたようだ。ドリームは1班だから、真っ先に前検航走が始まる。だから大急ぎで調整に向かっていたということになる。


こんな天候なので、選手からは「重い」という感想が飛びまくることになっていた。前検で多少の重さが出るのは想定済みだろうが、高温多湿ではさらに重さを増すことになる。先の関も重さを口にしていたし、ドリームではすべての選手からそのコメントが聞かれた。池田浩二が「竜太が出ている」と言い、本人もまた好感触を口にした峰竜太も、やはり重さがあったと証言。今日の動きが悪くなかった選手については、重いと言っていたとしてもあまり気にする必要はないかも。そういえば関も「モーターにパワーはありそう」と言っていたんだったな。

感触一息の選手については、重さはさらにネガティブ方向の要素となっているかも。というわけで、さっそく本体を割っている選手もちらほら見かけられた。長田頼宗、瓜生正義、吉川元浩。三島敬一郎の評価も高くないモーターを引いた面々であり、早くも大手術に取り掛かったということか。

気になったのは、三島オススメ10基にも入っている48号機を引いた新田雄史だ。彼も本体を割っていたのである。三島によれば、「新ペラに未知数」ということで、今日はまずプロペラ調整に没頭するのかと想像していたのだが、本体ですか、今日の整備は。点検のみで明日から本格的にペラ調整、という可能性もあるだけに何かを断じることは控えるが、それだけに初日の気配や部品交換状況などはしっかりとチェックしたい。

もうひとり、本体を割ったのは毒島誠だ。ドリーム6号艇で登場する初日、ということで会見が行なわれているのだが、そこでは第一声が「乗りやすい」だった。その口調はむしろ明るいほど。ただ、それ以外が特に好感触ということはないようで、そのあたりの解消をまずは本体整備で行なっているということのようだ。その口ぶりは、あまりネガティブさを感じさせなかったので、悲観する必要は特にないのかもしれない。
毒島といえば、誰もが気になるF2後の走り。会見では「皆さん聞きにくいところだとは思いますが」と笑っていたが、曰く「スタート以外は、自分のレースをしたい」。さすがにスタートは慎重にならざるをえないものの、降りるつもりは欠片もないようだった。それでこそ毒島誠! 魅せるレースで我々を感嘆させてください!

さて、今日最もたくさんの報道陣に声を掛けられていたのは誰だと思いますか? そうだね、佐藤隆太郎だね! SG2連続優勝をひっさげて登場、なのだから当然。3連続優勝なるか、は誰もが気になるところだから、そりゃあメディアは佐藤に群がろうというものである。前検航走後、一人の記者さんがコメント取り取材をしていたら、気づけば報道陣の輪ができているという。生の声、聞きたいというのはほぼ同業者なのだからよくわかります。それに対して、まったくいつもと変わることのない雰囲気で、ハキハキと丁寧に応えていた佐藤。あれだけの快挙を成し遂げても、やっぱり落ち着く払っているのである。そうした振る舞いは、間違いなくこの男の強みだなあと改めて感じた次第です。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)