BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――初日を終えて

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 初日の1走もしくは2走を終え、レースでの感触を確認した選手たちは、さらに調整のピッチを上げ始める。あるいは、より大きな整備に手をつけ始める。たとえば吉田拡郎。8R後に本体整備を始めている。その8Rは、スタートでやや後手を踏んだ笠原亮を4カドから叩き(笠原はめちゃくちゃ悔やんでいた)、内に攻め込んでいったが2コースをまるで超えることができず、差しにチェンジせざるをえなくなっている。本来ならまくり切りたい展開だったにもかかわらず、なのだから、パワーに不満を持つのは当然だ。

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 石川真二も本体整備だ。6Rの2号艇は飛ぶ気配なし。石川としては不満しかないだろう。ピット離れ仕様の仕上げというのは、やはりプロペラ調整が基本となり、石川のプロペラゲージはまさにその仕様の独特なものだが、そのゲージ通りに叩けば必ず飛ぶというわけではなく、実際は本体も非常に重要なのだという。それもあって、石川は初日にさっそく本体をバラしたという次第。これが当たれば、明日は彼らしい鋭いピット離れが見られるかもしれない。

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 ペラ室も盛況。多くの選手が叩いていたが、目立っていたのは小野生奈。思い切りハンマーを振り上げて、強烈な打撃を加えていた。小野のこの姿は決して珍しいものではない。オールスターでもガッツンガッツン叩いていたし、時には立ち上がって相当な大振りになることもある。小野のプロペラも独特の形状なのか。あるいは、男子と女子の仕上げ方の違いによるものか。体重の軽い女子が乗ったあとのモーター(プロペラ)に男子が乗ると、回転が上がり過ぎて調整が必要になるという話を聞いたことがある。逆もまた真なりで、SGの後に女子戦が入っていたときなど、SGレーサーが仕上げたクオリティの高いペラにもかかわらず、女子選手は合わなくて乗れないので叩き直す、なんていう話も。小野のモーターの前操者は石田章央である。小野の調整にそのあたりも影響しているかも。

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 レースを走る前の選手もプロペラをもちろん叩く。ギリペラの一人である毒島誠。今日もやはりギリギリまでプロペラを叩いてレースに臨んでいる。ドリーム戦だろうと普通の予選だろうと、これが毒島のスタイルだ。

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 10R発売中には桐生順平もプロペラを叩いていた。前検から本体をバラし、回転が上がらない症状をなんとかしようと奮闘。レースには電気一式を交換して臨んでいる。レースの直前になって、ペラ調整に移行できるまでにはなったということか。ドリーム戦ではピット離れは普通に出て、結果は伴わなかったが、レースは普通に走っている。明日もさらに調整をすることにはなるだろうが、最悪は脱したと考えていいだろうか。

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 ドリーム戦を勝ったのは峰竜太。今日は地上波中継に出演させていただいたのだが、勝利者インタビューに出てきた峰は超ゴキゲン。「2マークのターンは完璧。あれは僕にしかできない」と軽口を叩く。「あ、すみません、言い過ぎました」と笑ってフォローしたが、ようするに最高のターンができたということだろう。放送が終わってピットに走ると、笑顔の峰竜太とハイタッチ。ドリームを逃げ切った程度でハイタッチか、という感じだが、まあいいだろう。このまま突っ走るような雰囲気まであるように思えた。

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 さてさて、多摩川のピットでは他場ではあまり見ない光景がある。レースを終えてエンジン吊り、そこで艇旗艇番は当然外されて、エンジン吊りに参加した選手の誰かが装着場の隅にある置き場に持っていくのだが、多摩川では装着場の真ん中あたりにある買い物カゴにすべての艇番がいったん収められる。これを誰かがまとめて、置き場に運ぶわけだ。今日、このカゴを地元の中野次郎が取り上げて、置き場へと向かう場面があった。焦ったのは小野生奈。走って中野に追いつき、中野からカゴを奪おうとする。涼しい顔の中野は「いいよいいよ」と小野の申し出を固辞するわけだが、小野も一歩も引こうとしない。やがて、羽野直也と仲谷颯仁の新兵コンビもこのやり取りを見かけて、猛ダッシュ。中野さんにそんな雑用みたいなこと、させるわけにはいかない!
 折れたのは中野。「じゃあ、一緒にやろう!」と3人を引き連れて置き場に辿り着き、協力し合って収納するのだった。気合が入っているのは間違いないが、好漢・次郎もやっぱり健在!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)