BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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びわこマスターズTOPICS 3日目

THE勝負駆け①予選トップ争い

魔術師・西島

 

 

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 どうやら、ここで書くべきは「最終的に誰がトップに立ったか」という戦いの履歴ではなさそうだ。今日の4R、西島義則の1マーク付近の足色を見たとき、「優勝にもっとも近い男」と確信した。特に、ターンの出口からの出足~行き足の凄いこと。今節、私はことあるごとに「パワー相場は混戦、どんぐりの背比べ」と言い続けてきたが、3日目にして想定外のエンジン=22号機が不動のV候補に成り上がったのである。

 より正確に言うと、この西島22号機は節イチやエース機などとは異質なレベルにあると思う。行き足~伸びは水準レベルで、超ウルトラスーパー出足型に特化した感があるからだ。どこをどう調整してきたのか、下馬評では低評価というか、まったく話題にも上らなかった22号機が、日に日に個性派エンジンとしての存在感を増していった。前検ではまったく目立つ気配はなかった。ドリーム戦では、ミスター今村豊とどっこい程度に見えた。2日目、「おっ」と唸らせるようなターン足を随所に見せた。そして今日は、ターンの出口からのレース足……レースごとに生き物のように進化し、出足が不可欠な西島と同化していく様は空恐ろしい感すらある。

 

 

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 後半の12R、西島はこの相棒にさらなる活を入れて参戦した。電気一式、交換。4Rの何が不満だったのだろうか。素人目には完成形に見えるのだが、西島はもう一丁上を目指したのだろう。電気一式の効果は微妙らしく、とある元レーサーは「エンジンのリフレッシュみたいなもんだから、交換しても足落ちすることはほとんどなくて、ごくたまぁにビシッと当たることがある。垂れてた部分がシャキッとするみたいな感じかな」と教えてくれた。西島にとって、あるいは最終調整に近いような念入れの交換作業だったのか。

 とにかく1号艇の12Rで、西島は3着に敗れた。スリット同体から3コースの野長瀬正孝にぐいぐい伸びられて、1マークは握って抵抗せざるをえなかった。「行き足~伸びは水準級」という弱点を突かれるような敗戦でもあった。同様のリスクは、明日以降もつきまとうかもしれない。ただ、私はそれでも現在の22号機がVにもっとも近いエンジンだと思っている。西島と同化、いや、西島そのものに思えるから。行き足~伸びの不足分は、気合のスタートとターンテクで補う。そうやって西島はいくつものビッグタイトルを制してきた。明日以降も、そうやって勝ち続けていくだろう。

「敵との闘いか、己との闘いか」

 今節のキャッチコピーの答を、西島はすでに何度も実戦で披露している。敵と己、両方ともに勝つ。そのパートナーとして、現在の22号機は最強だと私は思う。そして、わずか4日間で最強のパートナーで育て上げた西島は、整備の魔術師としか言いようがないな。

 

 

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 西島のことばかりを書いたが、明日の1号艇の面々についても少し触れておこう。ミスター今村豊の足は、現状ではかなり苦しい。全体的に劣勢でストレートの迫力もないから、西島の弱点を突けるとは思えない足色だ。むしろ、スローからでもスリット付近の行き足が強力な田頭実、三角哲男の方が現状では西島を倒す可能性は高いと見ている。

 まあ、シリーズとしてはやっと折り返し地点に到達したばかり。水面だけでなく、ピットでの闘いもこれからが本番ではあるのだが。

 

THE勝負駆け②ボーダー争い

伸び~る軍団の暗躍

 

 

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 V候補のひとりだった山室展弘やドリーム戦士の今村暢孝が、まさかまさかの予選敗退。それなりの波乱はあったが、V戦線を熱くさせそうな面々がしっかり生き残ったという感も強い。たとえば江口晃生や倉谷和信。足的にはまだまだ発展途上でも、持ち前の整備力と前付け力で1号艇の主役たちを脅かしてくれるだろう。

 

 

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 道産子レーサー熊谷直樹が23位でギリギリ残ってくれたのも素直に嬉しいぞ。ただ、足はもうしっちゃかめっちゃかで、今日のままではV云々とは無縁のパワーだ。せめて十八番のファイト一発スタート一撃全速ツケマイ攻勢がインまで届くくらいの伸び足が欲しい。現状、6コースからスタートを張り込んでも4カドまで届くかどうか……前検の行き足はそれなりに良かったはずなので、良化の余地はあるはずだ。

 逆に、現状のパワーでも楽しみいっぱいな面々がいる。昨日も記した伸び~る軍団で、とりわけ明日の4号艇になった北川幸典&山一鉄也は一撃の下剋上チャンスを有している。山一が4カドからゼロ台全速で突っ込んだりしたら、それはそのまま西島の弱点をえぐる攻撃になりえるだろう。

 

 

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 あ、そうそう、明日から敗者戦に回る山室だが、絶対に軽視は禁物! ほぼA1のボーダーライン上にいるからして、明日からもガチの勝負駆けが続く。F2持ちの瀬尾達也だって降りないし、谷川里江、作野恒、吉田隆義などが一撃の大穴をぶちかます可能性も少なくないぞ。舟券的に彼らの妙味は明日からどんどん高騰していく(モチベーションの差や人気の較差が極端になっていく)のだから、片時も目を離さずにチェックし続けてもらいたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)