BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡ダービーTOPICS 2日目

ピットアウトの五右衛門

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 久々に、ピットアウトから目を離せない時代が到来しようとしている。かつてはイン屋、前付け屋があまた存在したからだが、今回は別物。ピット離れ、通称「バナレ」で飛ぶ(この動詞も最近の流行語。「飛び出していく」の意)選手が増えているからだ。その仕掛け人は石川真二。バナレと聞いて毒島誠を連想する人もいるだろうが、毒島のそれは本人にも「いつ飛ぶかわからない」という不確実性の強いものだった。石川真二ペラは違う。確信犯的にいつでもどこでも、大なり小なり飛んで行く。

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 今日の2Rの石川もかっ飛んだ。6号艇から脱兎のように飛び出し、瞬く間に1号艇の中島孝平まで呑み込んで悠々インコースを召し取った。そして、昨日(1号艇2着)のリベンジを果たすような豪快なイン逃げ。自慢の特殊ペラを120%活かしきった勝利だった。
 バナレで飛ぶ大きなメリットはふたつ。ひとつは「コースが有利になる」ことで、これは前付けの利点と変わらない。ふたつめは「起こし位置が深くなりにくい」こと。瞬時に飛び出してコースを奪うから、普通の枠なり進入のような形態でレースができる。これが前付けとは決定的に違う。前付けはコースを取る代わりに助走距離を失う諸刃の剣であり、バナレ飛びはひと粒で二度美味しい二刀流なのである。そんな誰もが羨むようなプロペラを、石川はいつの間にか開発してしまったわけだ。

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 そして、これまた石川のユニークなところなのだが、こんな魔法のようなペラを包み隠さず(おそらく)誰にでも伝授しているようなのだ。いや、伝授しなくとも、石川がひとつのシリーズを走り終えれば、最終日にその特殊ペラが残される。次節に斡旋された選手がそのペラのゲージを作ってしまえば、石川ペラのコピーは無尽蔵に増殖できる。事実、全国津々浦々のピットに石川ペラが出回っているようだし、それを信奉して実戦で使うレーサーも徐々に増えている。当地前節の木村仁紀や今節の西山貴浩のように。
「石川ペラは常人には乗りにくい」的な噂もあるようだが、何十年も前からレーサーたちは様々な困難を様々な創意工夫で克服し、自分の手の内に入れてきた。おそらく、この石川ペラに関しても、あれこれ試行錯誤しながら自分なりのバナレペラを開発する選手が登場するだろう。だとするなら、近未来の艇界は「バナレ戦争」とも言うべき……。

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 話が飛躍しすぎた。後半11Rの4号艇・石川は、前半ほど飛ばずに2コースまで。それをきっちり2着にまとめて節間212着と絶好のポジションに付けた。このまま予選上位なら文句なし、たとえ18位で通過しても準優~優勝戦では楽なインコースの可能性もある。嗚呼、なんと美味しい石川ペラよ。今節の石川がバナレペラをフル稼働して優勝したらば、きっと私はこんなタイトルを付けるだろう。
『平成最後の大泥棒』
と(笑)。

展示ワーストに要注意!

 浜名湖ヤングダービーの当欄で「展示タイムのトップ選手が想定以上に活躍している」みたいなことを書いたが、今日の蒲郡は「展示タイムのワースト選手が想定以上に這い回った」という傾向があった。羅列しておこう。
1R④寺田…4着
2R④今村…6着
3R③金子…5着
4R④吉川…4着
5R②寺田…5着
6R②西山…1着
7R③中島…4着
8R①山田…1着
9R④新田…4着
10R⑥西山…4着
11R②今垣…5着
  ③湯川…5着
12R③田中…3着
  ④吉田拡…5着

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 書いてみたらばそうでもないか(笑)。でも、6Rの西山は前出バナレ仕様にしてのイン逃げでちょっと毛色が違う感じ。まともにワースト時計で舟券に絡んだのは8Rを逃げきった山田康二と12R田中信一郎の3着だけだった。逆にトップ時計は「のべ13回で舟券絡みは11回(4勝)」だから、やはり大差と言うしかない。
 昨日のワースト時計はちょいちょい舟券に絡んでいたから単なる偶然の「悪いとこ取り」なのかもしれないが、メンバーを見るとほとんどがパワー劣勢なだけに明日以降もこの傾向は続くかも? 2年前に黒いフライホイール(発電関係の部品)が導入されてから「新型モーターの較差がさらに広がった」と言われており、それがこの展示タイム=成績の極端な較差につながっているのではなかろうか。
 あ、それから今日になっていきなりパワーアップした選手も少なくないので、私なりの見立てを記しておこう。

既存(前検鑑定)のパワー

SS級
★★★守田俊介…冷えたせいか「ナイターが苦手」(本人談)のせいなのか、今日の12R気配は昨日ほどではなかったが、やはり追い上げ足はキラリ輝いていた。節イチだと信じる。

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S級
★★篠崎元志…5Rの展示6秒61は同レースの2位とコンマ09差。バックの伸びが半端なく、モンスターの片鱗を魅せた。
★★石川真二…バナレだけでなく出足とレース足も絶品。正確に書くと「バナレSS・実戦足A+」(笑)

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A級
★井口佳典…井口も昨日からバナレがやや目に付いたが、今日の12Rはガッツリ飛んだ。それでいてストレート足も強力だから、まさに鬼に金棒だ。
★平田忠則…昨日の大敗はどうしたことかと思ったが、今日の足を見て一安心。出口から押して行く46号機の特長がしっかり反映された。さらに良化するはず。
★赤岩善生…9Rの6着大敗の気配がちょっといただけない。割引が必要かも?

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 これに、初日の実戦を見てA級にピックアップしたのが須藤博倫、岩瀬裕亮、萩原秀人。さらに今日(特に後半)は毒島誠、桐生順平、篠崎仁志が素晴らしい鬼足を見せた。明日以降、このニュージェネトリオの活躍はほぼ間違いないだろう。峰竜太はターンがアレすぎて、正味のパワーがわかりませんっ!(笑)
(text/畠山、photos/シギー中尾)