菊地孝平の顔がさすがに明るい。
ピンピンスタートなのだから当然ではあるが、
その明るさの向こうに充実感も見てとれるから、
心身ともに好調ということだろう。
菊地を出迎える面々も、やはり明るい表情になっている。
服部幸男は穏やかに微笑んでおり、原田幸哉はハイタッチ。
菊地らしいスタートを決めてのまくり一発を見れば、
周囲の人間の心も弾もうというものだ。
ちなみに、足的にはターン回りが一番いい、とのこと。
もちろん精神面もグッドということだった。明日からも行けそうだぞ! で、その菊地と喫煙所で顔を合わせると、
記者席に戻ったら調べてほしいんだけど、という。
横澤剛治の成績だ。
鳴門を走っている盟友の結果が気になっているようなのだ。
笹川賞の準優でともに悲しみにくれたシーンが思い出される。
本当につながりの深い三羽烏なのである。
あ、菊地選手、横澤選手は昨日が2着、
今日は中止順延でございます。
原田幸哉も幸先のいいスタートを切った一人。
声をかけると、すぐに目元に笑みが浮かんだ。
こちらも気分上々だ。 このところ、モーターはいいけど
成績がイマイチ、という節が続いていた。
その理由は、「直線はいいけど、ターンがダメ」で、
回ったあとに押していかなかったのだという。それが、今回は逆。
伸びていく感じはないけど、ターンがいい。
原田はそれを「自分好み」と表現していた。
では、自分好みの足だったら、成績は走りはどうなるのか。
「このごろ、焦りもあってか、攻めの姿勢が
なくなっているような気がして、それを取り戻したいんですよね。
そのためにも、今回はいいアシだと思う。
なんとか現状を打破したいですよね」
開会式で「内容で魅了」と言っていたのはこれだったか。
攻める原田幸哉が見られるとなれば、これは本当に楽しみ!
「僕も楽しみにしてますから」と言った原田の顔には、
決意めいたものが浮かんでいた。
それにしても、瓜生正義って人はすごいっすね。
菊地と原田の表情が明るいのは当たり前。
レースで結果が出ているのだから。瓜生は、そんなことも関係なく、
いい表情を見せているのだから、
その精神力や人格には頭が下がるというほかない。
なにしろ、前検では気配は決して良くなく、
今日も一日を通して調整に忙殺されていたのだ。
ピットで瓜生を見かけたときに、走っていたのが5割、
早足で係留所やペラ室に飛び込むのが4割、といった感じで、
時間が足りないくらいの様子だったのだ。
それでも、悲壮感や苛立ちの様子は薄く、
こちらに気づくと微笑みながら「こんちわ~」と
瓜生のほうから挨拶してきたりする。
そして、結局はドリーム戦を堂々と逃げ切ってしまうのだから、
やはりこの男、強すぎる! 改めて言うまでもないことではあるが、
しかし今日、改めてそれを実感した次第なのであった。
さてさて、初日などの早い段階でゲージ調整している選手は
エンジン出てるの法則、のお時間です。
今日、ゲージ作りしていた選手は、山口剛と馬袋義則。
レース後、特にペラ叩いたりモーターいじったりする必要がない、
ということですよね。 奇しくもH記者が前検で高い評価をしていた
二人。今日は二人とも勝利はあげられなかったが、
明日も注目してみよう。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)