BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――静かに燃える

 1R展示後にピットに入ると、ちょうど磯部誠が本体整備を終えたところだった。ボートごと整備室に持ち込んでの整備は、一昨日も目撃している。発表された部品交換はなく、点検あるいは細かい部分の調整だったか。そして今日も? 好調を維持しているなかでの本体整備。優出は無事故完走で当確とはいえ、緩めていないと考えれば、好ましい動きであろう。

 で、磯部と入れ替えにボートを持ち込んだのが、シリーズ準優1号艇の瓜生正義という。成績的にはむしろ順調な2人が本体整備というのだから、やや不思議な感覚はある。ただ、瓜生のほうは本体をバラバラにしている。整備士さんも3人、4人と瓜生を取り囲んでいた。何か異変があったのだろうか? こちらはそれこそ直前情報を確認していただきたいところ。SG準優1号艇があそこまでバラすというのは、あまり見かけないことである。

 トライアル組に話を戻すと、早い時間帯は磯部以外はそれほど大きな動きは見当たらない。ペラ室を除くと馬場貴也がハンマーを振るっており、勝負駆けに向けて余念のない調整が始まっている。

 また、白井英治も早々にペラ室にこもっている。勝負駆けや準優、優勝戦の前でもゆっくり目の始動であることが少なくない白井だが、今節は早い時間帯から動いているあたりは、これぞグランプリということか。いつも通り、というのはもちろん大事なことだし、聞こえはいいのだが、この特別な舞台に特別な行動というのも実は大きなポイントだと僕は思っている。今年がグランプリ取材18回目、これまで特別感を漂わせている選手のほうが最後に笑っていることが多いというのが実感なのだ。

 調整らしい調整を早い時間帯に見たのはこの程度。トライアル最終戦はかなりの大勝負であり、それぞれの闘志も最高潮に高まるわけだが、この明るい時間帯は静かに燃えているといった雰囲気。その象徴が、ボート磨きをしていた原田幸哉ということになろうか。
 かなり丁寧に、力を込めて、ということは思いを込めて、ボート全体を磨き上げていた原田。こうした選手は実はけっこう見かけるのだが、原田もそういうタイプだっただろうか? 地元である原田だからこそ、そこには何か特別な意味を見出したくなるというもの。少なくとも、ボートを慈しむという意味と同時に、メンタルを整えるという意味もあるのではと見受けられた。

 シリーズ準優組も、どちらかといえばマイペースな動きであるように感じられた。たとえば松井繁がプロペラゲージを磨き上げていた。ゲージを擦るというのでもなく、ゲージでペラを調整するというのでもなく、ゲージ磨き。ドタバタと調整なければならないという段階はとうに過ぎた証しだろう。

 1号艇の宮地元輝は、なんどか装着場を行き来しているところを見かけたのだが、特に作業らしい作業をしているふうはなく、なんだか手持無沙汰のようにも見えたのだった。準優の白カポックで落ち着きを欠いている? まあ、それはかなり穿った見方ということになろうが、ともかく焦って調整を始めなければいけない状態ではないのは明らかだろう。
 シリーズのほうも静かに気合を高めていくという雰囲気の準優の午後。まさに嵐の前の静けさというやつか!?(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)