BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――目先の結果より

前検というのは、慌ただしいものである。

限られた時間で試運転、調整、整備などを行なわねばならない。

もちろん、スタート練習とタイム測定もあり、

エンジン吊りも当然ある。とにかく忙しいのだ。  

 

 

 

 

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ところが、スタート練習と

タイム測定を終えた中村亮太は、

「もうやることなくなっちゃった」と言う。

前検日にこんなコメント、聞いたことない。 

もちろん、その前に調整は行なっている。当然、プロペラ。

エンジンを受け取ってさっそく自分の形に叩いて、

それで試運転やタイム測定に臨んだのだ。

すると「出てますよ。微調整も必要ないと思う。マルです」。

かくして前検日の作業は終了と相成ったわけだ。

 

言うまでもなく、明日になれば

気候に合わせた調整は行なうことになる。 

それにしても、亮太は実に面白い男だ。

唐津GⅡモーターボート大賞で、

ナカシマのペラを使ってチルト3度に跳ね、

6コースから鮮やかにまくり切ったレースがあった。

今節は、その再現を狙っているという。

「もちろん結果は出したい。それも大事なこと。

だけど、目先の結果ではなく、

今後につながるレースをしたいんですよ。

お客さんの目に留まる走りを見せたいんです」 

それはプロとしてはむしろあるべき姿勢と言えるだろう。

もちろん、チルトはマックスの1・5度に跳ねることを考えている。

そんな話をしているうちに、

亮太は「うん、6コースから行きます。約束します」と言った。

明日は8R1回乗り。枠番は4である。

それでも亮太は外に出て、伸びて、まくり切る腹積もりだ。

明日の手応えによってはまた変わってくる可能性もあるが、

どんな戦い方になったとしても、

ファンを沸かせるレースを見せてくれるだろう。

シリーズ戦、最注目の一人である。

 

 

 

 

 

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モーター抽選で「予選突破は確実じゃ」と

呟いたという山地正樹が、

その相棒37号機をボートに装着していた。

その言葉をぶつけると、「フフフ」と不敵に笑う。

「いいモーターらしいからね」と目を細めた。 

山地は昨年の賞金王シリーズ戦がSG初出場。

今年はほかにSG出場がないから、

2度目のSGとなる。昨年は、

節間についに1着を獲ることができなかった。

モーターの素性がレースに活かされ、

宣言通り予選突破を果たしたとするならば、

当然その間に見られるでしょう、水神祭が!

「ん?…………さむい」 ダハハハハ、水神祭拒否宣言ですか! 

たしかに暮れの住之江は本当に寒い。

明日からは寒波もやってくるそうで、

今日の午後も1時30分頃には11℃だったのに、

2時30分頃には9℃に下がっていた。

今節もきっと寒いだろう。

しかし、この言葉はよく考えれば、

「1着は獲るけど、寒いから水神祭はヤダ」という意味である。

「さむい」の3文字には、

必勝宣言も含まれているわけだ。

山地が嫌がったって、先輩の川﨑智幸らが許さないだろう。

最高の笑顔でずぶ濡れになって、「寒いっ!」と悲鳴をあげる

山地を見たいぞ!

 

 

 

 

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笠原亮が、にこにこにこと声をかけてきた。

ボートを係留した場所の近くで

たまたま寒い寒いと震えていたのだ。

「丸亀、見ました?」 もちろん見ましたよ。

丸亀GⅡモーターボート大賞。

2日目ドリーム戦で笠原は、6コースから勝っている。

モーター出ているときの笠原亮はコース不問。

この日は外出しており、

JLCの携帯サイト=BOATRACE TV!レジャチャンで動画観戦。

うがぁぁ、舟券買ってないよぉぉぉぉ、と

頭を抱えたものだった。 

笠原は、モーターの調整が雰囲気にあらわれやすいタイプで、

話を聞かなくても、その様子を見ていると

手応えがなんとなくわかったりする。

顔を合わせたときの表情にもまた、そのときの感情が

しっかりとあらわれることが多い。 

というわけで、丸亀の話を切り出した笠原亮は、ゴキゲン! 

前検の段階でどうこう言うのは早いのもたしかだが、

今節は期待できると見たぞ。

 

 

 

 

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さてさて、明日はドリーム戦が行なわれるということで、

6名の共同会見があった。

その際、複数の選手が証言したのが

「辻選手が良さそうだった」。ドリーム組では、

辻栄蔵が気配上々の様子だ。「まだ重い感じはあるけど、

回った足は良かったですね。

スタートの感じは普通でしたけど、

力強い感じはありました」 

どうやら足に裏付けはありそうだ。

辻は春に住之江に参戦。そのときの相棒36号機は、

今回は決定戦で使用される。

上位モーターなのだ。

「僕が乗ったエンジンが決定戦で使われるとは、

まことに光栄に存じます」 

会見ではそう言って笑いで締めた辻栄蔵。

エンターテイナーっぷりは健在だ。

そして、気分上々の証であろう。ドリーム戦、

ちょっと3号艇を狙ってみようかな。

 

 

 

(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)