'THE勝負駆け①18位ボーダー争い
大阪勢、躍進!'
イン選手が1Rから8連敗するほど激しかった勝負駆けデー。火花が散った全12レースのうち、5勝を占めたのが大阪勢だった。しかも、丸岡正典(昨日まで25位)と田中信一郎(同26位)は、ピンピン連勝でともに19人のゴボー抜き!! 一気に準優の好枠まで上り詰めた。
まずは、丸岡。彼に限っては、今日の飛躍は約束されていたかもしれない。トップレベルの行き足~伸びを引っさげての3号艇と1号艇。待ちに待った絶好枠で、自慢のパワーを十二分に活かしきった。2Rは枠なり3コースから、伸びなりに攻めて激辛のまくり差し。9Rのイン戦は2コース桐生順平にスタートで煽られたが、凄まじい伸び返しで1マークを先取りした。あとは引き離す一方。それまでイン選手が8連敗の水面で、圧倒的な逃走劇を魅せた。勝率6・83で予選6位に。
丸ちゃんよりもはるかにド派手だったのが、6&5号艇を強いられた信一郎だ。1Rはなんとなんと6コースまくり差し! 地元・原田幸哉の絞りまくりにぴったり連動して、鮮やかに突き抜けた。豪腕・信一郎らしく、ナタで艇団をぶっ叩くような力強い割り差しだった。
こうなると、もう勢いは止まらない。6Rも同期・同支部の太田和美のまくりに呼吸を合わせて、5コースから一撃のまくり差しだ。
「和美がまくりに行くのはわかっていたから、決め撃ちで行きました」
言うのは簡単だが、1Rも6Rもいわゆる「ジカ付けのマーク差し」ではなかった。幸哉は4カド、太田は3コース。ひとつ飛び石のコースから、「幸哉も和美も握る」と確信して全速でぶん回していたのだ。3手先を読んでの、即詰み。クレバーで老獪で勇猛なチェックメイトだった。丸岡と同じく予選6・83で7位入線。
太田和美と湯川浩司も予選突破した大阪勢(←後述)。総大将・松井繁の名がないのは残念だが、準優~優勝戦の主役の座は譲りそうにないな。ただ、明日の12Rで4人全部が揃ってしまったのは、痛し痒しかも??
'THE勝負駆け②予選TOP争い
赤岩、苦杯!'
続いて、予選ランキングのてっぺんに目を向けてみよう。もしも赤岩善生が4Rで3着以内なら、予選1位争いのレポートは数行で済んだはずだ。その時点で、赤岩のトップ当選が確定してしまうのだから。
だが、赤岩は敗れた。「3着以内」を知っていたであろう6号艇の赤岩は、果敢に前付けに出た。他艇に抵抗されながらも、4コースを奪取。スタートもコンマ12まで踏み込んだ。3コースの井口佳典はコンマ20。やや凹んでいる。自力でトップを確定させる、絶好の隊形。だが、赤岩が満を持して握るのと同時に、伸び返した井口も握っていた。完全に艇を合わされた。ツケマイを食うか、艇を合わされるか……2大惨敗パターンにはまった。あさっての方向に流れた赤岩は、必死に前を追い上げたが届かない。6着……予選勝率7・40、暫定4位で残りの8レースを待つ身となった。
安泰ムードから混沌へ。トップ争いは、混迷を極めた。まず、6Rで太田が2着を奪い、暫定1位に。ただ、この時点で太田に自力トップの権利はない。天王山は10Rで、3号艇・茅原悠紀と4号艇・深川真二のどちらかが勝てば、イコール予選トップの座に輝く。。出走回数のイタズラで、12Rを太田が逃げきっても届かないのだ。
茅原か、深川か……大きな大きな10Rの直接対決で、ふたりは敗れた。茅原4着、深川6着。完全に脱落。代わって、2着の篠崎元志に予選トップの可能性が発生する。「11Rの濱野谷憲吾が2着以下で、さらに12Rの太田和美が3着以下」が必要十分条件だ。
11R、憲吾がトップ争いに臨んだ。ここを勝てば篠崎を超えて「12Rの太田が3着以下ならトップ」という権利を引き継げる。だが、憲吾もまたそのチャンスを生かしきれず、5着に敗れた。脱落。ここで、やっとトップ争いは篠崎と太田に絞られた。4Rで決まるかと思われたポールポジション争いは、いつものように最終レースまでもつれ込んだのである。
'THE勝負駆け③
そして……'
毎度毎度、悲喜こもごものドラマを生み出すSG4日目の12R。今日もまた、残酷なまでの光と影が生まれた。ボーダー&トップ争い、それぞれの勝負駆け条件を記しておこう。
12R
①太田和美…②着以内で予選トップ
②山崎智也…②着以内で準優
③川北浩貴…圏外
④重成一人…③着以内で準優
⑤岡崎恭裕…③着以内で準優
⑥佐々木康幸…③着以内で準優
水神様は、いつだって悪戯好きだ。ボーダー争いは4選手。喉から手が出るほど3着が欲しい3選手を、4~6号艇に並べてしまった。123決着なら3人ともに脱落。逆に456決着なら3人揃って予選突破……とにかく②着条件の智也も含めて必ず誰かしらが落選するし、1=3決着なんてことになれば4人揃って落ちる可能性だってあるのだ。
一方、トップ争いは極めてシンプルだ。太田がインから先マイして2着以内をもぎ取れば、それで決まる。3着以下なら、篠崎に譲り渡すことになる。
そして……太田は決めた。文句なしの逃げきりで、優勝にもっとも近いセパレートコースを獲得した。昨日の5位から、4人抜きのトップ当選だ。
太田が抜け出したバック直線。さあ、こうなると焦点は18位ボーダー争いだ。まず、力強く抜け出したのが2コースの智也だ。スリットの隊形は、外枠3艇に分があった。が、智也と同期の川北が、その3艇を完璧にブロックしたように見えた。少なくとも、まくりに行った重成を、川北はきっちり受け止めて準優圏外へと運んだ。美しい同期愛ブロック??
これで、智也の“ニ抜け”が決まった。だが、3着は決まっていない。最後の一議席を奪い取る権利は、まだ外枠3艇に残されている。そして、3番手を走っているのは……川北だった。唯一勝負駆けではないレーサーの、激辛の3番手航走。岡崎が、凄まじいスピードで川北に迫る。だが、いま一歩届かない。攻めても攻めても、届かない。最終ターンマークの渾身の差しもわずかに届かず、岡崎はもっとも虚しい着順でゴールを通過した。1-2-3決着。18位圏内にいた外枠3艇は、すべてボーダーラインから滑り落ちた。いつもいつも思うことだが、今節の4日目12Rも残酷だった。(photos/シギー中尾、text/畠山)