BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

宮島マスターズTOPICS 4日目

THE勝負駆け①予選トップ争い
地元のド根性!

 今日のMVPは一も二もなく市川哲也だ。昨日まで暫定7位だった市川が、超ミラクルな大技2連発で予選トップ争いに殴り込んだ。まず、前半5Rは3号艇から鋭いピット離れで2コース奪取。かと思いきや、6号艇からゴリゴリ攻めてきた石川真二を「どーぞどーぞ」と招き入れての3カド勝負! 市川の3カドはあまり見かけた記憶はないのだが、そこは新鋭の頃から「艇界随一のミクロスターター」と呼ばれた男。コンマ07のトップスタートから内2艇を一気にまくりきった。この10点加算で予選ランクは7位→4位。

f:id:boatrace-g-report:20190419191200j:plain


 さらなる圧巻は6号艇の10R。やはりここでもピットアウトから鋭く飛び出した市川は、軽々と3人を飛び越えて3コース選択。そしてそして、5Rに続いてまたしても艇を3カドまで引っ張った。この「バナレ飛び~3カド選択」は最近の山口達也が得意とする奇襲なのだが、誰が市川哲也の3カド連発を想像していただろう。
 レース直前、向かい風→追い風に変わるという難解な水面で、市川のスタートはさすがに横一線のコンマ19まで。そこからの伸びも一息で奇襲失敗かと思いきや、2コース川北浩貴をツケマイで叩き潰す形で一気に先頭まで突き抜けてしまった。またまた10ポイント加算で節間8・33。予選ランクは暫定4位のままだったが、後に走るトップ3の背後にピッタリと肉薄した。トップ3が市川を超えるための条件はこうだ。
★11R①今垣光太郎…1着、⑥太田和美…2着
★12R⑥渡邉英児…1着
 枠番を踏まえれば、次の11R1号艇・今垣がやや有利にも思えるのだが、このレースでも地元の勝負駆け選手がサプライズな大技をやらかすことになる。便宜上、次のコーナーにスライドしよう。

THE勝負駆け②予選ボーダー争い
地元のド根性! PART2

f:id:boatrace-g-report:20190419191229j:plain


 こっちのMVPも地元の前本泰和だろう。優先順位1位=初日のドリーム1号艇をしっかり勝ちきった前本だが、3日目からいきなりリズムを崩した。6着、5着であれよあれよと準優ボーダー圏外へ。崖っぷちで迎えた11Rのメンバーの勝負駆け条件はこうだ。
11R
①今垣光太郎…1着で市川超え、12R⑥渡邉の結果待ち
②前本泰和…1着で準優当確
③今村暢孝…圏外
④飯島昌弘…2着で準優当確
⑤木村光宏…3着で準優当確
⑥太田和美…1着でトップ確定、2着で市川超え12R⑥渡邉の結果待ち。
 暢孝だけが圏外だったが、それで進入を緩める男ではない。まずはスタート展示で今垣をスルスル追い抜いてインコース奪取! スタンドはどっと沸いたが、さらに3コースを余儀なくされた前本が追い打ちをかける。先輩の市川に続けとばかりの3カド攻撃!! どちらかと言えば内寄り志向の前本の3カドは、まさにサプライズだ。

f:id:boatrace-g-report:20190419191316j:plain


 ただし、これはスタ展の話。いざ本番の前本は枠なり2コースかスロー3コースに落ち着くのでは? などと考えてもいたのだが、実戦でもそれは起こった。暢孝がスルスル動いてイン奪取。今垣はどこ吹く風で飄々と2コース選択。3コースになった前本は、とりあえず艇を流してじっと今垣を監視。外枠の3艇(特に最アウトの太田)もすぐには引かず、今垣の方をじっと凝視している。
 ほぼ間違いなく、今垣の2カド(!!)を警戒しているのだ。今垣に1着を獲られたら予選トップの可能性が消失する太田。インコースがF2持ちの暢孝だけに、今垣の2カドは必殺レベルの破壊力となる。それを抑えてメイチ1着勝負・前本の3カドならば、逆に今垣の背筋を寒からしめる。あくまで私の憶測だが、太田の激辛の待機行動はそうとしか思えなかった。

f:id:boatrace-g-report:20190419191349j:plain


 今垣本人が2カドを目指していたかどうかは分からない(これまた推測だが99%2カドをやりたがっていた気がしてならない)が、しばらく艇を流し続けた今垣は観念したように(笑)舳先をゆっくりとスタート方向に傾けた。ほぼ同時に太田が舳先をピット方面に翻し、木村、飯島、そして前本もスタ展どおりに艇を反転させた。市川先輩に続く3カド確定! おそらく、このダッシュ4人の総意が「前本の3カド」を実現させたのだろう。1着しか望まない前本が自力で激しく攻めれば、これをマークする2着条件の飯島、3着条件の木村にもそれぞれ身の丈に合った展開が期待できる。とにかく今垣を潰してほしい太田も然り。もちろん、前本自身も自力で攻めたかっただろうし、今垣を攻め潰せば市川先輩が予選トップに近づくというオプションまで付与することになる。

f:id:boatrace-g-report:20190419191407j:plain


 31/2456という緊迫した隊形で12秒針が回り始めた。そして、スリットから勢いよく飛び出したのは、3カドの前本ではなく2コースの今垣だった。ダッシュ勢の思惑はそれとして、今垣も1着さえ獲れば予選トップに大きく近づく。「インコースを獲らせてまくる」という遠回りの戦法ではあるが、スリットからの勢いは一撃まくりを想定させた。事実、今垣は1マークの手前でまくりに行くアクションを起こしたように見えたものだが、そこから思い直したように差しハンドルに切り替える。この一瞬の躊躇が敗因だったか。
 一方、3カドからややスタートで後手を踏んだ前本は、2番差しという苦しい戦術を余儀なくされた。とても今垣を叩き潰す隊形ではなかったのだ。3カドからの2番差しはややチグハグにも見えるが、これがモノの見事に決まる。今垣がまくりから差しに切り替えた時間が、前本にふんだんな差し場を与えたのだ。レース展開はともかく、この差しハンドル一発でバック突き抜けた前本に準優当確ランプが点灯。同時に、市川先輩のトップ獲りへの大きな援護射撃となる1着でもあった。外のダッシュ勢にとっては、こぞって思惑が外れる展開になってしまったか。飯島と木村は惜しくも準優入りを逃し、太田も3着で市川の後塵を拝する結果となった。

f:id:boatrace-g-report:20190419191434j:plain


 この市川~前本の3カド3連勝リレーの流れを踏まえれば、予選トップは想像に難くないだろう。メイチ1着条件だった12R6号艇の渡邉英児・現名人は前付けで4コースまで潜入したが、4着がやっとだった。昨日までの7位から予選トップへ、選手班長の市川哲也が24時間で頂点まで上り詰めていた。現状の市川51号機の勝手なパワー評価は「出足系統が中堅上位、直線は中堅ど真ん中でトータル中堅に毛が生えたレベル」と高いものではないのだが、地元水面での予選トップというアドバンテージはメチャクチャでかい。明日からはピット離れや3カド攻撃とは無縁の戦法で、平成最後の名人位を襲名する可能性は高い、とお伝えしておこう。(photos/シギー中尾、text/畠山)