BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――仕事中!

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 仕事中!

 たしかに、仕事中です、高橋淳美。たぶん、このTシャツを着てなくても、ひと目で仕事中とわかったでしょう。レース後、本体整備にいそしむ高橋あっちゃん。仕事中だから声かけないでね、って感じ? 開会式で見せていた笑顔とは一変して、鋭い表情で本体と向き合っていた高橋なのであった。

 ピストンリングを選ぶ表情も印象的であった。この人が名人世代というのは、それこそ今日の開会式や、ピットでの振る舞いを見ていたら信じられないわけであるが、リングをじっと見つめながら、指で感触も確かめつつ、選んでいく様子はたしかに蓄積してきたキャリアを感じさせた。これまでの経験をフル動員させて、不本意だった今日の成績を巻き返すべく、相棒を立て直していくだろう。明日の1号艇は要注目!

 

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 高橋あっちゃん以外にも、もちろんTシャツにそんな文字はなかったけれども、仕事中の選手は非常に多かった。山下友貴は必死の試運転。ペラを叩き、係留所に駆け下りて、水面を走り、急ぎペラを外して係留所から駆け上り、ペラ調整所に駆け込んで、またペラを叩いて係留所に駆け下りて……この猛暑のなか、山下はこれを延々と続けていたのだ。山下といえば、レース前にもとことんペラ叩きに励む姿を見かけることが多いが、レース後だってその姿勢には変わりはない。いつも目の前の仕事に全力投球なのだ。

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 角ひとみも、遅くまで試運転をしていた一人だ。11R発売中にはボートを引き上げているが、今日は4R1回乗りだったわけだから、一日たっぷりと時間を費やしていたことになる。

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 角がボートを上げると、まず香川素子がエンジン吊りに駆けつけている。香川は12R展示の準備に向かおうとしていたところで、こうした状況でも試運転を終えた選手がいれば、エンジン吊りを手伝うのが選手の身についた動きだ。SGでももちろん、見かける光景である。角は、そんな香川を気遣った。「大丈夫大丈夫。いいからいいから」と香川を準備に向かわせようとしたのだ。そのうちに若手選手たちが集まってきて、実際に香川が手を貸す必要はなさそうだった。角はなおも「大丈夫よ~」と香川に声をかけているのだが……香川の気持ちはそれでは収まらないのか、何か仕事を見つけ出して手を貸そうとしている。それ見て角はさらに「いいから~」と言い、しかし香川はそんなわけにはいかないっすよ~とばかりにヘルプしようとする。選手同士の麗しい光景であるには違いないのだが、レジ前で会計を譲らない先輩と後輩ってな感じにも見えて、なかなか微笑ましいのであった。

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 そういえば、10R後のエンジン吊りでも微笑ましい光景があったんだった。惨敗を喫してしまった岩崎芳美は複雑な思いでピットに戻って来たであろう。取り囲む仲間も、やや複雑な表情をしているように見えた。その輪に加わっていたのは犬童千秋。福岡支部、九州地区の出走が10Rにはなかったので、岩崎をヘルプしていたのだ。

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 ところが、犬童が担当したモーターからワイヤーを外す仕事がなぜか手間取った。そしたら先輩たち、容赦なく「早く早く~」と急かす。焦った犬童はさらに手元が狂うわけで、「早く早く~」の爆笑が岩崎のボートの周りに起きていたのだった。「せっかく手伝ってもらったのに、ねえ」と犬童をねぎらう岩崎。照れくさそうに笑う犬童を見て、岩崎の笑顔も弾けるのであった。これも犬組のパフォーマンス? 岩崎の気持ちが少しでも癒されたのなら、犬童も笑われた甲斐があったというものだ。

 

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 さてさて、ドリーム戦快勝の平山智加。レース直前の平山の表情はといえば、ちょっと緊張気味であるように見受けられた。初めてのドリーム戦で1号艇、準地元地区での一戦で初日の主役、ってのは、なかなかプレッシャーのかかる一戦ではあるだろう。

 平山の大一番での1号艇、ということに、ネガティブなことを思い出す方は少なくないだろう。平山自身、一時はトラウマになっていたという。それを覆したのは、あの尼崎GⅠ。ビッグトピックともなったあの優勝がまさに1号艇であり、平山は最高の舞台で引きずっていた重い鎖を引きちぎったのであった。

 そして今日、やはり緊張感が高まるなかで、トラウマを払拭したことを証明するかのような快勝。これ、デカいぞ! パワー的に上位であることも大きいかもしれないが、そこにさらなる付加価値を重ねる勝利だと思う。主役街道爆走、おおいにありうると見た!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=高橋 TEXT/黒須田)