BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――怖い存在は……

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 最後のTシャツシリーズ! 初日にも見かけていて、気になっていた渋田治代の「67期Tシャツ」。67期といえば、市川哲也、大場敏、後藤浩、渡邉英児、山田竜一らが該当します。そして、私は同世代。人間ドック入るべきかなあ……。体臭、気になるっす。そろそろ老眼鏡も必要でして……。思わずフムフムとうなずかされた、逸品なのであります。渋田は67期のなかでも登番はかなり上のほうですが、まだまだ若々しいっすよ!

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 Tシャツといえば、今節に限らず、女子選手の多くが着用しているのが「2000WIN!」と記されたブルーもしくは黒のTシャツ。これは山川美由紀が通算2000勝を達成した際に作られたもので、山川から女子選手に贈られたものだそうだ。通算2000勝達成者自体、まだ3ケタにも届かない人数しかいないわけだが、山川は女子で初めての達成者。問答無用の偉人なのである。

 その山川が今日の優勝戦にも名を連ねている。この事実がどれだけ意義深いかは、もはや説明を俟たないだろう。今朝の山川は、比較的早めに指導しており、2R前にはすでに着水を済ませていた。といっても、慌ただしく動いているわけでもなく、このTシャツ姿でマイペースの準備を進めていた。このTシャツは、その貫録の証。偉人の戦いぶりをしかと目撃しよう。

 

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 偉人といえば、12年前のグラチャンで女子初のSG優出を果たした寺田千恵もあげねばなるまい。その寺田も、ベスト6にその名があるのだから、その衰えぬ強さには舌を巻くしかない。

 その寺田が、今朝もっともリラックスしていた優出メンバーだ。整備室入口脇のペラ調整所で、岡山軍団と輪を作っていたが、寺田だけがペラも木槌も手にしていない。後輩にアドバイスを送っているようでもあるが、やがて聞こえてきたのは愚痴!?

「テレビスタッフの前をゆーっくり歩いているのに、挨拶はしてくれるんだけど、インタビューしてくれないのよ~。ぜーんぜん無視だもん」

 後輩、爆笑。作業をするでもなく、雑談に興じているわけだから、なんとも余裕である。その分、エンジン吊りは八面六臂で、さまざまな選手をヘルプしまくっていた。

 2R前、「今日の意気込みは?」と問いかける。何よ、急に、ってな風情だったので、先ほどの愚痴を聞いていたのだと告げると、テラッチ爆笑。いや、代わりに私がインタビューしようかと思いましてね。なんてことを話していると、それを聞きつけたか、テレビスタッフがインタビューの打診にあらわれた。やっと来ましたね! 拍手で祝福してあげたのだが、「私、怖い人と思われちゃったじゃない!」と肩のあたりをひっぱたかれました、ナハハ。嬉しい。

 かようにリラックスしまくっている寺田千恵。エンジンパワーを考えれば、この余裕、相当に怖いと思うのだが、どうか。そう、今日の寺田千恵は“怖い”と思うぞ。

 

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 エンジン吊りで大活躍していたのはテラッチだけではない。谷川里江もまた、さまざまな選手のレース後に駆けつけては、お手伝いしまくっていた。今日も今日とて淡々と、また粛々とした雰囲気で、やはり余裕が感じられる谷川なのだが、大先輩が働いているのを見た後輩はやっぱり気を遣いますよね。水口由紀あたりも「ああ、谷川さん!」と引き継ぎを申し出たりしていたのだが、谷川はどこ吹く風とばかりに、率先して作業を続けた。そのたたずまいは、やっぱり偉人! 失礼な言い方だったら申し訳ないが、小さな巨人という形容詞は彼女に見事に当てはまると思う。

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 もしかしたら、将来は同じような雰囲気を醸し出すのかもしれないなあ、と金田幸子を見ていて思った。女子王座初優出のプレッシャーがあるかどうか、もう眺めているだけではさっぱりわからない。記念すべき日を迎えても、飄々としているのだから、ある意味大物。そして、なんとも個性的である。挨拶を交わした程度だが、表情も物腰も言葉づかいも柔らかい。そこから類推するに、緊張感はそれほどでもないかも……いや、だからこそ逆に……と、煙に巻かれた気分になってしまうのであった。

 作業自体は、早くから始めている。テラッチの話に爆笑しながらもペラを叩いていたし、着水も早かった。全力を尽くして調整しようという思いは強そうだ。

 

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 もっとも慌ただしく過ごしていたのは、やはり淺田千亜希。昨日の会見でも口にしていたが、「このままではダメ」というのが準優での感触だったわけだから、朝から熱心に調整を繰り返すのは当然だろう。1R後、装着場に置かれていた淺田のボートには白いプロペラがついていて、これは調整用のプロペラ。これが装着されていたということは、すぐに着水して係留所での調整に突入するということであり、実際に淺田は早々にリフトへとボートを運び、水面に向かったのだった。表情は、やはりややカタく、地元Vへの思い、あるいは地元での大一番に渾身で臨む決意が強くあらわれていた。

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 そして、もっとも姿を見る機会が少なかったのが、平山智加だ。1R展示後にピット入りしてから、エンジン吊りでしか平山を見ることができなかった。モーターにはペラがついたままで、ペラ調整所に姿がないのは当然、整備室にもいなくて、おそらくは控室で過ごしている時間が長かったはずだ。

 エンジン吊りで見た表情は、正直に言って、ややカタい。緊張感が伝わってくるものだった。だが、優勝戦1号艇で緊張しないほうがおかしいのだから、この表情はまったく不安要素にはならない。朝ピットにいる間にはついに作業の瞬間は見ることができなかったが、間違いなく万全で優勝戦の水面に登場するだろう。(PHOTO/中尾茂幸=寺田 池上一摩 黒須田=Tシャツ TEXT/黒須田)