BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――走る!

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 樋口由加里が走った。8R、ピットに戻ってすぐに、エンジン吊りは先輩らに頭を下げて託し、救護室に向かった走ったのだ。もちろんカポックは着たままだ。

 2マーク、樋口と中里優子が競り合うような格好になっている。樋口が不良航法をとられたこの場面で、中里は振り込んで腰を打撲。不完走失格にもなっている。自分の絡んだ場面で先輩が負傷してしまったのだから、樋口が気に病むのは当然。深刻な顔で駆けていった。外野としては、レースでは常に起こりうる事象だし、致し方ない部分も多々あると思ってしまうわけだが、当事者になってしまえばそうはいかないだろう。まして、期にしたら30以上も上の先輩が相手である。そんな樋口を見ていて、ちょっと気の毒に感じた。

 

 

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 中里は結局、途中帰郷となっている。12R終了後、トライアルの枠番抽選会場である選手宿舎1階で、中里の姿を見た。前かがみになって、関係者の肩を借りて歩く姿は、やはり痛々しい。僕も腰は何度か痛めているので、そのツラさも実感できる。抽選を終えた海野ゆかりが気遣っていたが、中里は「大丈夫大丈夫」と気丈にふるまっていた。うん、中里選手、お大事に! しばらくはゆっくり静養し、傷を癒してください。そしてふたたび、豪快なレースを見せてください!

 

 

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 それにしても、今日はピットを走る選手がやけに目についた。広大なピットなので、走って移動というのは珍しいことではないが、なぜか今日は多いように思えたのだ。小野生奈はいつも通り、でしたけど。

 たとえば、係留所からペラ室へ。この距離は、場所によってはそれほど離れてはいないのだけれど、急ぐように駆け込む選手を何人も見た。原田佑実もそうだったし、岩崎芳美もそうだった。いま確認してみると、二人ともすでにレースを終えた後のことだ。大急ぎで調整する必要があったとは思えないが、しかし彼女たちは走る。キビキビと動いている選手を見るのは、なかなかに爽快である。

 

 

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 喜井つかさは、控室のほうから整備室までの長い距離を、何往復かしていた。新兵の部類に入る若手なので、雑用も多々あると思われる。もちろん、その合間に自分の作業もしているだろう。ようするに、多忙なのだ。考えてみると、若手はやっぱりよく走っているような気がしますな。小野もそうだし、竹井奈美もそう。浜田亜理沙の走りはあまり見かけない気がするが、たまたま僕の視界には入っていないだけだろう。あ、若手じゃないけど、栢場優子もよく走ってます。さすがランナーレーサー!

 

 

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 決定戦組だって走るぞ。昨日は歩くよりも遅いスピードの小走りという不思議な芸(?)を見せていた金田幸子は今日、なんだか急いでいる風情で、走っていた。しっかり走っていた。昨日のほうが金ちゃんらしく感じてしまうのは、金ちゃんイズムに毒されているからでしょうか。

 その金田が、11Rで転覆した。選手責任で、優勝戦線から大きく後退する、痛い転覆だった。しかし、身体は無事のようだ。これは見逃してしまったが、池上カメラマンによれば、控室から整備室まで、風のように走って行ったという。その後、枠番抽選でも姿を見たが、元気いっぱいで抽選会を盛り上げていました。まずは何より。トライアルは何があってもおかしくない(金田が転覆したように)。明日もあきらめずに走りに走ってほしいぞ。

 

 

 

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 海野ゆかりも、よく走っていたなあ。今日は本体整備に取り掛かり、ピストンリングを交換しての出走。もちろんペラ調整もしていただろうから、忙しい一日を送っていただろう。だから、走る! 表情は意外に柔らかく、気分上々の様子でしたけどね。

 その海野については、枠番抽選のときの様子について、先に記しておきたい。平山智加の3連続1号艇や、寺田千恵と金田幸子の残り福合戦や、とにかく抽選は盛り上がっていた。選手たちも爆笑の連発。なんとも楽しい抽選会なのだった。

 そのなかで、海野ひとりが、くすりとも笑わず、まっすぐに前を向いたままだった。笑いの輪にまるで加わろうとしなかったのだ。別に他の選手たちの騒ぎを鬱陶しく感じていた様子はなかったが、しかし最後まで、海野はその喧騒とは離れたところに己を置いていたのである。

 カッコよかった! 爆笑軍団ももちろん大好きだが、海野の勝負師然とした様子はなんとも凛々しかった。やっぱりこの人、強いわ。

 

 

 

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 さて、2日目を終えて得点トップに立ったのは、長嶋万記! 2着1着といわゆるオール2連対で、堂々の首位快走である。レースぶりも素晴らしかった。自力で展開を作り、鎌倉涼の差しを浴びたものの、2マークで差し返す。鎌倉にとっては悔しすぎる2着だったわけだが、長嶋にとっては会心の一戦だろう。

 抽選やインタビューなどのレース後の流れを一通り終えた長嶋とバッタリ顔を合わせた。親指を突きたてて見せると、力強いサムアップが帰ってきた。

「イケるね!」「イケるね!」

 最高の笑顔である。この1勝は、長嶋の気分を乗りに乗せ、勢いをつけるものとなっただろう。安堵の思いも大きかっただろう。このままVまで快走してもおかしくない、そんな雰囲気を今日の長嶋万記は発散していた。

 

 

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 それでは、枠番抽選会。ちらり書いた通り、平山智加が3連続1号艇です。ちなみに賞金王では、07年に湯川浩司がやってます。平山がガラポンを回そうとすると、「智加ちゃん、また白引くんじゃないの~」と先輩たちから茶々が入る。内心は「そううまくいってたまるか」かもしれないけど(笑)、なんとなくそんなムードを感じ取ってもいたのか。智加ちゃん、ガラポン。

 うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!

 抽選会場が一気に沸き立つ。ほんとに白が出た~~~っ! やっかみの気持ちもあるかもしれないけど(笑)、その状況がまた楽し、なのか、先輩たちはおおいに盛り上がっている。智加ちゃんも、声援を浴びつつ、ニコニコ顔だ。

 で、谷川里江は、「また6ぅ~~~?」。11R組の抽選順ラストだった谷川がガラポンに向かったときには、すでに緑の玉しか残っていなかったのでありました。2連続6号艇。初戦も5号艇だから、なんともはや……。

 

 

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 12R組に移ると、トップバッターの長嶋万記が3号艇。「また3~~~!」「長嶋選手は3がお好きなのですね……(by金ちゃん)」とこちらも智加ちゃんほどではないが、なかなかの盛り上がりに。そう、3連続3号艇なのです。偏るなあ。

 

 

 

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 一方、この組はなかなか白が出ず、山川美由紀が6を引いて頭を抱えるなどのパフォーマンスがあったのち、最後の二人に白と黒が残るという状況になった。5番目が寺田千恵、6番目が金田幸子。なんと、金田にも3連続1号艇の可能性が出てきたのだ。「緊張する~」と言い出す金ちゃんに、手を合わせて祈るテラッチ。先にテラッチがガラポン回すと……出た、白! テラッチ、ガッツポーズ! 実は、抽選会場にあらわれたときの寺田は、仏頂面だった。レース直後から眉間にシワを寄せていたが、それが長く長く続いていたのだ。しかし、1号艇ゲットで表情一変! テラッチスマイルだ!

 で、最後に2号艇が出るはずのガラポンを金田が回しているとき、テラッチは言ったね。

「あんた、明日の仕事わかってるよね。ガードよ!」

 テラッチ最高!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)