BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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シリーズ優勝戦 私的回顧

突撃、生奈!

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11Rシリーズ優勝戦 進入順

①田口節子(岡山) 16

②山下友貴(静岡) 22

③大瀧明日香(愛知)21

⑤小野生奈(福岡) 13

⑥倉田郁美(愛知) 15

④水口由紀(京都) 18'

 

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 生奈がピットから勢いよく飛び出し、4コースを奪った。もちろん4カドだ。生奈の4カド。血がたぎる。5コースではどうか、と半信半疑だったが、4カドならイン田口まで届く。そう確信させてくれるのが、今節の生奈だ。

 生奈は行った。コンマ13、トップスタートから瞬く間に大瀧と山下を叩く。あとは、田口のみ。まくりきれるか、微妙な態勢だ。したたかなベテラン選手なら、少し落としてまくり差しに切り替えるだろう。

 

 

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 が、生奈にそんな割り算はない。掛け算あるのみ。生奈はまっすぐ田口の舳先に向かっていった。そして、きれいに弾かれた。これで私の生奈舟券は紙屑になったが、何の悔いもない。あの場面でまくり差して優勝したりしたら、逆にがっかりしただろう。生粋のまくり屋は、たとえ飛ばされるとわかっていても、まくりに行かなければならないのだ。拍手、拍手、あっぱれな玉砕だった。

 田口も見事だった。手馴れたベビーシッターのようにやんちゃな生奈の面倒を見てから、くるりと先マイした。今日も早くて、速い。

 

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 ただ、生奈の面倒を見た分だけ、加速が鈍る。山下の差しはなんとか凌いだが、大瀧の舳先が半分ほど刺さってしまった。振りほどこうと締める田口、舳先を抜かない大瀧。2艇は抱き合うようにして2マークに真っ直ぐ向かい、回りきれずに外へと弾けた。大競りによってぽっかり空いた内水面を、山下友貴が駆け抜ける。

 

 

 

 

 

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 勝者が決まった。下馬評の高かった38号機を山下は日々コツコツと微調整し、乗り心地を付け、持ち味である行き足と伸びを少しずつ強化した。今日の展示時計6秒61は、伸び節イチと謳われた倉田のそれと同タイムだった。決まり手は、展開に恵まれた「抜き」。だが、優勝戦の結果は2分足らずのレースだけが作るものではない。38号機に寄り添いながら予選を突破し、準優をクリアし、優勝戦の好枠を得た。だからこそ、優勝が転がり込んだ。堂々と胸を張っていい「抜き」での優勝だった。おめでとう、友貴ちゃん!

 

 

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 嗚呼、それにしても。今節の私の目は、トライアル組より生奈ばかりを追っていた。釘付けだった。「差しより握りマイ」が主流の女子レーサーの中にあっても、その徹底ぶりは抜きん出ていた。スリットで脳汁が噴出した。こんなに気持ちのいい選手に出会ったのは、久しぶりだ。またひとつ、ボートレースが面白くなった。(photos/シギー中尾、text/畠山)