BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ナデシコとドリーム

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 シリーズ前検日に住之江のピットに立つと、今年も終わりだな~としみじみしてしまう。なんか10日前くらいにそう思っていたような記憶があるのだが、もう1年ですか! 来年はさらに今年も終わり感が強いんでしょうな。まったくもって、光陰何とやらである。

 住之江のピットは控室とボートリフトが相当に離れている、というのは何度か書いている。ボートリフトはスタンドの並びにあって、しかももっともスタンド寄り。控室は展示ピットの奥あたりにあって、その距離は100mほどあるだろうか。というわけで、「エンジン吊りに向かう選手が猛ダッシュ」が住之江ピットの日常的風景。そして、これを見るとやはり、今年も終わりだな~と実感するわけである。写真は寺田祥。実に軽快な足色でありました。

 というわけで、賞金王が始まる! まず今日はシリーズ戦の前検日だが、住之江のピットに立った瞬間、しみじみとしつつも高揚感を覚えるのもまた事実なのである。

 

 

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 注目していたのは、まず平山智加だ。賞金女王を制し、ひとつステップを上がった彼女が、SGのピットでどう映るのか。当然こちらには先入観みたいなものがあるわけだし、実際に平山の心に芽生えたものもあるだろう。これまで決して気後れしていたとは思わないが、しかし今までの平山智加ではないのも確かなのである。

 で、ピットで見る限りは、これまでと大きな違いを感じるわけではないけれども、どこか堂々としたところも感じられた。繰り返すが、こちらにも先入観はある。だが、平山自身やはり、違った心持でこの場に立っているのではないかとも思えた。平山はこれまでSGでの予選突破はないが、今回こそという予感が生まれてくるだけのものは感じられた。

 

 

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 もう一人の注目は金田幸子。金ちゃんがついにSGに登場! 感慨深いっす。実は先日、金田に取材する機会があった。当然、初のSGの話題は振らねばならぬ。まあ、なんとなく想像はしていたのだが、それに対する金ちゃんの回答はネガティブなものばかりだった。「(私なんかが出場なんて)聖域を荒らす、みたいな?」とまで言っていたもの。気持ちはわからないではない。昨年までは女子王座で予選落ちの連続だったのだ。そのさらに数段上の舞台に自分が立つことを想像していたかどうか。降ってわいたようにSGへの切符が手に入ったからといって、実感も持てないだろうし、強気にもなれるはずがないだろう。

 だが、あんまり違和感なかったですよ、金ちゃん。充分にこの場に溶け込んでいた。ただ、一昨日までとはちょっと雰囲気は違った。芦屋では「歩くより遅い駆け足」という不思議な動きを見せていたものだが、今日は走る走る。住之江ピットは猛ダッシュが名物と書いたばかりだが、しかし金ちゃんがやってるとビックリしたりする。ようするに、率先して働いているのだ。岡山支部の後輩はゴマンといるのに、まるで新兵のように金田は走る。もしそこにSGの特別性みたいな意識があるとするなら、金田幸子は立派なトップレーサーである。

 

 

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 えっ、もう一人の女子レーサーは注目してないのかって? いやいや、そんなことはない。三浦永理とは芦屋の最終日(つまり一昨日)、中一日の転戦をねぎらい合ったばかりなのだ。ま、三浦は(平山も金田も)、今節が終わったらまた中一日で平和島で、僕らなんかよりもっと大変ですけどね。連戦の疲れも見せずに、三浦も元気いっぱい。賞金女王の雪辱を賞金王シリーズで返す、なんてのも悪くないと思うのだが、どうでしょう。

 

 

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 さて、ドリーム組にも注目したい。いろいろな意味をもつ選手がいることを感じている方も多いだろう。

 チャレンジカップを優勝しても賞金王に届かなかった森高一真。今日もまた、「そのことについては特に。いつもと変わらん」と言っているが、実際にいちど賞金王を経験していれば、そういう言葉も出てこないだろう。で、雰囲気的にはたしかにいつもと変わらん。SG覇者の仲間入りを果たしたからといって、特別な何かが漂っている気配はないのである。

 

 

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 チャレンジカップに出場できずに、3年連続賞金王出場を逃した峰竜太。11月はやはりいろんなことを考えたようだが、「今はスッキリしていて、レースを楽しめます。初心に戻れる感じもありますね」とのこと。どこまでが本音でどこまでが強がりかはわからないが、たしかにわりと表情は明るいのである。それも、無理に作った明るさは感じられない。あさってから決定戦組が合流し、その翌日にトライアルが始まれば違う心境にもなるかもしれないが、今日のところは前向きであるのは間違いなく、そして足もいいと峰は言っている。ひとつだけ気になるとするなら、賞金王ジャンパーを着用していたこと。そこに意味を見出すのは深読みが過ぎるか。

 

 

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 宮島周年優勝戦Fで賞金王行きのチャンスをフイにし、しかし兄とともに暮れの住之江に立つことになった篠崎仁志。すごいなあ、SGドリームだ。シリーズ戦とはいえ、やはりこれはひとつの快挙ではある。今日の前検は8班まで(6艇×8班=48名)。登番が今節もっとも若い仁志は普通は8班に入る。その仁志が、8班乗艇の合図がかかってもボートリフトの前にいてエンジン吊りに備えていたので、そんなところにいていいの?なんて思ってしまったが、今日の仁志は1班である(ドリーム組は1班に入るのが通例)。そして、そんな状況でもいつもと変わらず、てきぱきと動き、柔らかい表情で周囲と接している。まだ前検日なんだけど、大物感を見たような気がしたぞ。

 今あげた3人は、ドリーム戦の内枠に入る。つまり、今節の主役候補の3人である。このままシリーズ戦を駆け抜けることになるのか、6日間、注目してみよう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=寺田 TEXT/黒須田)