まあ、よくあること、ではあるが、今朝の空気感は昨日に比べれば穏やかだ。勝負駆けとか準優とかのほうがピリピリするのは不思議でもなんでもなく、ただし優勝戦の時間帯が近づいてくれば、ベスト6が醸し出す雰囲気で最高潮に空気が締まる。そんなものだ。
シリーズ優勝戦メンバーも、緊張感をあらわにすることはなく、それぞれの調整に励んでいる。桐生順平の場合は、新兵作業がそれに加わり忙しそうではあるが。今日はモーター返納作業もあるから、桐生も調整の合間にそれに積極的に加わることになる。もちろん、他の選手も気づいた仕事は率先してこなしていて、たとえば岡村仁が出走を終えた選手のカポックや勝負服を預かって、控室へと運んだりしていた。ただし、桐生としてはそれを見つけたら黙っていられない。遠くから猛然と駆けつけて、岡村に「すみません!」。岡村は気にすんなよと笑顔を返すが、桐生の立場としては先輩だけに働かせるわけにはいかないのだ。その様子を見ていた山崎智也が、「おっ、ナイスダッシュ!」と桐生の動きを誉めていた。智也も16、7年前には同じようにしていたんですよね。
水面には早くも多くの選手の姿があって、徳増秀樹が颯爽と係留所を飛び出していく姿が目に留まった。ほかにも、山口剛、茅原悠紀が試運転をしていて、感触をいち早く感じ取って調整につなげようということだろう。
江口晃生は、なんとも穏やかな表情で、マイペースの動きだ。微笑を浮かべながらいろいろな人と接し、静かに作業を進めている。また、前本泰和はペラ調整に専念。姿をなかなか見かけないので、ペラ室を覗き込みにいくと真剣な顔でペラの翼面を見つめていたのだった。
というわけで、全体的にはかなり落ち着いた雰囲気のシリーズ優勝戦組。ここから調整や気合の注入は加速していくはず!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)