ピットに入ると、公開インタビューで着用していたウェア姿の守屋美穂と遭遇。いやはや、かわいい……じゃなくて、なんともリラックスした様子が印象的だった。まあ、インタビューを終えたばかりということもあって、スイッチを入れるのはこれからという段階ではあっただろう。また、4連続6号艇で開き直った部分もあるだろうか。ファイナルメンバーはさすがに今日はピリピリしているか、と想像して向かったピットだっただけに、ちょっと意外なファーストインパクトであった。
三浦永理も、守屋の雰囲気に近かった。その後にエンジン吊りに出てきたときには、宇野弥生とニッコニコで会話を交わしていて、もちろんニッコニコだけど緊張しているということだってあるはずだけれども、少なくともその時点ではそんなムードはないように思えた。
二人とも外枠だから? それもあるのだろうが、二人ともティアラを狙っていないわけがない。三浦はその経験者なのだから、なおさらだろう。午後の時間帯にはおそらく雰囲気が変わっている。その変わりっぷりには注目しておきたい。
で、いちばん内の枠である日高逸子も、ポールポジションを重圧というものが伝わるような雰囲気ではなかった。経験の違い? 足色に確信があるから? その両方だろうか。もっとも、優勝戦1号艇がカタくなる、というのはこちらの先入観である。もちろんそうしたケースをそれまでに何度も見てきたが、朝からプレッシャーにガチガチになる選手は、言われてみればそうはいなかったかもしれない。グランプリの白井英治もやけに落ち着いていたし。まだまだ勝負の時までには時間がある。やはりスイッチを入れるのはこれからなのだろう。
と言いつつ、やっぱり鎌倉涼は気合満点に見える。マスクをかけていたので表情全体は見えないが、目に力を感じるのだ。
シリーズのほうの記事で、中谷朋子と高橋淳美の絡みを書いた。実はその場にもう一人、鎌倉涼がいたのである。鎌倉と高橋は同支部の先輩後輩である。結びつきはさらに強い。まして、二人は住之江をホームとする地元選手である。高橋も鎌倉に勝ってもらいたいと願っているだろう。鎌倉は静かに高橋の言葉に耳を傾けている雰囲気だったが、それが今日の鎌倉の血肉となっていくはずである。
平山智加にも気合を感じたなあ。彼女のことだから、話しかけてくる報道陣には実に丁寧に対処しているのは変わらない。そこでは柔らかい笑顔で会話に興じていたりもしている。しかし、たとえばエンジン吊りに向かうために一人歩を進めているときなど、目つきはかなり鋭くなっている。大一番を前にした強者の雰囲気だ。何度も書いているが、女子のピットにあっては、この人の格上感はやはり抜けている。カポックの色が何だろうが、その意地を見せつけるようなレースをしてくれるはずだ。
あと、平高奈菜もジワジワと頬が引き締まってきているぞ。公開インタビューでにこやかに笑う平高を見て、畠山が「平高ってかわいいんだな!」と興奮していたが、おっしゃる通り。平高スマイルはプリティだ。一方、ソルジャー平高になるとキッとした目つきになり、顔全体が鋭くなっていく。そのモードに入っていると、朝のピットでは感じた。内枠3人に注目が集まりそうな優勝戦。しかしこの人も決して侮ってはならないだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)