BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――雨の宮島

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171219095745j:plain

 宇宙人? いや、宇宙飛行士? いや、ロボット? いやいや……何者?

 選手のヘルメット姿は見慣れているが、カポックを脱いでいるのにヘルメット姿、というのはなかなか見ない。そして、なんだか異様だ。

 

 これ、誰でしょう?

 

 おっと、ニュージェネレーションのTシャツを着ているではないか。展示ピットのほうから歩いてきたから、3R出走選手?(2R発売中に撮影しました)背はそれほど高くないが……。

 

f:id:boatrace-g-report:20171219095922j:plain

 正解はこの方でした。レンズ向けたら、ヘルメットの奥でおどけてくれました。3Rは3着。予選突破は絶望的だが、着順は少し上向いた。残り2日も全力投球だ!

 

f:id:boatrace-g-report:20171219095943j:plain

 その3Rの展示ピットは、6号艇が長らく空いたままだった。辻栄蔵だ。

 これは、特に準優や優勝戦などでよく見る光景。辻はとにかくギリギリまでプロペラ調整に励み、展示ピットにボートを移動するのが出走選手のなかでいちばん遅くなることが多いのだ。これを見ると僕は、メモに「辻ギリペラ」と書き記す。これまで何度この5文字を書いたことか。今日はさらに「辻ギリペラ出たー!」と書いている。これが予選最終走。予選突破は当確だが、ここは地元宮島、ただ準優に乗ればオーケーなんて思っているはずがない。好枠がほしいに決まっている。しかし枠番は6号艇。6コースは得意の辻ではあるが、確実に上位に食い込むためにはとことん調整を突き詰めるしかない……ということではないかと想像されたので、「出たー!」まで書いたわけだ。

 

 やがて辻がペラ室を飛び出るのを発見。係留所に駆け下りていった。「ひょっひょっひょっ」とか口ずさみながら。切羽詰まったような雰囲気ではまったくありませんでした。そして、レースでは巧みに差して2着。明日も同じようにギリペラやって、しかし飄々と準優をめざすのだろう。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171219100006j:plain

 予選4日目の勝負駆けデー。気候一変、雨模様の宮島である。天気が変わればモーター気配も変わる、だから選手は調整のし直しに大忙し……とよく言われるが、実は意外とそうでもなくて、もちろんそういう選手は少なくないが、けっこうピットは穏やかな雰囲気だったりする。初日2日目ならまた別の話だが、それは天候が変わったこととは関係なく、慌ただしいものである。装着場にあるボートを見ると、ペラがついたままのものもけっこうあった。プロペラ室もわりとスペースが目立っていて、満員御礼ではない。整備室には吉田拡郎がいたが、エアーをプロペラに吹き付けていて、水分が飛んだと見るや、そのままペラ室に向かうのだった。ゆったりとした足取りで。これで整備室に選手の姿は見えなくなっている。

 

f:id:boatrace-g-report:20171219100024j:plain

 試運転をしている選手も多くはなかった。なにしろ、1~2R発売中には、けっこうな雨足だったのだ。レースはよほどの雨でなければ雨天決行なので、選手としては慣れたものだろうが、しかし雨の中で試運転に励む選手にはやはり感心してしまう。今節チーム長野の仲間入りを果たした馬場貴也! 素晴らしい! 馬場は係留所での回転調整も長い時間をかけてじっくりと行なっており、雨天での作業を厭う様子はまったくなかった。

 

f:id:boatrace-g-report:20171219100121j:plain

 もう一人は、市川哲也だ。今日は1着でも6・00には届かず、相手待ちとなる。しかし、市川は決してあきらめない。できることはすべてやる! 雨が降ろうが槍が降ろうが関係ない。その闘志と姿勢を、僕はひたすら尊敬します。足色はなかなか上向いてくれないが、それでも戦い続ける市川に、改めて今節に懸ける思いを見た。結果はともかく、その戦いぶりはただただ尊い!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)