BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――痛恨事あり……

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171219161240j:plain

 今日もレース後に、松本晶恵に土屋千明が寄り添う光景、が見られた。

 結果を知っている誰もが想像される通り、今日は昨日とはまるで違う表情。松本はうなだれ、土屋が優しく慰めている、というような構図だ。今日の松本はまさかの6着、4着。それでも準優進出戦は2号艇と昨日までの好調ぶりを証明するかたちとなっているが、だからこそ今日の変調が目立つとも言える。思わぬ失速に、松本の意気は上がりようがない。今日一晩ゆっくり休んで、明日はまた笑顔を見せてほしいぞ。

 

f:id:boatrace-g-report:20171219161351j:plain

 小野生奈がまた沈痛だった。これも結果を知っている誰もが想像されただろう。10R、まさかの勇み足。初日連勝と絶好のスタートを切りながら、予選最終走に大きすぎる落とし穴が待っていた。フライング艇はすぐにレースから離脱するので、真っ先にピットに戻ってくることになる。まだ水面ではレースが繰り広げられているというのに、ひとり陸に上がらねばならなかった小野。エンジン吊りを仲間に託して、すぐに競技本部へと駆け出すが、その表情はこわばっており、胸中に暗雲漂っているのは明らかであった。

 

f:id:boatrace-g-report:20171219161454j:plain

 無念といえば、遠藤エミも6Rの転覆はあまりに痛かった。後半11Rは逃げ切っており、減点さえなければ予選突破していはずだった。転覆後はいったんモーターをバラす転覆整備を行なうのだが、11Rに出走するのだから、慌ただしい整備ともなっている。それを見守る樋口由加里と滝川真由子。102期の仲間たちだ。遠藤も切り替えられているのか、樋口と滝川に笑顔も見せていたが、心中は複雑だったはずだ。戦いはまだ3日間つづく。一般戦だってファンは注目し、そしてきっと遠藤を人気にするだろう。モヤモヤは今日の晩で解消して、明日からも頑張れ!

 

f:id:boatrace-g-report:20171219161509j:plain

 喜井つかさが不良航法で減点される、という局面もあった。減点がなくても予選突破は絶望だった。違反をとられたのは4~6番手の接戦である。ハッキリいって、僕はあの場面を「喜井のナイスガッツ」だと思っている。誰かがケガする可能性が高いような危険な場面には見えなかった。そのうえで、喜井は逆転を狙った。アタックした相手は、山川美由紀である。若手である喜井にとってはるか仰ぎ見る先輩に、チャレンジしたのだ。怯んでもおかしくない場面で、しかも舟券には絡まないところで、それでも喜井は行ったのだ。ルールについて、考えさせられる場面だった。

「怒られちゃいました(苦笑)。でも、ひとつでも上の着順を獲りたかった」

 今回はうまくいって4着だったが、これが3番手争い、2番手争い、先頭争いだったら、喜井の舟券を買っているファンなら「よくぞ行ってくれた」のはずである。重ね重ね断っておくが、あれが極度に危険なプレーだったのなら、僕はこんなことを書かない。僕は今日の喜井つかさを見て、明日の喜井の舟券を買おうと決めた。500円のところを1000円買おう。喜井はそれに値する走りを見せてくれた。もちろん違反をとられたことはしっかり反省をして、明日も奮闘してくれ!

 

f:id:boatrace-g-report:20171219161532j:plain

 とまあ、なかなか心が痛む場面もあった予選最終日。そんななかで、たとえば9R後に速攻で本体整備に取り掛かり、明日の準備を早くも始めている山川美由紀、という背筋が伸びるシーンも見かけた。その時点で準優進出戦1号艇がわかっていたはずはない。可能性についても、あまり考えていなかったのではないか。9Rは4着。ただただ不満があったのだろう。それを即座になんとかしなければ気が済まなかった。その姿に圧倒されたわけである。

 これを地元の気合と書くべきかどうか、などとも考える。山川を今も第一線で戦わせている原動力は、こうした「飽くなき勝利への渇望」のはずだ。なにも地元でなくとも、山川は同じ動きをしたかもしれない。一方で、もちろん地元レディチャンへの思いは強いわけだから、それがさらに山川を動かせたということだってありうるだろう。

 ともかく、やっぱり山川美由紀は偉人だ。ここが丸亀だからこそ、それをさらに強く思わされた次第である。

 

f:id:boatrace-g-report:20171219161601j:plain

 で、予選トップは香川素子! 後半の時間帯、香川は実にリラックスして過ごしており、特に作業らしい作業もやっていないように見かけられた。3勝オール3連対だから、好調なのは先刻承知。ただ、実は香川が得点率トップになるとはあまり想像していなかっただけに、「香川さん、リラックスしてるな~」なんて眺めていただけだった。山川が敗れ、松本も敗れ、魚谷香織まで大敗し、あれよあれよと予選トップ。慌てて香川を探したのだが、後の祭りなのであった。我が不明を恥じいるばかりである。

 ただ、そうした得点状況に惑わされることなく、淡々と過ごせていたことはプラス材料である。4Rを勝った時点で準優進出戦1号艇は当確だったのだから、自分が上位で予選突破できることはわかっていたはず。そのうえで、落ち着いたたたずまいを見せていたのだから、心機体が見事に調和しているということだ。

 昨年の水口由紀につづき、今年も滋賀支部がクイーンに!? あと3回逃げれば、それが現実のものともなる。滋賀支部は若きエース・遠藤のみが予選落ちとなってしまったが、水口、茶谷桜が予選突破している。女王の風はびわこに向いて吹いている!? 明日はそれをさらに強く実感する日になるのだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)