パワー決着
9R
①市橋卓士(徳島)11
②柳沢 一(愛知)15
③石渡鉄兵(東京)21
④池田浩二(愛知)09
⑤坪井康晴(静岡)11
⑥丸岡正典(大阪)12
逃げる市橋、まくり差しの池田、二番まくり差しの坪井。バック直線は実に見応えのある三つ巴戦になり、パワー差が明暗を分けた。残念すぎるのは、地元の池田だ。他の2艇に比べ、やはりすべての足が劣っていた。まずはターンの出口。池田のまくり差しは例によってシャープかつスピーディで、何十センチかでも前に押して行くレース足があれば、そのまま豪快に突き抜けていただろう。
が、悲しいかなその足がない。逆に、外の市橋、内の坪井がグイッと前に出て、舳先を並べた。レース足に続いて、行き足勝負。ここでも池田は2艇に圧倒された。瞬く間に池田の舳先だけが抜け落ちた。後は……ターンマークを回るたびに2艇から突き放されていった。それが池田浩二だっただけに、機力の重要さ、影響力をまざまざと感じさせるレースでもあった。
で、バック後半に戻ろう。池田を置き去りにした市橋VS坪井の伸び比べも興味深かった。内・坪井の舳先は30センチほど食い込んだまま、それ以上にもそれ以下にも差が開かなかった。伸びは一緒。2マークの直前で舳先が抜けたように見えたが、あれは坪井が自ら抜いて池田のブロックに回った可能性が高い。その後の2艇の走りを見ていても、トータルではやや坪井に分があるように見えた。より細かく言うなら、回った直後に加速して行く足、その部分だけがわずかに強い気がする。明日の優勝戦はさすがに機力上位の面々が揃ったが、両者の足は6人の中でもやや強めではないかと思っている。特に、枠が遠くて人気の盲点になる坪井は要注意。
ライオンハート
10R
①篠崎元志(福岡) 05
②下條雄太郎(長崎)05
③太田和美(大阪) 06
④原田幸哉(愛知) 02
⑤新田雄史(三重) 09
⑥山崎智也(群馬) 08
全員がゼロ台の灼熱スリット。昨日に続いて3カドに引いた太田は、コンマ06。昨日もコンマ05だったから、お見事と言うしかない(スタート展示はスロー起こしなのだ)。が、それ以上に踏み込んだのが、地元の原田だった。コンマ02。池田に続き、幸哉も悔しかったろう。スリットからわずかに覗いたのも束の間、内3艇にドドドと伸び返された。「ギヤケースを交換して伸びを含め全体的にアップした」とテレビの取材に答えていたようだが、低調機の限界か、やはり突き抜けるだけのパンチ力はなかった。9R同様、地元の意地がパワー差によって空を切った。
で、ドドドと伸び返した内3艇の中から、インの元志が豪快なインモンキーを決めた。1マークの手前で横一線なのだから、当然の帰結だろう。最近の元志はここ一番のイン戦で脆さを露呈したものだが、今日のコンマ05快勝で吹っ切れたに違いない。
もっとも驚いたのは、下條の闘争心だ。2コースの雄太郎は、3カドから襲い掛かった太田を張り倒すようにして握った。「まくらせるかっ!」という握りマイだった。さらに2マーク、内から追いすがる太田&智也の賞金王コンビを、迷うことなき全速ぶん回しで置き去りにした。もちろん、パワーがあればこその自信満々のターンなのだが、まったく物怖じしないクソ度胸を高く評価したい。
明日は自力も他力もありえる4号艇。今日と同じほどの強い気持ちで臨むことができれば、4カドから大仕事をやらかしても不思議はないな。SGを制するのに、もっとも重要なファクターはハート。だとするなら、この若者はSG初優出で初Vの快挙もありえる。そう思わせる今日のレースっぷりではあった。
連夜のデ・ジャ・ヴ
11R
①峰 竜太(佐賀)03
②中島孝平(福井)00
③寺田 祥(山口)00
④瓜生正義(福岡)06
⑤中野次郎(東京)11
⑥赤岩善生(愛知)19
灼熱を通り越して、臨界点のスリット。中島と寺田がキワのキワまで踏み込んだ。スリット写真の00ラインに、舳先がメリ込んでいた。助かって良かった。
で、このレースでも、もっとも悔いが残ったのは地元の赤岩ではあるまいか。スタート展示はゴリゴリ攻めて1256/34の4コース奪取。かなり深めの起こしにはなったが、朝から90m前後の特訓を何度もしていたし、覚悟の前付けだったろう。が、本番は中野の激しい抵抗に降りる形で、真横に艇を流し続けた。そして、艇を引いた。ごくごく普通の枠なり3対3。こうなると、深い起こしにこだわった特訓が仇になる。内3艇が臨界点まで突っ込む中、赤岩は何の旨味もない6コースで1艇身以上も遅れた。作戦不発。純地元でのSG制覇に燃えた赤岩の夏は、この瞬間に終わった。
一方、スロー勢は楽な起こし~ほぼ横一線のスリットで、内から順に有利になった。インの峰が1マークを先取りし、2コース中島が小さくシャープに差す。早々に1=2態勢が固まったわけだが、峰の強烈なレース足が中島の舳先をシャットアウトした。その光景は、昨日の10Rの峰VS太田と酷似していた。連日の賞金王レーサーの「2コース差しアタック」は、峰の超絶パワーと卓越したターンスピードの前に屈した。うん、これはでかいな。連夜の完封勝利は、相手が相手だけに大きな自信になったはずだ。
スタート勘も日々研ぎ澄まされており(2日目まで3走すべてコンマ18、3日目からコンマ12→08→07→03)、あらゆる角度から死角らしい死角は見当たらない。昨日も書いたが、最後の敵は自分自身。もっとも重要なファクターであるハート面さえ克服すれば間違いなく優勝できる。それが、いちばん難しいのではあるが。
あ、個人的には「元志の2コース差しアタック」との一騎打ち、そんなバック直線も見てみたいなぁ。(photos/シギー中尾、text/畠山)