BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット@グランプリ――早くも……

 

 

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 11Rと12Rの発売中に、ベスト6組のスタート練習とタイム測定が行なわれている。あ、タイムを参考までに。

石野貴之 6・60

桐生順平 6・62

篠崎元志 6・64

山崎智也 6・70

守田俊介 6・72

毒島誠  6・73

 この練習&測定を前に、それぞれの選手の動きは活発になっていた。ペラ小屋を覗くと、山崎智也と毒島誠が並んでペラを叩いている。しばらく眺めていたが、特に声を掛け合うわけでもなく、黙々と、しかしおそらくお互いの存在を近くに感じながら、作業に没頭する。それが終わると、二人は水面に向かって足合わせ。すでにシリーズ組で試運転をしている者はなく、こうなると群馬からベスト6に2人も残っているのは少しばかり強みとなっているか。朝はほとんど動きが目立たなかった6人も、じわじわと準備を進めていたわけだ。

 

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 いや、一人だけ例外が。守田俊介だ。8R終了後にピットに降りると、守田のボートが朝と同じ場所にある。モーターが乗っていて、ペラはついていて、という状態も一緒。池上カメラマンが「まったく何もしてないみたいですね」と笑っていた。これも守田らしさか。

 ようやく動いたのが3時30分頃。すでに11R発売中で、ようするにスタート練習とタイム測定の準備である。これはこれですごいよなあ。今日の住之江ボートにいた人間のなかで、それこそお客さんも含めて、もっとものんびり過ごしていたのはこの男だろう。明日は果たして!?

 

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 レースがなかったベスト6組とは違って、1st組はいよいよトライアルが始まった。勝ったのは峰竜太と池田浩二。峰はリング交換が当たった? やっぱり神様が見ていたのか? 見た目には、さほど危なげのないイン逃げに見えたのはたしかだ。行き足で大きくやられるところもなかったように思う。だから、篠崎仁志が「バッチリでしたね」と声をかけるのもまあ、納得だ。

 ところが峰は「バッチリじゃないよ」と返している。その後の言葉が聞き取れなかったので、何がどうバッチリじゃないのかはわからなかった。だが、バッチリじゃないという言葉ははっきりと聞こえた。まだ満足していないのは明らかだ。

 その後、篠崎元志に明日も1号艇を引けとハッパをかけられて、「1号艇じゃなくていいよ~。また緊張しちゃうじゃん」とも言っていた。お見事、1号艇を引きました。どうぞしっかり緊張してください(笑)。

 

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 池田浩二のほうは、あがってきたあともヘルメットを脱がずに控室に小走りで駆けていったので、表情などはうかがうことができなかった。枠番抽選で4号艇を引き、「ブルーインパルス引いたよ」とおどけていたので、気分が悪いわけはないだろう(ブルーインパルスは一昨年のグランプリで公募され、つけられた池田の愛称)。初戦1着は2nd行きが当確と言っていいだけに、峰もそうだが、まずは安堵の思いも強いはずだ。

 

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 一方で、早くも終戦を迎えた選手もいる。11Rで選手責任の転覆を喫してしまった辻栄蔵。よっぽどのことが起きない限り、浮上の可能性は絶望だ。これは痛い。体も痛いが、脱落はかなり痛い。辻が転覆したあと、ピット内には「選手負傷の模様」というアナウンスが流れ、心配されたが、大きな負傷ではなく、すぐにピットにあらわれて転覆整備を行なっていたので、まずは一安心。とはいえ、1年の奮闘がほんの一瞬で水泡に帰したことはやっぱり痛い。表情がいまひとつ冴えないように見えて当然だ。

 

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 同じレースで待機行動違反をとられてしまった田中信一郎も、かなり厳しい得点率となってしまった。地元グランプリにかなり強い想いを抱いて乗り込んできたはずだけに、無念だろうし、こちらとしても残念極まりない。その心中は察するに余りある。

 レースから少し時間が経ったあとの田中は、痛恨を表に出すでもなく、表情に怒りを宿すでもなく、淡々とすら見える様子であった。枠番抽選でも、峰に軽口を叩いたりするなど、微笑を浮かべる瞬間もあった。だが、それはきっと本音ではないはずだ。心に渦巻く感情をぐっと抑え込んでいるからこそ、逆に静かな表情に見えているのだと、僕は勝手に思う次第だ。ミスター賞金王があさってからシリーズに回ってしまうのは、やっぱり残念。来年もこの舞台に帰ってくるのを信じるとしよう。

 

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 明日は背水の陣で戦わねばならぬ者もいる。前年度覇者の茅原悠紀は初戦5着。レース後はただただ憮然としていた。今年後半の茅原は本当にいろいろあったわけだが、そうした数々の“事故”のあとの表情に酷似していた。やはり、単なる敗戦ではないのだ、トライアル1st初戦の5着は。

 明日はなんとしても2着以上が欲しいところだが、枠番は5。なにしろ茅原が引くまでに1~4が出てしまったのだから、茅原は苦笑いするしかない。まあ、残っている玉のなかでは最内が出たのだが(笑)、この苦境を脱するために、明日は今年最大の気合が見られることだろう。

 

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 王者もピンチ! 12Rで茅原同様の5着。つまり、条件も茅原と同じである。そして、引いた枠番は、もはや暮れの風物詩と言いたくなってしまう、6枠。なぜ松井には緑ばかりが引き寄せられるのだろうか。ずっとグランプリを見ている方なら、おなじみの松井の6枠。これまでなら、緑を見た瞬間に苦笑いを浮かべたり、ちょっとおどけて見せたりしたものだが、今日の松井はさすがにそうはならなかった。緑の玉を見た瞬間にいろんな思いがよぎったはずだが、表情を少しも変えようとせずに、そのまま抽選会場を立ち去っている。これまでの6号艇と明日の6号艇は意味が違う。まさに崖っぷちの6号艇なのだ。

 明日の王者がどんな表情を見せ、どんなレースを見せてくれるのか。王者には悪いが、見守る我々にとってはたまらない状況とも言える。王者の勝負駆け、しかと見届けよう。全身で堪能しよう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)