王女から女王へ?
8R
①樋口由加里(岡山)19
②片岡恵理(山口) 16
③岩崎芳美(徳島) 18
④西村 歩(大阪) 11
⑤魚谷香織(福岡) 14
⑥香川素子(滋賀) 15
樋口由加里の本格化を匂わせる一戦だった。レースそのものは威張れる内容ではない。おそらくスリットで放ったために、234号艇にドカドカ伸びられた。攻めの優先権は、2コース片岡。十分にツケマイが可能な態勢から、片岡は一瞬迷ったように減速した。その迷いが命取りで、外の岩崎と西村が一気に押し寄せ万事休す。西村も岩崎に弾き飛ばされ、岩崎のツケマイだけがインの樋口に肉薄した。
樋口の成長を感じさせたのが、この厳しい1マークの先マイだ。外から多数の艇が見えながら、焦ることなく岩崎に艇を合わせて力強く抜け出した。もちろんパワーの裏付けがあればこそのターンではあったが、「機力を信頼して自分のターンに徹する」は若い選手には意外と難しいのである。今節は6コースからぶん回して14万シューを提供するなど、1346コースで勝ち星を挙げている由加里。田口、金田を育んだ“女王国”から、またひとり有望なプリンセスが誕生した。
2着は岩崎。1マークの判断が実に的確で、さらに魚谷との激戦も冷静沈着なハンドルで捌ききった。足はシリーズ戦で中堅上位レベルと見ているのだが、常に岩崎には百戦錬磨の捌きがある。明日もベテランらしいしぶとい走りで、穴の片棒を担ぐかも??
私らしい激差し
9R
①岸 恵子(徳島) 12
②宇野弥生(愛知) 06
③今井美亜(福井) 30
④藤崎小百合(福岡)17
⑤新田芳美(徳島) 18
⑥中谷朋子(兵庫) 18
弥生の「私らしく」=「ゼロ台のスタートを決めて、豪快にまくる」と意訳するファンは多いが、最近の弥生は差しも多用する。まさに今日がそれで、唯一のゼロ台スタートから1艇身近く覗きつつ、冷徹なまでの差しハンドルを入れた。昔の徹底まくり屋・弥生にはありえない「覗き差し」。で、他の選手たちにも「弥生は覗けばまくる」という先入観があるから、この「私らしい差し」は実は効果抜群でもあるのだな。まくりを警戒した岸の先マイはかなり流れ、弥生の舳先だけがぐんぐん前進して行った。今まで種を撒き続けてきたからこその収穫、とも言えるだろう。
このレースで驚いたのは、今井美亜のレースっぷりだ。まずはスタートでコンマ30のドカ遅れ。これに関しては「喝!!」の一語。が、その数秒後、1マークの強ツケマイの凄まじかったこと。早々にハンドルを握って弥生を飛び越え、棒高跳びのような鋭い放物線を描いて岸の横っ腹に噛り付いていた。女子戦はもちろん、男子のレースでもあまり見かけないほどの「あっぱれ!」ウルトラ強ツケマイだった。このターン一発でコンマ30の穴埋めをした今井は、さらに執拗に岸を追った。2周1マーク、再度のツケマイを狙った今井の初動&角度は完璧に見えた。岸を捉えきったと確信した。が、そこは若さだ。本人も「これで決まり!」と思った瞬間に力=ハンドルが入り過ぎたのだろう。思いきり内側に振り込み、もんどりうって転覆した。まあ、これも「喝!」だ。喝とあっぱれを往来しつつ、「来年、この子はもっともっと強くなるなぁ」とぼんやり思ったりした。
2着には、岸恵子がしっかり粘りきった。今日は後輩のスピードに手を焼いた印象だが、くるくる回るターン足は不気味な存在だ。展開一本でアタマに突き抜けられるかどうかは、ちょっと疑問ではあるのだが……。
王手、なんだけど……?
10R
①平山智加(香川)
②長嶋万記(静岡)
③細川裕子(愛知)
④赤澤文香(岡山)
⑤海野ゆかり(広島)
⑥池田紫乃(長崎)
平山が細川の強まくりをガッチリ受け止め、シリーズVに王手をかけた。このレースに関して、特に多くを書く必要はないだろう。実力を考えれば当然の逃げきりであり、ファイナル1号艇も順当そのものだと思う。
ただし、だ。明日も心を込めて全速1艇身のスタートを行けば……と簡単に優勝を予言するつもりはない。3号艇に「新生・私らしい」弥生がいるし、急成長・樋口のリズム&パワーも相当だと思う。いや、昨日も書いたが、相手云々より智加ちゃんのモチベーションがMAXに到達しているかどうか、がまだちょっと疑問なのだな。前検からずっと注目している平山だが、どんなシルシを打つかは今晩~明日の午後までかけてじっくり考えたいと思う。うん、うまく言えないのだが、なんだかまだ引っ掛かりがあるんです。これだけ、当たり前に強くても……。(photos/シギー中尾、text/畠山)