BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル第3戦ダイジェスト

 

パワーの差し引き

 

11R

①大瀧明日香(愛知)13

②小野生奈(福岡) 15

③平高奈菜(香川) 15

④鎌倉 涼(大阪) 19

⑤日高逸子(福岡) 16

⑥松本晶恵(群馬) 15

 

 

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 平高奈菜が、自分のでき得る限りの勝負駆けを成功させた。レースを演出したのは2コースの小野生奈だ。生奈も1着以外では厳しい身の上。スリットほぼ同体から、果敢にイン大瀧明日香をまくりに行った。「勝負どころでは差しより握れ」。これが師匠・吉田弘文の教えであり、その教えを守ってきたからこそ今の生奈がある。そして、今日も迷わず握った。

 が、生奈渾身の強襲は、大瀧を捉えきることはできなかった。きっちり弾かれた。その間に、平高&鎌倉の同期コンビがズブズブ差し抜ける。ストレートは平高の領域。しっかり伸びて主導権を取り切った。1着=トータル21点は決して安全圏ではないものの、「人事を尽くして天命を待つ」という立ち位置には立ったわけだ。

 

 

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 2着争いは熾烈を極めた。まず、賞賛すべきは松本晶恵の健闘だろう。バック4番手から最内を進み、鎌倉VS大瀧の競り合いを尻目に切り返し気味の先マイを打った。「まだ諦めていないし、是が非でも舟券に絡む!」という心意気を見せた。結果は4着だったが、この奮闘は必ずや来年の肥しになる。

 鎌倉VS大瀧の2着争いは、パワー比較の点でも興味深かった。昨日の段階では「鎌倉のほうがかなり上」と見ていたのだが、今日は違った。良くて互角、ストレートに関してはわずかに大瀧に分があるように見えた。考えられるのは、①鎌倉のパワーダウン、②大瀧のパワーアップ、③その両方、④昨日の私の見立て違い、なのだが、おそらく③だったのではないか。今日の鎌倉40号機の足色は明らかに昨日より心許なかったし、大瀧39号機の引き波を超えてゆくパワーは昨日よりも力強く感じた。ふたりの接戦を見ながら、私は戦前評価=鎌倉S、大瀧B+を「両者ともにAランク」に変更した。

 

 

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 そしてそして、鎌倉にはパワー以外で高い評価を与えたい。3周1マーク、大瀧を捉えきれないでいた鎌倉は、切り返しの“奇襲”を見せた。3着でもファイナル確定なのに、(おそらく)明日の好枠を狙いに行った。そして、その勝負手を見事に成功させて2着に浮上した。

「あんなところで無理して、不良航法でもとられたらどうする? 無謀な勝負手だ」

 と思ったファンもいるだろうが、私は違う。当確に満足せず、多少のリスクを冒しても賞金女王により近づこうとした闘争心。それを高く評価し、明日の舟券予想の重要なファクターとして付け加えることにした。うん、この勝負手でファイナル1号艇、ってなことになったら、文句なしの◎にしたかもしれないのだが……。12Rにつづく。

 

困惑の猛時計

 

12R

①三浦永理(静岡) 07

②川野芽唯(福岡) 07

③山川美由紀(香川)06

④遠藤エミ(滋賀) 11

⑤滝川真由子(長崎)16

⑥寺田千恵(岡山) 14

 

 

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 うーーーん、このレースの勝者について、どう評価すべきか未だに困惑している。大反省も含めた困惑。頭の中がグチャグチャなので、他の事象から書こう。

 まずは、私が3戦連続◎に推し続けた山川65号機。残念ながら、今日も不発だった。山川のレースに悔いも不満もない。予想で「コンマ05まで行く」と信じたこの勝負師は、やはりコンマ06まで踏み込んだ。昨日までのトライアルなら、S一撃があっても不思議じゃない電撃スタートだ。が、山川の強さ怖さを知り尽くしている内2艇も、同じだけ突っ込んだ。

 そして……その先が重要なのだ。スリットから1マークまでの足色は、3艇ともに一緒だった!! 山川がどう悪戦苦闘しても、65号機はかつての65号機ではなかった。剃刀のような切れ味と薙刀のような破壊力をともに失っていた。今日のスタート特訓では「お、伸びてるっ!」と思わせるシーンもあったのだが、私の先入観&山川の早起こしのなせる業だったか。かつての65号機の凄さに惚れすぎて、まったく軌道修正できなかった私は単なるバカチンだ。が、そのパートナーである山川自身は、さぞや悔しく哀しかっただろう。「引き出しきれなかった」という自虐の念すら抱いたかもしれない。渾身のスタート勝負に出ても勝てなかった山川の思い、察するに余りある。1マークの手前、山川は同体から最後のお願いで全速の握りマイを打った。その攻撃は川野の頭は超えたものの、艇が返るだけの余力がないまま虚しく空を切った。

 

 

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 さあ、内2艇の攻防を書こう。三浦永理が先マイし、川野芽唯が差しハンドルを入れた。この勝負、さすがに三浦が分があるな、イン逃げ圧勝だな。◎山川とともに撃沈した私は、他人事のようにそう思った。コースもパワーもテクニックも、三浦に有利だと考えていたから。

 が、目の前のレースは、それを完全に否定した。川野がシュッとした差しハンドルを放り込み、舳先をチョイと突き入れ、そこからシューーッと伸びて舳先を並べ、2マークをキュンッと先取りし、差した三浦をピューッと突き放した。すべての足が実に軽快で、間違いなく三浦のそれを上回っていた。その足色も相まって、テクニックまで三浦超え?? と思わせるほど軽快だった。あれ、あれ、あれ?? と困惑している間にひとり旅。そして、ゴールをしてみれば、1分46秒9のモンスター時計だ。この時計を見て、私は思ったね。

 

 

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「も、もしかして、瓜生正義が乗り移った???」

 いや、マジで、それくらいすべてが軽快かつ完璧なレースだった。川野芽唯。勝手な色眼鏡であれこれ歪ませるのが私の得意技なのだが、今日のギャップは大きすぎる。そりゃ、天然混じりのちょっと不思議なターンセンスがあるとか、かなりの整備巧者であるとか、それくらいの知識はあったつもりなのだが、今日のレースはそんな豆知識だけではまったく追いつかない、とんでもないものをいきなり突きつけられたような気がした。

 うん、申し訳ないが、こうしていくら書いても混乱困惑が増すばかりだな。黒須田と飲みつつ、「今日、何があったか」をじっくり反芻、分析して自分なりに納得のできる答えを見出したい。そうしないと、明日の舟券予想そのものの根幹が狂うかもしれないから。

 

 さてさて、ファイナルV争いだ。現実的に、ぐいぐい流れを引き寄せているのは三浦だ。川野に敗れたとは言え、312着の好成績。しかも、同じく312着の鎌倉涼とのレース時計勝負で、わずかコンマ1秒だけ上回っての1号艇ゲット。11Rで鎌倉は切り返しの勝負手を決めたが、こと1号艇争いという点に限れば、その勝負手をコンマ1秒差で「空振り」させたという味方もできる。うん、流れは完全に三浦。

 だがしかし、今日の三浦の“負けっぷり”を思い出すに、明日は鉄板の1号艇と呼べるのか。そんな疑問も残る。仲のいい100期が3人残ったのも気になるし、シリーズ&グランプリで続々と地元勢が脱落した中で最後に川野が勝ち残ったのも気になる。そして、その川野の今日のレースは……(振出に戻る)。とにかく、気になることだらけだ。

 

 

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 気になると言えば、つい先刻まで“不動の主役”だったテラッチだ。どうした因縁なのか、グランプリの智也との不思議なシンクロは今日もきっちり継承された。6コースから展開に恵まれず、道中でもまったく見せ場がないまま5着大敗……男女の賞金ランクトップ通過→1号艇「抜き」で1着→1号艇・差されて2着→6号艇・見せ場なく5着。奇遇としかいいようのないシンクロなのだが、ついに明日のテラッチは智也と袂を分かつことになる。ファイナル1号艇ではなく、3号艇。はてさて、この違いが最後の大一番にどんな影響を与えるのだろうか。端から見れば「智也より不利」なのだろうが、この3号艇でまくりきって賞金女王になったりしたら「智也より持ってる」と絶賛してもいいのでは??

 気になる。いろんなことが気になって、それらがまったく解決されないまま、間もなく大晦日になろうとしている。うむぅ。(photos/シギー中尾、text/畠山)